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生きる価値を確認して治す意志から行動へ [2010年01月11日(Mon)]

生きる価値を確認して治す意志から行動へ

 =マインドフルネス心理療法と西田哲学

 マインドフルネス心理療法は禅の哲学(多分、人の心の真相の哲学)を基礎にした心理療法的助言指導によって心の病気を治す心理療法である。マイン ドフルネス心理療法で救われる構造を西田哲学(西田幾多郎)の言葉で簡単に見ている。

生きる価値を確認して治す意志から行動へ

 自己洞察瞑想療法はマインドフルネス心理療法の一種である。重要な技法の一つに「価値確認法 」がある。西田幾多郎には価値についての言及がある。自己洞察瞑想療法のうちの「価値確認法」 が指導される哲学的な根拠となる。

 「意志は意識の根本的統一作用であって、ただちにまた実在の根本たる統一力の発現である。意 志は他の為の活動ではなく、おのれ自らの為の活動である。意志の価値を定むる根本は意志その者 の中に求むるより外はないのである。(177)」
 行為をしようとする時に、要求が「意識の上には目的観念として現われ、これによりて意識の統 一するにあるのである。この統一が完成せられた時、即ち理想が実現せられた時我々に満足の感情 を生じ、これに反した時は不満足の感情を生ずるのである。(177)」
 個人にとって「善とは理想の実現、要求の満足である」(177)。組織の理想ではない。個人の理 想の実現である。 「意志の原因となる本来の要求或いは理想は要するに自己その者の性質より起こるのである、即ち 自己の力であるといってもよいのである。」(179)
 「我々の意識は思惟、想像においても意志においてもまたいわゆる知覚、感情、衝動においても 皆その根底には内面統一なる者が働いているので、意識現象はすべてこの一なる者の発展完成であ る。」(179-180)
 こうして生きる行為とは「意志の発展完成」「自己の発展完成である」(180)。

 これは、「利己主義またはわがまま主義」ではない(179)。「最も深き自己の内面的要求の声は 我々にとりて大なる威力を有し、人生においてこれより厳なるものはないのである。」(179)他者 を苦しめる欲望であってはならないし、他者から搾取されているものであってもならない。個人の 要求が社会の発展と自己同一であるべきである。
 ただし「いたずらに要求を抑制するのはかえって善の本性にもとったものである。」(178)。「 快楽と幸福とは似て非なるものである。」(179)。大きな幸福である「自己実現の要求」があるので あれば、「小なる要求を抑制する必要が起こるのである。」(178)

マインドフルネス心理療法へ

 うつ病、不安障害、依存症などになり長引くと、このような人生上の「価値」を見失う。もう治 らない、だめだと思う、幸福になれない(=自己実現できない)と思う。絶望である。このため、治る可能性のある治療行動、 意志的行為をしなくなる。
 そこでマインドフルネス心理療法では、本人に価値確認を促す。自分の 幸福、人生の価値、願いを確認して、いつも保持して、価値を想起する訓練を重ねる。 不快事象が起きても、小さな要求、快楽を求めて短絡的な行動をとらず、価値を想起して価値実現の行動を選択 するようにくり返し訓練する。
 毎朝、自分の価値、願いを確認すること、不快事象が起きた時にも願いを想起し価値実現の行動 をすること、長期的な治療行動を覚悟して今の快楽(何にもならない遊び、過食、ゲーム、依存薬 物、依存交際、など)や治すのに効果のない行為(読書、まじない、占い、治る保障のない苦 行的宗教的行為、治る原理のない支援活動など)を抑制して、価値実現または症状改善になる課題(呼吸法、自己 洞察法、運動など)を実行することを助言する。
 生きる価値は親や組織から与えられ強制されるものであっては自己実現ではない。深い内面から 起きるものでなければならない。自由意志によって起きるものでなければならない。個人的、唯一 のものでなければならない。
 自己の価値、願いを明確にもつならば、うつ病、不安障害の人も面倒な課題を実行するのである。症状の不快 さに負けて短絡的な依存、回避、逃避を抑制して、治るための課題を実行するのである。
 心理療法は6か月から2年かかる。種々の挫折、価値の放棄の誘惑とストレスがある。長期間、クライアント個人でこのような価値を保持し続けることは難しい。 したがって、ベテランの治療者(カウンセラー)による助言が重要である。ただ、治療者も人間である。治療者にも助言をききいれないクライアントに種々の感情が起きる。治療者とクライアントがお互いに信頼関係がないと長期間の治療行動は挫折する。1、2回の相談ではない、2年も同じクライアントと課題を実行していく。ただの呼吸法、ただのマインドフルネス、瞑想法、坐禅ではない。治療者にも長期間の 自己洞察が重要となる。長期間治療行動をするマインドフルネス心理療法も認知療法も難しい、誰でもできるものではない。国や大学が早く認知療法やマインドフルネス心理療法者の育成にとりかかってほしい。
 (続)
  • ( )は、岩波文庫『善の研究』の頁。

Posted by MF総研/大田 at 17:49 | 私たちの心理療法 | この記事のURL