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メランコリー型うつ病(後) [2010年05月12日(Wed)]

<シリーズ>うつ病や不安障害がなぜ薬物療法だけでは治らないのか、自己洞 察瞑想療法(SIMT)で治るのか

1、背景の神経生理学的基盤と自己洞察法の哲学 2、疾患や問題の各論 3、なぜSIMTで治るのか(別の連続記事)

(2)メランコリー型うつ病(後)

 

治るわけ

 こうしたメランコリー型うつ病も自己洞察瞑想療法(SIMT)で治る人がいるのはな ぜだろうか。
 メランコリー型うつ病では、治らないことが強いストレスであり、精神症状や身体症状が続く。 非定型うつ病のような発作的な症状(拒絶過敏性、発作的な鉛様麻痺感)はない。しかし、 意欲がない、頭が回転しない、死にたいという気持ちが持続し、変動が少ない。絶望の気持ちが強まると短期間でも自殺する。長期化した場合も、家族や環境の変化によって追い詰められると自殺が起きる。
 うつ病が長引いて完治したということにならないのは、再就職できない、復学で きないのであるが、それは、頭が回転しないからである。仕事や勉強に必要とされ る作業記憶(ワーキングメモリ)が働かない、思考力が回転しない、アイデアが出てこない、記憶力が劣る、人との会話がスムーズにできない。これら は、現在の瞬間に自己の色々な作用、情報を統合して、仕事や会話をしていく、ワーキングメモリ(作業記憶)の機能低下の様相を帯びている。こういう症状 があるために、復帰できるとは思えない、意欲も低下していて、とても就職できる とは思えない。こういう作用は、主に、前頭前野、帯状回、海馬などの機能低下に よるものが多いと推測される。こういう社会生活に必要な脳機能が回復しないので 復帰できない。薬物療法を受けても治らない場合に、苦悩する思考を繰り返すので 、副腎皮質からストレスホルモンの分泌が止まらず、前頭前野などが一層傷つき重症化していく。生きている喜びがなく、治る希望がなく、自殺願望が起きる。小さなきっかけでも死ぬ。
 薬物療法で治らないうつ病が自己洞察瞑想療法(SIMT)で治る人がいるのはなぜか 。別の記事に書いたように、自己洞察瞑想療法(SIMT)は、形式的には 意志作用のリハビリテーションであるといってよい。前頭前野、帯状回などの機能訓練にあたる 。
 治りたい、治すという「目的」(価値、願いを明確にもち、毎日確認)を想起 して、不快な症状があっても、それを横目に見ながら、なすべきことを為す。 病気の人の「為すべきこと」は、前頭前野、帯状回などの機能の向上になるような ことを実行することである。どういうことが効果があるかを助言する。呼吸法、自 己洞察法(自己の種々の精神作用の自覚、使い方によっては害になるので益になる 使い方を訓練する)、脳機能活性化トレーニング(ワーキングメモリ機能の活性化 )、運動、ささやかな行動などである。こうした行動は、長期報酬課題の実行、ワ ーキングメモリの機能使用にあたる。まさに、前頭前野、帯状回などを動かすこと になる。これを毎日、実行するよう自己洞察瞑想療法(SIMT)では、標準的な課題が 助言される。人の神経細胞は使用頻度が高いと発達する。使用頻度が低いと神経細 胞がすたれる。その神経細胞が使用されると血液が送られる。脳由来神経栄養因子 (BDNF)ができて、神経細胞が増殖する、軸索が伸びる、シナプスが増える。 こうして、前頭前野、帯状回などの神経細胞が増加して、健康な状態に戻って、う つ病の症状が消失すると推測される。
 メランコリー型うつ病には、発作的な症状(拒絶過敏性、鉛様麻痺感など)がな いので、この訓練をすれば、順調に回復する。薬物療法で治らないのに自己洞察瞑 想療法(SIMT)でなおるのは、こういう機序であろうと推測している。薬物療法の場 合には、効くかどうかわからないのだが、自己洞察瞑想療法(SIMT)の場合には、前 頭前野などの機能とされる課題を実行するので、必ず神経細胞が動く。実施方法が 適切で実施量が多ければ、必ず変化が起きるはずである。使う神経は活性化する。 自己洞察瞑想療法(SIMT)の課題は、意志作用の訓練である。目的を想起し、不要な 作用(特に否定的な思考)を抑制し、不快事象があっても目的を放棄せず、目的に そった行動を選択し、決意し、実行する。こうして、うつ病が治る。このトレーニ ングによって治った人は、再発が少ない。以前にうつ病になった精神作用の使い方 がわかり、トレーニングによって、うつ病にならない意志作用の使いかたの訓練が できているからである。
 以上は、形式的、技法的な方面からと脳神経生理学的な視点から治るわけを推測したが、実質的、自己や世界(対象と自己の生きる場所)の哲学的見方の変化がある。自己洞察瞑想療法(SIMT)の実践は、自己自身の哲学的な見方の変換を起こす。技法も実は、自己の哲学的な探求からのものである。自己の作用、苦痛の対象は何か、作用を起す自己とは何かという自己を深く探求する。苦痛の対象も苦痛の作用(感情や衝動的思考・行動が多い)も、自己自身のことであるとの自覚的見方がうまれる。そうなると、うつ病をひきおこすストレスも自己であるから従来の対処のしかたが変化してくる。うつ病は治る。治った後も、世界、対象、自己の見方が変化しているので再発しにくい。
 こうした哲学的見方は新しいものではなく、多くの人が教えているし、実践している。千利休、松尾芭蕉、東山魁夷、宮沢賢治、夏目漱石、志賀直哉、遠藤周作、河井寛次郎、神谷美恵子、岡本かの子、川端康成、永井隆、平塚らいてふ、片岡仁志・・・。もちろん、西田幾多郎。

治ったと思っても油断しない

   治ったと思っても、過労は注意すること、そして、自己洞察瞑想は、3−5年は 怠らないように助言しているのは同じである。
 過労からもうつ病になることが多い。ただし、忙しいだけではうつ病にならない 。忙しく動いている人でうつ病にならない人がいる。状況や心の使いかたが違うの である。

向かない人

 自己洞察瞑想療法(SIMT)が向かないうつ病も、非定型うつ病の場合と同様である 。 前頭前野などを活性化させる 課題を実行しなければならない。 こうしたトレーニングができない人には、この心理療法は不向きである。

自殺の背景にうつ病も

   自殺した人にはうつ病が多い。60歳以上は特に多いが、それまで順調な人生を 生きてきたのに、高齢になってからうつ病になり自殺する。がんや介護状態からの 心理的ストレス、介護するストレス、愛する人の死、などによって、心理的ストレ スが強くて、うつ病になる。ストレスは強いままだと、薬物療法の効果を減殺して 、治らない。前頭前野の機能低下が治らないから、自殺したくなる。高齢者の自殺 防止にも、うつ病を心理療法で治すことが重要な方針となるはずである。
 自死遺族がうつ病になるのも、メランコリー型うつ病が多いだろう。大切な家族 を失った悲しみ、後悔、自己批判、自死をきっかけとして家族の不和、進路や経済状況の激変などの複雑な強い心理的ストレスによって、うつ 病になりやすい。薬物療法だけではその強い心理的ストレスはいやされることは少 ない。自死遺族の深い悲しみ苦悩による自殺防止にも心理療法が効果的だろう。経済社会的な支援ばかりではなく、薬物療法だけでは癒されない深い苦悩は認知行動療法やマインドフルネス心理療法も効果的だろう。
 不安障害も、薬物療法だけでは治りにくい人がいる。 次に、不安障害(パニック障害、心的外傷後ストレス障害、対人恐怖症など)につ いて考察する。
Posted by MF総研/大田 at 23:18 | 新しい心理療法 | この記事のURL