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思惟は見るということを失った行為的直観 [2009年11月11日(Wed)]

思惟は見るということを失った行為的直観

=マインドフルネス心理療法と西田哲学

 マインドフルネス心理療法の救われる構造を西田幾多郎の言葉で簡単に見ている。 西田幾多郎は<自己>を哲学的に記述した。実践して自覚しないと働きださないが、 マインドフルネス心理療法と似たように、自己について記述している。西田哲学は 論理的に記述したものであり、マインドフルネス心理療法はその記述された自己を実践するものであるということもできよう。

思惟は見るということを失った行為的直観

 マインドフルネス心理療法は、言葉や思考(思惟)からの解放も治療技法の重要な 一つである。いたずらに思考に移ると、目前のものが見えなくなる。思考に移るので 、仕事や対人関係の最中に自己を失い、目前の仕事や生活ができなくなる。
 論文『論理と生命』に次の語がある。見る、聞くという行為的直観から、思考に移る。思惟は創造的行為でない。しかし、対象的思惟とは異なる。
     「弁証法的一般者の世界において自己自身を限定する個物として我々の 身体的自己は、物を道具としてもつのみならず、自己の身体をも道具としてもち、形 成するとともに直観するのである。思惟ということは自己の身体を離れることではな い、自己の身体に徹することである。物を道具としてもち、逆に物が自己の身体とな るという方向において、自己が自己を失うという所に、行為的直観は思惟となるので ある。思惟とは見るということを失った行為的直観である。自己が自己を失う という所に、「見る」ということは、唯、映すと考えられる。それが意識である。意 識とは形成の意義を失った直観である、無創造的な行為的直観である。そこには、唯 、物の影が映されるまでである。それは既に行為的直観の契機として、我々が道具を 以て物を作るという所に含まれていなければならぬ。」(1)
 行為する時には、見ることを足場にして物を作る行為をする。その見る時、すでにに思惟が含まれている。、

 論文『絶対矛盾的自己同一』に次の語がある。深い根底で起きていることを語っている。絶対現在において、時が消される局面である。 過去と未来とが自己矛盾的に現在に合一する絶対現在においては、世界の創造であって、自己が否定される。 それを知らず、われわれは自由に行為しているつもりになっている。自己の行為の時に、絶対者、世界から離れる。
     「絶対矛盾的自己同一の自己形成において、時が消されると考えられる意識面にお いては、世界は何処までも動揺的である。そこには行為的直観が失われるとすら考え られる。我々は自由に考え自由に行い得ると考えられる。我々は絶対矛盾的自己同一 として我々に臨むものから離れる。抽象的自由の世界があるのである。しかしそれは 世界が亡び行く方向であり、我々が我々自身を失い行く方向たるに過ぎない。 我々の意識というのは絶対矛盾的自己同一の世界の自己形成の契機として現われるの であり、意識的に過去と未来とが自己矛盾的に現在に合一するということは、逆に世 界が何処までも矛盾的自己同一的に自己自身を形成するということでなければならな い。我々は意識的に自由であればあるほど、逆に行為的直観的に絶対矛盾的自己同一 に対するのである。絶対矛盾的自己同一的現在として自己自身を形成する世界の個物 として、我々は何処までも自己自身の生死を問うものに対するのである。そこに我々 の意識作用は何処までも当為的でなければならないゆえんのものがあるのである。」 (2)

マインドフルネス心理療法へ

 抽象的思考している時には、見えていない、自分が何をしているかわからない状況におちい っている。ミスをしたり、うつを引き起こす思考が渦巻いてることさえわからない、 自己を失った状況にある。これは、呼吸法を実行してみることで実感される。 目をあけて、よく見ながら呼吸法を行う。やがて、見ていない、呼吸もわからない状 況にあったことに気づく。気づいた時は、もう遅い。考えていた(思惟)のである。 思考する時には、見ていない、聞いていない。 こうして、すぐに、思考に陥る人は、うつ病になりやすく、仕事のミスを起こしやす い。思考に落ちている真っ最中には、思考していることさえ気づいていない、見えて いない、聞こえていない。その思考の渦巻きによって感情が起きて、ストレスホルモ ンが分泌され、交感神経は興奮する。こうして、精神症状、身体症状が現われる。そ れを意識による対象として、嫌悪して、また、思考に陥っていく。
 こうした現象は、絶対現在の場において、徹底的となる。 絶対現在は、過去未来が現在にある瞬間であり、世界があらわになる瞬間であり、自己が否定される。自分の価値的な行為的直観さえも否定される。

 マインドフルネス心理療法は、現在における見かた、思考の抑制のスキルを向上させ るトレーニングを繰り返す。 直観をやく観察する、みだりに思考に移らない。 そのトレーニングは、新しい行動である、個人の価値(願い、幸福)実現に向けての当為である。 それが環境や相手(他者)に働き、環境や相手を変えて、その相手の現在の行為 的直観をもたらし、相手の行動となり、こちらに還ってきて、行為的直観となって現 われる。また、自己の思考を動かさず「見る」という行為的直観にとどまり、何をなすか主体的に判断すれば従来にはとらなかった当為を起こす。それはまた、個人 の身体内部に従来とは異なる連鎖反応を引き起こして、治癒の方向に向かう。
    (注)
  • (1) 西田幾多郎哲学論集2、岩波文庫、234頁、全集巻8-329頁
  • (2) 西田幾多郎哲学論集3、岩波文庫、54頁、全集巻9-193頁


(続)
Posted by MF総研/大田 at 18:18 | 私たちの心理療法 | この記事のURL