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すべての自治体が平凡な家庭のうつ病対策を! [2009年10月14日(Wed)]
すべての自治体が平凡な家庭のうつ病対策を!

うつ病により家族による嘱託殺人

 うつ病は自殺をひきおこしますが、家族に「死にたい、殺して」と頼まれて 愛する家族を死に至らしめて、嘱託殺人、殺人罪に問われる悲劇も起きています。  うつ病は自殺のみならず家族を別な形で苦しめます。
 妻は2004年、筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症だった長男(当時40歳)を自宅で介 護していた際、長男に懇願されて人工呼吸器の電源を切って窒息死させ、自らも自殺を図 った。嘱託殺人罪で懲役3年、執行猶予5年の有罪判決を受けた。
 妻は事件後からうつ病になり、『死にたい』と言うのをなだめてきたが、あまりにも言 い続けるので夫が殺した。
 こういう強いストレスによって起こるうつ病は既存の組織のネットワークでは救済できないでしょう。地域に、薬物療法で治りにくいうつ病の方の支援サービスがどの地域にも欠けています。既存の組織で提供していないサービスですから、ネットワーク構築では不足です。新しいサービスを提供する仕組みが必要です。

薬物療法だけでは治りにくいうつ病が増えた

 NHKが報道したように、治りにくいうつ病が増えています。パニック障害も薬物療法だけでは治りにくく長引いて苦しんでいます。  経済問題や就労問題だけが自殺の原因ではありません。働いている人もうつ病になり、治らず退職します。60歳以上の自殺が大変多いのですが、経済や就労問題が第一原因とはいえません。経済不況になる前から2万人の自殺がありました。種々の原因からうつ病になり治らないのが問題です。薬物療法を受けても完治しない、再発する。そういう視点からのうつ病対策が遅れています。
 がん、介護や働く人のうつ病はどこの家庭でも起こる可能性があります。 難病や介護にまつわる自殺、心中、嘱託殺人などが続発しています。難病、発達障害、 介護、がん、働き盛りの人などの家族には、うつ病がついてまわります。子どもにもうつ病があります。子どもも女性も、うつ病や不安障害(パニック障害、対人恐怖症など)になります。子どもには薬物療法は使いにくく長引いてしまいます。どこの地域にも 多いのに、自殺対策に現われてきません。多重債務、自死遺族、救急救命センターでの自殺未遂の方については対策がとられは じめました。 難病、発達障害、介護、がん、働く人、子ども、女性などの家族のうつ病治療支援の対策はとられません 。ストレスが持続する場合のうつ病には、薬物療法だけでは不充分です。 うつ病は、どの家族、 どこの地域にも多いのです。
 以前はメランコリー型うつ病が多かったのに、最近は非定型うつ病、双極性障害がふえています。日本人の心が変わったのです。非定型うつ病や双極性障害は、効果がある薬をためすうちに長びいて患者さんの苦しみが長くなりがちです。  抗うつ薬による治療は「非常に重症」の患者に有効です。軽くなってからとか、最初から「非常に重症」でないうつ病患者(特に非定型うつ病やパニック障害、対人恐怖症に併存するうつ病)には、抗うつ薬の効果があまりありません。だから、いつまでも薬物療法を続けていくのは、本人にとっても自治体にとっても幸福ではないでしょう。認知行動療法を受けられる専門組織、ボランティア団体、支援組織が必要です。

すべての自治体が平凡な家庭のうつ病対策を!

 10分診療の医師による薬物療法だけではなく、イギリスのように他の人材によって、経過や症状、行動をよく聴いてみると、非定型うつ病かメランコリー型うつ病か双極性障害かわかるかもしれません。そうすれば、医師による適切な薬物療法への誘導も可能かもしれません。
 細かく分ければ多くなりませんが、どこの地域にも多いのは薬物療法だけでは治りにくいうつ病の家族」というくくりで、 平凡な人々の自殺防止の対策です。特殊領域だけ対策をすすめず、どこの家庭 にもあるうつ病、薬だけでは治らない人の支援の対策も開始すべきです。そうしますと、 多重債務によるうつ病の方、自死遺族の方、自殺未遂の方のうつ病の支援にも重なります。うつ病の症状がひどくて、自死遺族のつどいにも行けない人が多いはずです。多重債務でも重いうつ病となり、法律的な問題が解決しても、うつ病が治らない人がいるでしょう。
 保健所や精神保健福祉センターに、このようなスキルを持つ人を置くのも一つの方法です。今は、「うつ病は医者に」だけですが、「医者にかかっても長引くうつ病を保健所や精神保健福祉センター(サポートセンター)などで支援」するプログラムを加える必要があります。
 しかし、薬物療法も重要です。心理療法が向く人ばかりではありませんし、症状や背景のアセスメントや心理療法は時間と手間がかかります。薬物療法の否定ではありません。両方を提供する方法があります。薬物療法だけでは治りにくい人をサポートする仕組みです。自治体のサポートセンターと医師と連絡網を作るのです。自治体、医師、サポートセンター、市民が信頼できる条件を決めて、覚書を交わして支援する仕組みを作るのです。

連携にあたり相互不信の壁

 今は問題があります。医師もNPOも、それぞれ誠実に支援していますが、誠実だけで重いうつ病が治るわけではありません。NPOも医師も多くのカウンセラーも誠実ですが、うつ病、うつ病の治療法について情報をすべて知っているわけではないでしょう。 NHKが指摘した、うつ病の治りにくさ、認知行動療法の効果をどこまでご存知でしょうか。 自分の考え、主義を優先して、患者さんの(早く治る)利益を優先できない心理、他者とは連携しにくい心理が働いてしまいます。誠実ですが自分の組織、派閥が第一だと考えてしまうのが、人の心です。 信頼できる組織が、うつ病の治療のスキルを持っているわけではないのです。スキルのない公的機関や一応信頼されている民間組織、NPOがかかわっていて長引かせると、自殺されるおそれがあります。 医者側からは、カウンセラーに不信があります。  こうした、他の団体の不信はよくわかります。私どもも協働など提案もしましたが、おそらく信頼してもらえなかった。また、逆もあります。私どものホームページやこのブログにリンクしてくれとか、カウンセリングの本の紹介をしてほしいというお願いがあります。しかし、同様の不安があり、最近ではお断りしています。うつ病については効果が確認されているカウンセリングを受けないと治りにくいという報告が多いです。効果のある心理療法を提供しておられるのか、自分が実情を知らない団体に、ホームページやブログの読者を誘導していいのだろうかという不安が出てきています。他の団体が私どものホームページをリンクしていただけない、協働していただけないのも同様であろうと理解して、怒りもしません。悲しい社会です。 他の団体の相互不信が広がっています。官庁もすべてのNPOを信じてはいないでしょう。当然です。官庁や病院にだって、いろいろなことがあります。 うつ病や自殺対策の連携の難しさがあります。
 電話相談や種々の相談、カウンセリングが重いうつ病以外の領域で多大な貢献をしていることは承知しています。しかし、問題は、重いうつ病です。自殺のリスクのある重いうつ病は別です。薬で治らないうつ病も別です。そういう重いうつ病は10回ー20回の面接指導がないと治りません。だから、窓口の誠実な対応だけ、電話相談のみの対策では、うつ病を治すことは無理です(しかし、その組織の中に治すスキルのある人がいてその人に回すのは大変いいシステムです)。傾聴型のカウンセリング<だけ>では治る保障がありません。傾聴の後、認知行動療法を提供すればいいのです。認知行動療法は効果が確認されています。 NHKの本で、300回もの傾聴型のカウンセリングがありましたが、長すぎるようです。あまりに時間やコストをかけすぎです。その期間に何かがあって症状が悪化したら危険です。
 薬で治りにくいうつ病を治し自殺を減少させるためには新しいサービスが必要です。難しい環境の中で、うつ病が長引き自殺の危険のある市民のために、各種の団体の利害を超えて調整できるのは公的機関です。自治体です。政治です。イギリスでは、国家の費用で、認知行動療法のスキルを持つ人の育成を始めました。
 薬物療法絶対主義ではなく、自派の心理療法絶対主義にも偏らず、本当に市民のうつ病が治るためのスキルを基礎にした支援プログラムを、自治体が主導する委員会で構成される場で、議論を尽くして、遵守する条件を決め覚書を交わして種々の対策をとっていくのがいいのでしょう。スキルがあり、条件を守る組織がどこにあるかが市民にわかる。 そういう条件ならば、市の種々の広報を通じて、支援プログラムを市民に周知できるでしょう。 うつ病、自殺対策は、スキルのない人が長期間かかわると、長期の治らない状態に善意で誘導してしまったり、自殺においこんでしまったりしますので、従来にない連携方式を考えるのが、どこの家庭にも起こるうつ病には、市民のためを考えればいいのだと思います。

 すべての自治体で、「薬物療法だけでうつ病が治らない場合の治療支援プログラム」の対策をとるように要求する運動が必要ではありませんか。厳しい財政事情ですから、予算をまわす領域は多くて、このようなうつ病対策、自殺対策には動きが鈍いです。市民が強く要求しないと自治体は動くことができません。
Posted by MF総研/大田 at 06:58 | 自殺防止対策 | この記事のURL