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すぐ過去の意識が働く [2009年11月16日(Mon)]
=マインドフルネス心理療法と西田哲学

 マインドフルネス心理療法の救われる構造を西田幾多郎の言葉で簡単に見ている。 西田幾多郎は<自己>を哲学的に記述した。哲学は心理療 法ではないが、マインドフルネス心理療法と似たように、自己や精神活動について記 述している。 マインドフルネス心理療法と似たようなところをみている。

 思考は自己や他者の幸福を実現するための思考であれば考える価値があるが、しか し、 自己を見失う思考、自己を傷つける思考であれば苦悩をもたらす。うつ病、不安障害 、家族の不和、近隣とのトラブル、犯罪などに見られるのが過去の参照によって起き るということもできる。

すぐ過去の意識が働く


 論文『善の研究』に次の語がある。
     「意味とか判断とかを生ずるのもつまり現在の意識を過去の意識に結合する より起こるのである。即ちこれを大なる意識系統の中に統一する統一作用に基づくの である。意味とか判断とかいうのは現在意識と他との関係を示す者で、即ち意識系統 の中における現在意識の位置を現わすに過ぎない。例えばある聴覚についてこれを鐘 声と判じた時は、ただ過去の経験中においてこれが位置を定めたのである。そ れで、いかなる意識があっても、それが厳密なる統一の状態にある間は、いつでも純粋 経験である、即ち単に事実である。これに反し、この統一が破れた時、即ち他との関 係に入った時、意味を生じ判断を生ずるのである。我々に直接に現われ来る純粋経 験に対し、すぐ過去の意識が働いて来るので、これが現在意識の一部と結合し一 部と衝突し、ここに純粋経験の状態が分析せられ破壊せられるようになる。」 (1)
 判断には過去の参照が伴う。だが、嫌悪、不快の体験の参照は度が過ぎると苦悩の 再現となり抑うつをひきおこし、予期不安を起し、行為の回避、逃避をひきおこす。
  • <不快、嫌悪的事象のくり返し想起>
    つらい出来事が終って後、数時間も想起したり、何かのきっかけによって、自分のつ らい過去やつらい状況を想起し、思考を重ねていく。それが、抑うつをもたらす。
  • <行為の回避、逃避>
    ある行為をしようとした時に、過去のつらい体験が再び起きると予測し非常におそれ るならば、その行為を中止する。予期不安、広場恐怖、ひきこもりなどをおこす。 予期不安による行動の回避は、次のプロセスによって起きる。
      行為の意志を起す→過去の恐怖体験の参照が起きる→未来の行為中に再び恐怖 体験が起きることの予測→行為の前に現在に恐怖が起きる→行為の中止・逃避
 前の記事でみたように、思考は自発自転する。その内容は過去を参照したものであ る。過去に思考した否定的思考や希死念慮、自殺念慮も自動的に回転していく。その 間に、感情の興奮、ストレスホルモンの分泌、交感神経の興奮(神経生理学的フュー ジョン(連合))が伴っていて、気がついた時には、落ち込み、疲弊し、鉛様麻痺感 や過眠へのスイッチがはいり、症状の悪化が自覚される。それをきっかけにしてさら に嫌悪的思考が発展していく。苦痛は増強する。 うつ病、不安障害、依存症などで「死にたい」という思いもこういう悪循環の一部で あるから、これを治さない限り、うつ病等の改善、希死念慮、自殺念慮の消失は難し い。

マインドフルネス心理療法の新しい治療手法

 こういう心理現象は、絶対現在においてすばやく生じる。過去と の自動参照をコントロールするスキルを向上すれば、苦痛が少なくなることが推測さ れる。そこで、マインドフルネス心理療法には、過去の参照を少なくするための技法 が用いられる。
  • 現在しかないとの信念を強く持つ。現在しかなく過去は実在しないならば 過去を嫌悪、批判することをしない
  • 全般的に自己を失う思考に移らず絶対現在の事象を十分に観察する
  • 不快事象が起きても逃避せず無評価で観察し事実を知り受容し、建設的未来を作 るための行動を選択
  • 過去を思わず、現在を全力で生きる
  • 現在から現在へと絶対現在における現象は生命の躍動であり個別でありみな新し いと自覚する
 これらは、6つの「目標技法」の中に織り込まれる。そして、日常生活のすべての 行動をトレーニングの時間とする。形式的には、呼吸法、日常生活行動、運動の中に 組み込まれる。
    (注)
  • (1)「善の研究」岩波文庫、21頁。


(続)
Posted by MF総研/大田 at 17:18 | 私たちの心理療法 | この記事のURL