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宇宙を見、聴き、感じて(2)=直接経験 [2009年10月30日(Fri)]

宇宙を見、聴き、感じて(2)=直接経験

 明川哲也さん(創作家)は、次のように言っています。
     「宇宙は、人間に何を課したのか。それは宇宙を見ること、聴くこと、感じるこ とだ とボクは考えています。なぜなら宇宙を意識できる命がまったくないのなら、その 存在 は明らかにならず、消滅してしまうからです。宇宙はまさに存亡をかけて、不可分のも のとして我々を生んだのでしょう。これは以前にも紹介した人間原理と呼ばれる考えで すが、はるか昔から禅を貫く感性のひとつでもありました。」

  • 宇宙を見、聴き、感じ、考え抜いて
 これは、マインドフルネス心理療法に通じるものがありますので、もう少し見ておき ます。哲学者、西田幾多郎の「善の研究」に次の語があります。
     「経験するというのは事実そのままに知るの意である。全く自己の細工を棄てて、事 実に従うて知るのである。純粋というのは、普通に経験といっているものもその実は何 等かの思想を交えているから、毫も思慮分別を加えない、真に経験そのままの状態をい うのである。例えば、色を見、音を聞く刹那、未だこれが外物の作用であるとか、我が これを感じているとかいうような考えのないのみならず、この色、この音は何であると いう判断すら加わらない前をいうのである。それで純粋経験は直接経験と同一である。 自己の意識状態を直下に経験した時、未だ主もなく客もない、知識とその対象とが全く 合一している。これが経験の最醇なるものである。」(「善の研究」第一編第一章)
 マインドフルネス心理療法は、これに近い状態にいるように助言する。直接経験注意 集中法である。感覚や感情、身体症状、気分などを「無評価で観察」する訓練を毎日実 行してもらう。純粋経験においては、まだ人は悩んでいない。うつ病や不安障害は自己 の細工を働かせることから起きるのである。直接経験の観察にとどまり「言葉」にしな い。言葉は事実そのままではない。直接経験と言葉は別ものである。評価解釈はさらに 遠く離れている。クライアント(患者)には、直接経験に注意を集中するトレーニングを 重ねて、そこにとどまる時、苦悩がないことを実感する。
 認知療法は、言葉によって苦悩の少ない思想をみつけるように助言するが、マインド フルネス心理療法では、本人は言葉を駆使することを控えるように助言する。ただし、 心理療法者(治療者、カウンセラー)は、クライアントに向かっては、多くの言葉で説 明する。「黙って坐れ」というような禅の指導法とは異なる。
 マインドフルネス心理療法は認知療法のような言葉による別の思想の探索を用いないので、かなり異なる心理療法となる。クライアントによって、カウンセラーによって、向き不向きがあるだろう。認知行動療法で効果がなかった人がマインドフルネス心理療法で改善することがあるのは、両者がかなり異なるからである。
 明川さんが「宇宙は、人間に何を課したのか。それは宇宙を見ること、聴くこと 、感じることだ」というのは、上記に通じることのようだ。「見ること、聴くこと 、感じること」は、宇宙の意思による働きだろう。「あれがいい、これはきらいだ、不 満だ」というのは、人間の小細工だろう。宇宙の意思の働きの瞬間、それが直接経験だ ろう。宇宙の意思と自己の意思との違いをよく知るということが自己を知るということ だろう。そういう自己洞察が深まっていくと、うつ病や不安障害は治癒する。たとえ宇 宙の意思による不快事象があっても自己の細工を加えなければ生きていける(受容)こ とに気づくのだろう。宇宙の意思にゆだねると、うつ病や不安障害などの心理的ストレスによる症状は軽快または消失する。だが、もちろん、心理的ストレスによらない病理(がん、身体傷害など)は、マインドフルネス心理療法で治るわけではないが、病気(宇宙の意思)を悩む(ヒトの細工)ことによるうつ病は克服できる。
Posted by MF総研/大田 at 20:46 | 私たちの心理療法 | この記事のURL