• もっと見る
«カウンセラーも自己洞察スキルの体験が必要(3) | Main | 強迫性障害»
カウンセラーも自己洞察スキルの体験が必要(4) [2011年06月27日(Mon)]

カウンセラー(セラピスト、医者)も自己洞察スキルの体験が必要(4)

 アメリカのマインドフルネス心理療法者は、それを提供しようとする セラピスト(医者、カウンセラー)が、マインドフルネス、アクセプタ ンスの体験者であるべきであるといっています。

 今回は、日本で、次々に翻訳書が出版されているACT(アクセプタ ンス・コミットメント・セラピー)の著者の言葉を見ます。
    「ACTセラピストが「マインドフルネスを定期的に訓練するべきかど うか」というのはよく問われる質問である。この質問には正しい答えも 誤った答えもない。私たちは、マインドフルネス訓練は、個人的にも職 業上においても、自分たちにとって有益なものだと思っている。個人的 には、私たちはクライエントが得るのと同じ利益を得るのだ。その利益 とは、アクセプタンス、脱フュージョン、心理的柔軟性の増加である。 」
     「ある意味では、マインドフルネスは他のどんな学習された技能とも 同じようにみなすことができる。たとえば、スポーツーーーここではゴ ルフにしようーーーをプレーする方法について、ゴルフに関する本を読 み、他人がゴルフをしている様子を見て、テレビでプロゴルファーを観察 して学び、それから、他者にゴルフのやり方を教えようとしてみるとい ったことを想像してみてほしい。これは、おそらく、あまり効果的な 方法ではないだろう。なぜなら、見たり読んだりしただけでは、十分で はないからだ。ゴルフをプレーする方法を学ぶためには、ゴルフクラブ を振り、ゴルフボールを打たねばならない。 あなたはマインドフルネスを定期的に、あるいは連続的には実践しない でおこうと決めているかもしれないが、クライエントへ適用しようとし ているマインドフルネス・エクササイズに関しては、どんなものであっ ても、まずは自分自身でやってみることを私たちは強くお勧めしたい。 」 (『ACTを実践する』(著者)パトリシアAバッハ/ダニエルJモラン、 (監訳)武藤崇/吉岡昌子/石川健介/熊野宏昭、 星和書店、331頁)
 本を読んだだけで、実践したことのないマインドフルネス心理療法の セラピストは、読んだり他人のプレーを見て、実際プレーしたことのないゴルフ指導者に等しいと言われてい る。そんな人が、心の病気や問題改善、マインドフルネス、アクセプタ ンス、脱フュージョンなどの方法をうまく指導することはできないだろ うというのだ。
 「あなたはマインドフルネスを定期的に、あるいは連続的には実践しない でおこうと決めているかもしれないが」とは、マインドフルネス心理療法を本で読んだだけで 指導しようとしている人への厳しい批判である。そんな人に指導されるのでは、クライエント の利益になるとはいえないというのであろう。
 ACTは、多くの翻訳書が出版されているので、「読んだだけでは良 き指導者にはなれない」というアメリカのACTの推進者の言葉を肝に 命じるべきであろう。さもないと、クライエントが迷惑するのだろう。 プレーしたことがない人がゴルフを指導する?
 マインドフルネス心理療法は、本を読むだけでは良きカウンセラーにはなれない、 実習、体験が必要とされる心理療法である。それだけに指導者になるのが難しい。 日本で翻訳書が次々と出版されるが、実際に希望するクライエント(患者)さんに 指導する医師、カウンセラー、クリニック、病院が多くないのは、このためだろう。 本を読むだけではだめであるというのであるから、 翻訳書だけではだめだということを意味するのではないか。 種々の精神的な支援が必要とされる社会問題が山積みである。 減少しない自殺、うつ病、非定型うつ病、パニック障害、対人恐怖症、PTSD、過食症、依存症、覚醒剤依存症、ボーダーライン、虐待、DV,家族の不和・・・。 もうそろそろ、実際実習するACTセラピストを育成すべきではないのだろうか。
 本書にも、第2世代の認知行動療法の限界が語られている。
 第3世代の認知行動療法と言われるマインドフルネス心理療法は、治療効果が高いが、実践した、体験し た指導者であることが勧められる。この書のことは、さらに見ていく。

(続)


カウンセラー(セラピスト、医者)も自己洞察スキルの体験が必要
Posted by MF総研/大田 at 20:56 | 新しい心理療法 | この記事のURL