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自殺未遂患者6割、境界性パーソナリティ障害 [2010年08月03日(Tue)]

自殺未遂患者6割、境界性パーソナリティ障害

 「向精神薬を大量に飲んだりリストカットを繰り返すなど、自殺に関連する行動で精神科 に入院した患者の約6割が、若年層に多い「境界性パーソナリティー障害」と診断されてい たことが、東京都立松沢病院の研究でわかった。」 こういう記事がある。  東京都の精神科救急医療の拠点病院である松沢病院の調査である。 自殺未遂の方法は、薬の過剰摂取が約3割、リストカットが約4割を占めた。 その中で、境界性パーソナリティー障害と診断されたのは全体の56%。

 記事では、こう説明している。
     「〈境界性パーソナリティー障害〉 物の見方や考え方に著しい偏りがあり、社会生活を 送るのが難しい。若い女性に多く、人に見捨てられるのではないかと強い不安を抱く、対人 関係が両極端で不安定、薬の大量摂取やリストカットなどの自傷行為を繰り返す――といっ た症状が出る。米国では人口の2%が診断基準に当てはまるとされ、治療は薬物療法と精神 療法が中心となる。 」

     「境界性パーソナリティー障害は思春期から青年期の患者が多く、衝動的な自傷行為を繰 り返す場合が多い。自殺リスクの高さは欧米では報告されており、8〜10%が自殺に至る とされる。 」

     「先進7カ国中、日本は唯一、15〜34歳の若い世代の死因で自殺がトップを占める。 」 「松沢病院の林直樹・精神科部長は「日本の自殺対策は中高年のうつ病対策に偏っているが 、境界性パーソナリティー障害が多い若年層への対策も必要だ」と指摘する。」 と、境界性パーソナリティ障害の領域の対策が必要であるとされる。

     「精神科で処方された向精神薬の過量服薬は社会問題となっており、・・・厚労省 は6月、自殺の危険性がある患者には向精神薬を長期間、大量に処方しないよう呼びかける 通知を日本医師会などに出した。 」

 だが、向精神薬の処方制限は根本解決にならない対策である。薬がなければ、他の自傷行為にまわるだけだろう。パーソナリティ障害が治らないことが苦しいのだから。
「日本の自殺対策は中高年のうつ病対策に偏っているが、境界性パーソナリティー障害が多 い若年層への対策も必要だ」。その通りである。若者の「ひきこもり」は、うつ病、不安障害、境界性パーソナリティ障害のためであることもあるだろう。
 心の病気になったら薬物療法以外の心理療法が遅れている。欧米では心理療法による治療法があるのに、 日本では、治療法といえば、薬物療法にかたよっている。心の病気・障害についての心理療 法が遅れていて、対策が見えない。心理療法を行う人の育成、将来にわたっての生活保障の対策がないから、難しい心の病気、障害の心理療法を習得しようという気になれない若者(大学・大学院で心理学を学ぶ人)が多いだろう。
 うつ病、不安障害、自殺行動などを治療するために、国民には、心理療法が必要とされていると思うが、それを習得しようという動機が医者にも心理士にも働かない制度になっている。新しい対策が必要があるのだが、動きが見えない。心理療法も習得が難しくて、専門家が必要がある。すべての精神科医が提供するというのは無理がある。
 自殺予防対策が検討され、上流の4つ、5つの原因から予防しようという手法が すすめられているが、境界性パーソナリティ障害(治りにくい非定型うつ病も)については 、問題としてうかびあがっていないようだった。境界性パーソナリティ障害であったために 自殺なさった場合、調査のサンプルの中になかったためかもしれない。
 自殺予防の最後のとりで、下流のうつ病などの病気、障害の治療を受けることができる対策を軽視しないでほしい。
 不安障害、アルコール依存症などもそうである。境界性パーソナリティ障害ばかりでなく 、こうした病気、障害も治らないで長引くと、就職もできず、自殺のリスクが高まる。
 アメリカでは、リネハンの弁証法的行動療法(マインドフルネス心理療法の一つ)によっ て境界性パーソナリティ障害の治療が行われる。だが、日本では、これを行うところが少な くて、この障害の治療を受けることができる環境になっていない。境界性パーソナリティ障 害による自殺も多いというが、それになると治療を受けつけるところ、しっかりと治せるところが少ない。
 「こころを救う:向精神薬で自殺未遂、診療所は… 人、設備足りず拒否も」という記事 もある。弁証法的行動療法はマインドフルネス心理療法の一種ではあるが、多くのスタッフ が共同で治療にあたる ことが原則とされている。セラピストが1人という小さな診療所では治療が難しいから治療 を断るという実情である。

 私どももスタッフが少なくて、グループ・カウンセリングしかできない。境界性パーソナ リティ障害の方についての個別の支援はできない。パーソナリティ障害は個別の手厚い対応 が必要となる。 私どもは、グループ・カウンセリングに参加して治す手法の講話を静かにきいて、治すための課題を自分で着実に実行できる問題、 せいぜい、うつ病、非定型うつ病、不安障害(対人恐怖症=社会不安障害、パニック障害、 PTSDなど)、家族の問題などに限定されている。それでも、 こういう病気、障害になったら、薬物療法では一部しか治らないが、こうしたマインドフルネス心理療法で治る人がいる。
 認知行動療法やマインドフルネス心理療法での治療を受けられる場所が少ない現在、 薬物療法で治らないと悲惨である。長年月、苦しみが続く。 自殺も起きる。 自殺予防対策には多面的な視点が必要である。実に難しい。
★自殺対策月間に寄せて・境界性パーソナリティー障害
Posted by MF総研/大田 at 07:11 | 自殺防止対策 | この記事のURL