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カウンセラー育成講座 [2009年12月29日(Tue)]

カウンセラー育成講座

 今年も自殺が3万人以上であり、史上最悪ではないかと予想されています。マインドフルネス心 理療法も万能ではないですが、うつ病の患者さんがマインドフルネス、アクセプタンス、自己探求 の心のトレーニングを真剣になされば、治るものです。自殺しないですみます。
 マインドフルネス心理療法としての自己洞察瞑想療法のカウンセラー育成講座を毎年開催してい ます。第9期は、2010年春に開催の予定です。
 仮の申し込みを受けていますが、もう定員近くに達しました。正式の申し込みは詳細決定後、メ ールでおしらせして、正式に申し込み確認していただきます。次のようなことをご検討の上、お申 し込みいただきます。

<カウンセラー育成講座に正規にお申し込みの前にご検討ください>
 マインドフルネス心理療法は毎日、毎時間、時々刻々と「現在」の瞬間にトレーニングする型の 心理療法です。カウンセラーが実践しないと、心理療法の技法が 習得されません。講座の受講生には、毎回、毎日実行されるよう、呼吸法、自己洞察法などの課題 を出します。 できない方は習得されません。だから、他の認知行動療法とは違っています。他の認知行動療法の 技法はカウンセラー自身は実行しなくても、その技法を覚えてクライアントに指導できるでしょう 。たとえば、エクスポージャー法はカウンセラーは実行しませんが、クライアントに実行するよう に言うことができます。 しかし、マインドフルネス心理療法の技法はカウンセラー自身が実行する必要があります。マイン ドフルネス心理療法の技法は、カウンセラーが実行しないとよくわからない技法です。

 マインドフルネス心理療法には、坐禅(*下記注1)に似たような、心のトレーニングがあります 。静かに坐って(毎日10分から30分)行うものと、 人と対面中・仕事の現場で常時実行するトレーニングの両方があります。もちろん、現在の職務に 支障が起きるわけではありません(*下記注2)。 講座の受講者にも、心のトレーニング を自主的に、毎日、やっていただく課題があります。 マインドフルネス心理療法は、マインドフルネス、アクセプタンスの時々刻々の実行です。今の瞬 間の私的事象の流れ(ACTで文脈といっています、西田哲学では過去未来が自己同一である現在から 現在への絶対現在)において、現在の瞬間にいつも、実行する心の使い方の訓練を用いる心理療法です 。受講者の方にも、毎日、常時実行してください、というような課題を出します。 そんなことはできないという方はクライアント(患者さん)にマインドフルネス心理療法を提供で きません。自分で実践しないカウンセラーは、他の人に指導できません。 スポーツ、音楽の指導者は、自分でも毎日、トレーニングするのです。マインドフルネス心理療法 は、毎日実行する心の使いかたを教えるものです。治療行為を行うマインドフルネス心理療法者は 、毎日、トレーニングを自分でもする必要があります。
 マインドフルネス心理療法は、理論だけ、理屈だけの心理療法ではありません。目前の役割行動 に集中して生きる、むだな考えは抑制して生活する、自己とは何かの探求を、心の使い方のトレー ニングを実行していただきます。 「自分とは何か」「悩み」とは何か、何が悩むのかを行動的に実践的に探求していく心理療法です 。講義に出席するだけでは習得できません。ご自分でも日々、実行しないと、マインドフルネス心 理療法の技法を実践しないわけですから、その技法を用いて他のひとを治療することはできません 。
 講義のたびに、課題を毎日実行していただきます。毎日実行する課題です。そのおつもりで 講座の受講をお申し込みください。

(*注1)わかっていただきにくいので「坐禅に似た」と言っていますが、似ているのは「常時、く ふうしていること」から言ったものです。坐禅にも呼吸法があり、生活行動中のくふうがあります が、内実は全くといっていいくらい違います。マインドフルネス心理療法は、 西田哲学でいう「行為的直観」による行動、見方ができるようにすること、「真の自己=すべ ての現象がある場としての自己の自覚」(*注4)によって心の病気を治すことです。禅は心の病気のことは何もいいませんし、言葉での 説明をしませんが、マインドフルネス心理療法では説明<心の病気の原因、治す方法、くふうのし かたなど>を多くします。開祖(道元、白隠など)の思想(宗教的な価値<悟り、何も求めない坐 禅など>をめざす)や作法(宗教的意味を持つ作法)は関係ありません。禅の目的は、見性、悟り 、何も求めない坐禅などの統一した目標ですが、マインドフルネス心理療法の目的はそういうものではありません 。心理療法の目的は個人によって違います。個人のうつ病の治療、予防です。不安障害の治療、家族の不和の解決などです。 心の病気の治療、予防をめざして、「行為的直観 」的に30分くらい呼吸法を行い、常時「行為的直観」的に職場、家庭で 家族と話し、仕事をし行動します。そうして生活することが心理的ストレスの対処法となっていて 、うつ病などが改善するのです。治すのが目的ですから、治った時に治療者とクライアント(患者 )との関係が終了します。禅は別な目的(悟りなどの宗教的境地)を求めて、指導が長期間になる ようです。この点でも違います。宗教としての坐禅は、健康な人が行うものでしょう。個人的な病気の治癒というものを目的とせずに、高い見地をめざすものでしょう。要するに、宗教としての禅は宗教者、禅僧などの宗教的思想も含まれているが、 心理療法としてのマインドフルネス心理療法は、宗教的な目的、思想や作法は用いず、心の病気の治療に関係ある、心理事象として実在する精神作用の探求の哲学(ほとんど西田哲学)のみを利用するということになります。感覚、思考、意志、行為、独断的な心理、自己、環境とは何かなどの哲学です。アメリカのマインドフルネス心理療法も同様です。

(*注2)カウンセラー講座の課題を実行しても、現在の職務や家族との会話に支障が起きるわけではありません。そういう場での心の使い 方ですから。職場、対話中に同時にできる心の観察やよりよく仕事や会話にもどる心の使い方です 。たとえば、仕事中に、仕事と無関係の出来事の記憶が想起された時には、それと気づいてすぐ目 前の仕事に意識を向ける、というような。家族や職場の人と話しをしていたら、不安とか怒りが出 てきたら、それと気づいて名前をつけてまた対話に意識を向けるとか、 そういう心のトレーニングです。うつ病や不安障害のもととなる不安、不満の感情やそれに気づく 反省的思考は職場、家庭、対話中に頻繁に起こるものです。受講者もそういう現実の場面での観察 、名前づけ、無評価で観察して特徴を知る、仕事や対話にすぐもどるなどのトレーニングができて いないと、クライアントに教えることができないでしょう。
 「自分は仕事が忙しいから課題ができそうもない」というのは誤解です。仕事の最中にも、仕事 でない私的時間にも、心、精神作用、意識現象が動いています。その観察、新しい使い方(直接経 験から遠く離れた思考はなるべく抑制する、直接経験にもとづかない判断には固執しない、色めが ねのように働く「闇の心理」に気づき止める、など)のトレーニングです。受講生が課題を実行 すると、クライアントのためではなくて、受講生自身の仕事や会話がかえって実りのあるものにな るでしょう。

(*注3)現在、うつ病や不安障害になっておられる患者さんが治すためにはこの講座は向いていま せん。この講座は、指導者育成向けです。治すのに必要であること以上の理論や指導法の学習時間 も多いので、患者さんには無用のことが多いです。治すためにはカウンセリングを受けてください 。罹病中のかたは、健康な人と比較して、かなり心の使い方が変化しています。カウンセラー講座 を受けたくらいでは変化が容易には起こりません。罹病中のかたは グループ・セッションに参加して、トレーニングしながら、個人の問題について日記指導をおこな いますので、心の使い方の助言を受けて治るコツをつかめます。カウンセラー講座では、個人的な 問題の助言はありません。トレーニングの時間も少ないです。

(*注4)アメリカでも日本でも、マインドフルネス心理療法は禅の哲学(西田哲学といってよいで しょう)を応用した心理療法ですので、「概念としてえがく自己」は真の自己ではないといい、真 の自己の自覚をうながします。真の自己をACTでは、「文脈としての自己」「観察する自己」と呼ん でいます。西田哲学では「意識の野」よりも深く、それを包む「絶対無の場所」をいいますから、ACTはそこまで深くはないでしょう。自己洞察瞑想 療法でも、すべての意識現象を映しすべてを包む鏡のような自己の自覚をうながします。「自分は だめ人間だ、私は価値がない」「私は不安を持ち人並みのことができない」というような「(否定 的、嫌悪的な)概念的自己」を対象として描いて思考作用を繰り返していてストレス反応を起して 悪化させているのが罹病中の人と言えます。そういう思考で描いた自己は、真の自己ではないから そのような自己概念の対象的思考は抑制して、真の自己を探求する、それは精神疾患を治すためで す。 こういう精神疾患の治療のために概念的自己ではなく、真の自己を探求する ことは宗教の禅(目的持たない坐禅)にはないようですから、この点でも宗教の禅とマインドフルネス心理療法は違いま す。 (ACTはアメリカのマインドフルネス心理療法の一つです)
Posted by MF総研/大田 at 13:42 | 私たちの心理療法 | この記事のURL