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感情的回路と理性的回路 [2010年04月29日(Thu)]

感情的回路と理性的回路

 うつ病(不安障害についても同様だろう)になると、内側前頭前野、前部帯状回・ 情動領域、扁桃体(感情を起す)が亢進傾向にある。健康な人はこの部分はそれほ ど亢進していない。一方、健康な人は 背外側前頭前野が活発である。ワーキングメモリ(作業記憶)の機能は、仕事をす る時に活発に動く。長期報酬課題(合目的的活動=目的向かって自己の精神作用を 統合して行動する)の実行にも、背外側前頭前野が活性化する。
 ところで、前部帯状回情動領域と前部帯状回認知領域とは相互に抑制している。 (⇒帯状回の認知領域と情動領域は相互に抑制)
     「ヒトの前部帯状回の活動様式をfMRIで調べてみる。ストループ課題を実行させ ると、前部帯状 回の背側部の認知系活動が上昇している。一方、殺人などの情動的 な言葉課題テストでは、吻側部 の情動系の活動上昇がおこってくる。面白いことに 吻側と背側は相反関係にあり、片側の活動 上昇では、他側は抑制されている。 これらのことは生体の高次の覚醒状態を示すものであり、 視床下部→視床→帯 状回→連合野の情報伝達を示している。」
 何かのストレスや刺激でネガティブな思考(内側前頭前野)や感情(扁桃体)を 激しく興奮させる場合、前部帯状回情動領域を通して前部帯状回認知領域を抑制し てしまうので、感情および自律神経系の反応の不快さに耐え切れずに、衝動的な行 動、刹那的行動をとりやすいだろう。いわば「感情的衝動的な回路」である。  見たり、聞いたり、内部感覚を感じて、悲観的な思考(多分、内側前頭前野)を 渦まかせると、前部帯状回情動領域や扁桃体が興奮する。これが活発すぎると前部 帯状回認知領域を抑制して、背外側前頭前野から前部帯状回認知領域を抑制してし まうだろう。そうなると、ワーキングメモリが働かず、不幸にならない ような目的を思い浮かべながら、感情にまかせた行動を抑制しながら、後部帯状回記憶 領域を通して、冷静な行動が何であるかを検索できなくなるだろう。
 このようにみれば、背外側前頭前野、前部帯状回認知領域および後部記憶領域の回路 は、西田哲学でいう「意志作用」を担当する回路とみられる。いわば「理性の回路 」だろう。思考は思考内容を対象とする単一の作用である。感情もそうである。 だが、意志作用は思考や感情などを監視し、自己自身のすべての作用を統合して、目的行動を行う作用である。格調高い思考ができても、社会的行動への意志作用が活性化しないと仕事や人間関係がうまくいかず苦しむ。

感情が悪いのではない、状況によって適切な行動を

 人が社会生活を送る上で、感情は起きる。不安、不満、怒り、イライラ、哀しみ、後悔、などの感情は起きる。感情が起きるのが悪いのではない、感情が起きるように、人間はできている。感情は起きるのが自然であるから、起きることを嫌わず、起きそうな場面を回避せず、感情が起きても、意志作用でのりこえればよい。感情回路をあまりに興奮して、冷静な行動ができないほどにならないように、理性の回路を動かせばよいのである。繰り返すが、感情は悪いものではない、嫌うものではない、自分の生命の反応である。だが、感情に振り回されて、周囲の人に暴力をしたり、嫌われる(対人関係の悪化)ような反応をして、相手も、自分も不幸になることは防止したい。感情は起きるから、自分の作用であるから、自分で適切に扱って、自分も周囲の人も苦しめないような反応(思考、行動)をしていく。感情の回路と理性の回路をうまく使いこなしていくというのが、うつ病や不安障害、依存症、家族の葛藤・対人関係の改善や予防の方針である。自分、自分の精神作用をよく知り、使いこなしていくことが基礎となる。自己の種々の精神作用を観察、瞑想をとおして洞察していく。

 種々の刺激、不快事象、感情、相手の状況、自分の考えが渦巻く中で、 次の行動をこうしたらこうなるという結果を推測し、長期的な目的を思い浮かべて それからそれないようにするのは、どのような方策があるかを自己の経験、学習し たことの記憶の中から検索して、妥当な行動を決意するのであるから、長期報酬課 題、合目的的行動である。まさに「意志作用」である。
 うつ病や不安障害、依存症、暴力傾向になると、この理性の回路の作用、意志作 用が低下しているとみられる。だから、これらを治療する心理療法は、「意志作用 の活性化」と「情動回路の抑制」が方針となるのであろう。 まだ、研究発展の途上であるが、自己洞察瞑想療法( SIMT: Self Insight Meditation Therapy )は禅のこうした哲学(西田哲学)と実践を応用して医療(心 理療法)の領域に貢献できないかためしているところである。SIMTの背景の哲学や 治療実践が脳神経生理学的な研究の成果と整合性があるので、安堵している。 うつ病(メランコリー型うつ病、非定型うつ病)、不安障害(パニック障害、心的 外傷後ストレス障害、対人恐怖症など)、家族間の葛藤などに効果がみられた。 これを習得された方によって、さらに適用領域が広がっていくことと期待している 。
Posted by MF総研/大田 at 16:11 | 新しい心理療法 | この記事のURL