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作用の区別や推移 [2010年02月05日(Fri)]

作用の区別や推移

=マインドフルネス心理療法と西田哲学

 マインドフルネス心理療法の救われる構造を西田幾多郎の言葉で簡単に見ている。 西田幾多郎は<自己>を哲学的に記述した。哲学は心理療 法ではないが、マインドフルネス心理療法と似たように、自己や精神活動について記 述している。 マインドフルネス心理療法に応用できるようなところをみている。

作用の区別や推移

 精神疾患になると、自己がわからない状況になる。自己を知るということは自己の種々の作用(感覚、思考、感情、意志などの種々の作用)を知ることである、そして、その作用を統一する自分を知ることである。
     「知覚、思惟、意志、直観というごときものは、厳密に区別すべきものたると共に、相互に関係を有し、その根底にこれ等を統一する何物かがなければならぬ。かかるものをつかむことによって、これ等のものの相互の区別及び関係が明らかにせられるのである。意識作用としては、これ等のほかになお記憶、想像、感情など多く論ずべきものがあろうが・・・。」( 「場所」巻4-272)

     「すべて作用というのは一つの場所が直に真の無の場所に於てあると見られる場合に現われるのである、種々なる作用の区別や推移が意志の立場に於て見られ得ると考えられるのはこのゆえである。」 (「場所」巻4-267)

マインドフルネス心理療法へ

 うつ病や不安障害になると、否定的な思考(思惟)が繰り返される。感情が起きるのがつらいと思考したり、感情を嫌悪して避けるという意志決定をする。精神疾患になると感覚(知覚)、思考、感情、意志など「作用」の区別や推移を知らない人が多い。そのために、治すための「作用」の使い方はもちろんわかっていない。それゆえ、精神疾患を治すための最も基礎となるのが、こうした自己の「作用」の区別や推移を知ることである。直観をとおして、自己の作用を観察して、名前をつけ、その変化(推移)を観察する。西田のいう作用を知るというのは深いものであるが、マインドフルネス心理療法では、こうした作用の識別と推移を観察(呼吸法、日常行動事に)を通して知るトレーニングを行う(機能分析法)。
 西田は「種々なる作用の区別や推移が意志の立場に於て見られ得る」という。すなわち、作用の区別や推移を知るのは「意志」であるということである。マインドフルネス心理療法の機能分析法は、意志作用を活性化させることになっている。マインドフルネス心理療法のトレーニングによって、意志が強く活性化されるのである。不快事象の受容と回避行動の克服には、強い意志が必要である。作用の区別、推移を観察して知ることが「意志」を活性化させている可能性がある。 うつ病や不安障害には、回避、逃避、日常生活の崩壊、無気力など 意志の低下が観察される。マインドフルネス心理療法がこうした精神疾患に 改善効果があるのは、作用を知るトレーニング(機能分析法)、「意志」作用を活性化するゆえだろうか。今後、マインドフルネス心理療法の臨床、研究を重ねて明らかにすべきことである。神経生理学的な観点から言えば、瞬間瞬間に自己の作用を観察すること(直観、反省、自覚)は前頭前野の機能の活性化ではないかと思う。

うつ病は「気分障害」と「意志作用障害」

 うつ病は「気分障害」と称されているが、それは、抑うつ症状に注目したものであり、抑うつ症状がなくなってから、長く「意志の障害」の様相がある。うつ病は複合的な精神疾患である。
 最近の研究で、抗うつ薬は「非常に重症」の患者をやや軽くする効果があるが、重症、軽症には効果があるとは断定できないとされた。抗うつ薬は抑うつ症状、気分の改善の効果はある(責任部位が大脳辺縁系や帯状回か?)が、意志作用など(前頭前野が責任部位か?)の改善には顕著な効果を及ぼすことができないのではないか。うつ病の「意志作用の障害」の回復と再発防止(そして自殺対策に)には、心理療法が必須ではないかと思う。

 (続)
    (注)
  • 上記の(巻x-xx)は、西田幾多郎全集、昭和40年、岩波書店の巻数と頁。
Posted by MF総研/大田 at 20:53 | 私たちの心理療法 | この記事のURL