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防法=呼吸法と自己洞察法(2) [2011年04月18日(Mon)]

被災者の心のケア、心の病気の予防のためのマインドフルネス心理療法

 (18)PTSD(心的外傷後ストレス障害)を予防法(5)

PTSDの発症を予防できるのか(4)
 予防法=呼吸法と自己洞察法(2)

 PTSDの予防法として、前述の呼吸法や自己洞察法を推奨するのは、その方法を徹 底的にトレーニングすることが治療の局面で行うためである。
 そうした方法が効果がある理由のいくつかを見ておく。
 PTSDの患者には、前頭前野の選択的注意の障害があると推測されていることは、 前回述べました。
 フラッシュバックや悪夢は、一種の記憶の障害とみられます。記憶すること (登録のこと)は海馬が関係しており、記憶したことの検索や想起は前頭前野背外 側部がになっています。PTSDになると、海馬や前頭前野の縮小が報告されています ので、それが記憶の障害をもたらすのでしょう。
 ほかに、PTSDの患者には、前部帯状回の変調が報告されています。
     「こうした情動の条件付けは手続き記憶と同じく潜在的な過程であり、恐怖の条 件反応の固定には小脳虫部が関わると考えられている。いったん条件付けられた反 応を調整する装置は前部帯状回に備わっている。この領野は、扁桃体からの情報に より情動を感受して刺激に選択的注意を向けさせ、一方、同じ刺激が無害であるこ とが反復されれば、先に形成されている有害刺激による条件付けを消去する役割を 担っている。」(西川,2008,209頁)

     「PTSDでは、心的外傷に対する恐怖条件付けの過剰形成と消去不全があり、それ は扁桃体などの下位構造の過剰賦活を、上位構造であるACCを含む内側前頭皮質が 十分制御できないとする仮説が提唱されている。」(島津,2005,1296頁)(ACC=前 部帯状回)
 PTSDの治療法として認知行動療法の曝露療法(エクスポージャー法)が効果が確 認されています。回避している刺激を、弱い程度から近づいていく方法で慣れさせ て、過剰な反応を消去するのです。
 フラッシュバックや悪夢は、扁桃体が亢進傾向になっていることに加えて、現実 の災難ではないのに、類似の刺激を記憶障害によって、過去の外傷体験に結びつけ ることによって、当時と同様の極めて強い驚愕反応が起きると仮設します。その反 応が現実ではないのに、起きてしまう、連鎖を消去できない。
 こうしたことが生じているという仮説のもとに、新しい反応様式をトレーニング します。従来の認知行動療法におけるエクスポージャー法は、すぐに、エクスポー ジャーの挑戦を助言されるかもしれません。でも、それではハードルが高くて、エ クスポージャー法を回避、逃避する人もいるでしょう。
 そのため、マインドフルネス心理療法では、まず、基礎訓練から始めます。 刺激(感覚)から不安恐怖の予期思考、感情、自律神経系の興奮による情動性自律 反応などから、すぐに回避、逃避の反応があることを自覚して、これをよく観察し 受容して、建設的な反応様式をとることを訓練していきます。日常生活の中で、新 しい反応様式を習得していきます。さらに、前回に触れました、2次、3次の感情 が起きるような思考の連鎖を抑制するトレーニングを続けます。そうすると、感情 的になることが少なくなって、6か月から1年トレーニングすると、扁桃体の亢進 の沈静化、前頭前野の抑制機能やワーキングメモリ(作業記憶)機能の活性化が起 きることで、エクスポージャー法への挑戦の準備ができます。 フラッシュバック、悪夢も回数が減少していきます。 最終的には、回避だけが残りますが、不快事象をあるがままに観察してなりゆきを 見守ることができる受容のスキルが形成されて、何度かエクスポージャー法を試み て、回避、逃避しなくなります。
 東日本大震災の被災者の方は、今は予防段階でしょうが、PTSDは、半年たってか らも発症する人がいます。前回の呼吸法を行いながら過剰に長く思考しない心得で すごして、扁桃体の興奮を、大きく長くしないようにすることが予防法だと思いま す。
 発症してしまったら、早めに、PTSDに詳しい専門医の治療を受けることがいいで す。治療が遅れると、その期間、関連の脳部位の亢進が強化されます。
 薬物療法や認知行動療法のカウンセリングを受けても、改善しない場合、マイン ドフルネス心理療法もあります。治療技法がかなり違いますので、課題を実行でき る人は改善する可能性があります。
    (注)
    (西川,2008)「PTSDと解離性障害にみる記憶と自己の多重性」西川隆(大阪府立大 学総合リハビリテーション学部)(「精神の脳科学」加藤忠史編、東京大学出版会 、2008)。
    (島津,2005)「Clinical Neuroscience」(月刊 臨床神経科学)、中外医学社、 Vol.23 No.1(特集「大脳辺縁系」)、「自律神経機能」埼玉医科大学短期大学・田 村直俊氏、埼玉医科大学島津邦男,2005年。
(続く)
  • <目次>災害時、心の病気の予防のためのマインドフルネス心理療法
  • 参考記事
  • Posted by MF総研/大田 at 19:11 | 災害とストレス | この記事のURL