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薬の開発が後退の恐れ [2010年03月14日(Sun)]

薬の開発が後退の恐れ

=マインドフルネス心理療法と西田哲学

昨日(3月13日)、NHK総合テレビの 「追跡! A to Z!」で、「新薬が生まれない」という放送があった。
    NHK オンライン
    「アルツハイマー病、糖尿病、うつ病…。患者やその家族が待ち望む「新薬」の開 発が、今後進まなくなるのではないかという不安が広がっている。・・・」
 特許がきれる薬の中には、うつ病の薬もある。これから、その抗うつ薬はジェネ リック薬品を製造販売する会社から販売されて、安い費用で手に入る。しかし、新 薬を開発してきた製薬会社にとっては収入の減少となり新薬の開発の費用を捻出で きなくなるかもしれない。 政府が新しい施策をとらないと、アルツハイマー病、がん、うつ病などの画期的な 新薬の開発が危機を迎える。
 抗うつ薬の領域では、2009年7月、新しいタイプの薬が発売された。ノルアドレナ リン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSa)である。 これも、ノルアドレナリン神経、セロトニン神経に作用する薬である。画期的とい うわけでもない。従来の延長線上の薬である。
 うつ病や不安障害(パニック障害、対人恐怖症、心的外傷後ストレス障害など) は薬で軽くなってから、完治せずに長引く。その段階は、セロトニン神経やノルア ドレナリン神経の問題ではなさそうである。

 うつ病や不安障害になると、目的に向かっての行動ができなくなる。 うつ病になると、仕事・勉強や趣味などの目的ある行動への意志を起さない。 パニック障害でも発作は起こらなくなっていても、予期不安を起し、目的的行動( 電車に乗る、学校・仕事に出ていく、など)への意志を貫くことができない。
 うつ病や不安障害は、意志作用の障害といえる様相を帯びている。薬で治りにく いわけである。意志作用について、西田哲学では次の記事に述べた。
    「意志はある目的の自覚より起こり、その目的を達することによって消滅する。・ ・・ 合目的的作用というものが成立するには、その終わりに現われるものが始めに与え られ たものでなければならない。合目的的作用とはその前後を包むものが、自己自身の 内容 を限定する過程と見ることができる。・・・ かかる意味において我々の意志の奥底に考えられる真の自己とは、我々の意志を超 越し てこれを内に包むものである、我々の意志はかかる自己によって基礎づけられてい るの である。」(134)。
 この「意志作用」は、思惟作用とは異なる高次の精神作用である。認知療法は、 思惟内容の置き換えを指導する。うつ病、不安障害の患者の思惟作用は活発である 。否定的、予期不安的思惟が活発である。そのことによって、合目的的行動を起す ことができず、回避、ひきこもりになる。それを苦にして、さらに苦痛の思惟を繰 りかえす。認知療法は、その思惟内容を肯定的なものに置き換えるように指導する 心理療法である。抑うつ症状の重い「非常に重症」の段階を薬で軽くしてから、認 知療法を受けるのは、薬よりもすぐれた効果があるだろう。思惟内容の置き換えは 薬では無理であるから。
 だが、認知療法でも治らない患者がいることがわかってきた。認知療法は思惟の レベルである。だが、うつ病、不安障害の患者に低下しているのは、思惟作用では なく、意志作用である。合目的的作用の低下である。不快な事象が今(始めである )あっても、終わりにあるもの(目的=電車に乗る、学校・仕事に行く、病気を治 す)を想起して、これをあくまでも放棄 せず(前後を包む心の作用を持続させる必要がある)、願い(終わりにある目的に かなう行為は何であるかを探索して選択して(決意)、そして実行に移す。これが 意志作用である。そして、すぐに状況が変化する(たとえば、動悸だけだったのに 、行動しているうちに、不安やはきけが出てきた)ので、さらに、それを観察しつ つ、やはり目的達成の行動の探索、決意、実行を持続しなければならない。こうい う精神作用を遂行する自己は、もう意識的な自己ではない。こういう意志作用をす るものは、自覚的自己ではなくて、さらに深い叡智的自己である。
 認知療法は認知の内容を変える心理療法であるが、マインドフルネス心理療法は 、意志作用を活性化させる心理療法であるといえよう。かなり、異なる心理療法で ある。うつ病や不安障害がマインドフルネス心理療法で治るわけは、神経生理学的 フュージョン(連合)をもたらすからではないだろうか。前後を包み、合目的的行 動をするのは、ワーキングメモリとしての背外側前頭前野の機能であろう。 不快事象があっても短絡的な行動を抑制するのは、眼窩前頭前野であろう。 感情にかられた行動を抑制しつつ、価値実現の行動を探索するのは、帯状回や前頭 前野の機能だろう。マインドフルネス心理療法の課題を繰り返すことで、こういう 領域が活性化して、症状(回避行動、ひきこもり、予期不安、広場恐怖、感情的な反応パターン、まぎらすための暴力、過食、リストカットなど)が軽くなっていくのではないかと推測できる。
 マインドフルネス心理療法の神経生理学的フュージョン(連合)については、ア メリカでも日本でも、全く研究がすすんでいないと思う。 なぜ、うつ病や不安障害が治るのかということは、セロトニン仮説では説明できな い。セロトニン神経は意志作用にはかかわっていないからである。薬の開発方針に も影響するはずである。今後の課題だろう。
 若い頃から、不安、怒り、不満、それによる、回避行動、ひきこもり、過食、リストカット、依存行為、暴力行為等がみ られるのは、上記のような意味で、意志作用の機能低下といえそうである。若いころ から、マインドフルネス心理療法のトレーニングができるようにならないものだろうか。
Posted by MF総研/大田 at 13:14 | 新しい心理療法 | この記事のURL