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 (6)つらい状況を受け入れていく心 [2011年03月31日(Thu)]

被災者の心のケア、心の病気の予防のためのマインドフルネス心理療法

 (6)つらい状況を受け入れていく心

【洞察を深めるL】受容の実践(8つの実践)

 不快事象の受容についての 心のスキルを習得します。呼吸法の中で、よく観察して、次のような心の実態、特 徴を体験的に学習します。そして、現実の日常生活の場面で、受容を実践していき ます。マインドフルネス心理療法の一つの柱、アクセプタンスです。

@無評価で観察
 不快で嫌悪的であっても、起きた事象(感覚、思考、感情、気分、症状など何でも )は、必然の現われです。起きるのが悪いという判断、こうあるべきとか、あるべき でないという判断、除去すべき、回避すべきという評価をしないで、あるがままを 観察するようにします。先入観、偏見や予断を持たず、作用と内容を自己の見解を 用いず、あるがままを注意深く観察するようにつとめます。もちろん、薬などで軽 くできるものは治療を受けます。
 善悪の評価、好き嫌いの評価、過去や他者との比較をしないで、 自分の信念などを参照しないで、感覚、感情、症状などをあるがままにしておき、 強弱、変化、つらさの程度を観察します。
 起きた直接経験(感覚、感情、気分、身体反応、症状など)は、生命の活動そのも のといえます。人が考えで作ったものではなく、身体内部も 必然の動きをしています。 脳神経細胞の構造からそのような反応が起こるようなことがあって、起きていると 言えます。善悪の判断はしません。不安やつらい内容を考えると感情は必然的に起 きます。あるいは、病気などのために起きるような何かの原因があって、痛みや感 情も 避けることができないのです。ところが、起きるのが悪い、起きないのが善という 善悪の判断の本音を動かすことがあると、回避などのもとになることがあります。
 自分の生きる環境で、避けられないものであれば、起きても、現実を把握して、自分の人生の価値実現の行動をしなければなりません。そのためには、その 経験を よく知り、現実を把握して、自分の願いを実現できる方向にある行動を選 択していく必要があります。 そのために、直接経験をあるがままに観察するのです。 自我の評価判断をたててみると、現実を把握する余裕がなくな るからです。そのことによって、受け入れることができず回避やつらい思考の持続 が起きることがあります。

A忍耐する
 不快、不満、嫌悪でも、今の瞬間をそれて根本解決にならない思考や行動に移り ません。次に移ろうとする衝動(欲求)に気づき、そのまま留まります。不快事象 は認識された時には、すでに過去です。自己や無数の人の行動や自然の活動の結果(内部では脳 神経の反応が起きた結果)、できあがった(創造された)世界が、自己の前に現わ れたのです。必然の現われですから、 謙虚に受け止めます。受け止めずに逃れようと衝動的思考・行動をとった場合、問 題が改善しないと思い、意志的行動を選択する間の短い時間、耐えます。 そのためには、観察していても致命的にはならないと信じます。そういう不快事象 を観察して、特徴を知っておくことが必要です。過去は変えることはできませんが 、現在と未来を自己は創造することができます。 自己の目標、価値を思いだします。建設的な行動、意志的行動をとります。
 自己に意識されることは不快であろうとも、自己の生命の流れです。逃げず、悪 者扱いせずに、同伴して生きていくつもりでいます。
◆押さえつけ、我慢、否認ではない
 通常言われるおさえつけ、我慢とは違います。おさえつけや我慢は受容や価値実 現の反応の意義が理解されていません。つらい思考とつらい感情が起こっていて、 ただ、無茶な行為を抑えていることです。 意識は、不快な事象、つらい思考、感情にとらわれています。
 または、受容や価値実現の反応の意義が理解されずに、他のことでまぎらしてい る場合もあります。
 しかし、受容に裏付けられた忍耐は、反応パターンの意義を理解しています。価 値崩壊の思考を長くせず、意志的行動をしますので、不快な思考、感情に長くとら われておらず、意識は目的行動(自己と周囲をよくする行動)に向かっています。  否認は、つらい思考や感情はつらいのが自然であるのに、つらくないと否定する ことです。これは、無理がありますので、後に心の病気になるおそれがあります。 しかし、本当の受容は、つらいのはつらいのです。それでも、それにとらわれて、 嘆きによって苦痛を増幅させるよりも、建設的なことを実践するのです。

B今しかない、常に新しい
 心に現われる事象は一瞬現われて消えて行きます。現在から現在へと新しい現実 が現われます。自己、無数の人が行為し、自然(地震、噴火など)も動いているの が世界です。その結果が、次々と自己の前に現われます。自己の過去の経験も反映 していますから、現われる事象は自分に唯一・一度きりで、個性的です。常に新し い事象が現われています。 すべてのことが心の場所、心の器に現われます。自分も無数の個人の行動も、自然 の運動も世界の創造に関わっていますから、一瞬一瞬変化しています。 常に新しいのです。 自分は、世界の中に生きて行動しますから、創造的世界の創造的要素です。自分も 無数の人も、世界を変えています。新しいのです。 心を開いて今、現われているものに初めて出会うことのように観察します。 過去は変えることができませんが、過去がどうであろうと、自己は、自由な意志を 持っていますので、今、世界を作る、価値実現の行動ができます。

C自己信頼
 自分は、世界の重要な一角です。自己は創造的世界の創造的要素です。すべてが 自己の心の中のことです。自分の心に起きることを観察し特徴を理解して対応する 意志的欲求、意志的決意、意志的行為をする力があることを信じます。 自分を理解し、自分の人生を生きる力が自分にそなわっていることを信じます。 自分はどのようなことがあろうとも、今の瞬間や、自分や世界を観察する力があり 、現われる事象(対象、内容)が、自分が生きて働く場所であり、 現われる事象は、個性的で唯一・一度きりのことで、消えていくので、 個々の事象は移りゆくものです。自分はそれらを見て、新しく行動して、世界を作 っていくことをまかされている自由意志を行使する存在であると自己を信頼してい ます。

D努力しない
 現われる事象は過去であり、必然ですから、今、経験している私的事象を制御、 除去、抑圧、無視、否認しようという努力をしません。小細工を使わないのです。 生命の必然的な現象に独断的・自己中心的な評価的判断をしたり変えようという細 工をしないのです。 今、経験していることに、根本解決にはならない方法で、一時の楽を得るために変 えようとつとめません。 自分自身の存在そのものも変えようとつとめません。ただ、新しい世界を創造する 意志的行動ができる存在です。

E受け入れる
 不快、不満、嫌悪でも、起きた事象(感覚、思考、感情、気分、症状など何でも) の作用と内容をあるがままに観察します。意識されたものは心に入ってきています 。受け入れています。 現われる事象は、自己や無数の個人の行動、自然現象の運動の結果であり、改変で きないものであり、すでに過去であり、自己の心の場所に受け入れて、現実を把握します。意識 されるものを拒まないで、生命の作用(働き)であると了解します。あるがまま観 察します。意識された過去の事象を除去しようとしません。次の瞬間に新しい行為をするために、現実を把握します。
 もちろん、不快、不満、嫌いなものを好きになれというのではありません。不正や犯罪とな るべき攻撃を終始受身でいなさいというのではありません。怒るべきことに、怒ら ないというのではありません。 嫌悪、怒り、不安などでも何でも、意識されたら、すぐに衝動的な(崩壊への反応 パターンで)反応をしないで、現実を把握して、自己の願い、価値(治りたい、社会復帰したいなど)を思いだして、その方向の行動を選択できるように現実を把握します。

Fとらわれない
 対象的に考えられた自己は思考の内容ですから、真の自己自身ではありません。 そのような考えられた自己によって作られた基準には執着しません。柔軟に考え行 動します。 自分の考えによって作られた、本音、基準、体験、行動のルールなどに執着しませ ん。何かに執着すると、かえって、自分を苦しめることがあります。たとえば、不 安は悪であり、不安が起こってはならないというのは間違いです。 独断的・主観主義的な評価的判断があると、次々と移りゆく今の瞬間をあるがまま に観察できなくなります。 善悪、快不快、好き嫌い、不安、本音にとらわれて執着しません。生命活動を自己 の独断的評価から解放します。 過去にもとらわれません。世間的な価値基準、他者の評価、他者の言葉にもとらわ れません。自分の個性的な価値・願いを見失いません。それに向けて、 できることを実行します。

G受容の意義を理解すること
 このような受容を実践していく原動力はそれをささえる科学的根拠、自己存在の 哲学です。他者から強制されたのではなくて、意義がわからず実行するのではなく て、受容することの意義が了解されて、自分の自由な意志で、受容して、自分の価 値実現のための行動(創造的行動)をしなくてはなりません。
 マインドフルネス心理療法はそれぞれの受容の哲学をもっていて類似しています 。自己洞察瞑想療法(SIMT)では、主に、心の哲学と脳神経生理学の観点から受容の 意義を導きだしています。どのような不快事象であっても受容して、意志的行動、 創造的行動をしていくのです。現実には、無限の可能性が含まれています。

災害にあって

 今度の震災はあまりに被害が大きく、家、家族、仕事、思い出の品、将来を奪わ れて、苦悩ははかりきれないほど深刻です。それでも、心の病気にならないように して生きて、復興しなければなりません。 個人の受容の限度を越えています。環境が深刻ですが、人は環境を変えていく力が あります。環境の中に、多くの被災者と支援者(海外からも)がいます。大勢の人 々が行動して環境を変えて行きます。だから、個人の努力と共に無数の人が支援の ために動いていますので、被災者の方に現われる現実が新しいものに変わって来ま す。支援者による活動が実るのを信じて、個人で受容できる心が使えれば受容して 、現実の中に可能性を見出して、できることを行動するのが、うつ病を予防することになると思います。
 呼吸法をしながら、受容の心を実行してみます。そして、他の時間のすべてにおいて、受容の心で生活します。それでも、つらいことが多いですから、自分の受容の限度を越える場 合は自分で耐えられないとわかります。自分ひとりで悩まないで、相談するとか支援を求めることが大切です。

(続く)
  • <目次>被災者の心のケア
  • Posted by MF総研/大田 at 21:42 | 災害とストレス | この記事のURL