心理療法・2種を使い分ける(5) [2009年09月09日(Wed)]
◆配偶者、子ども、子どもの配偶者、孫などを
薬物依存症、心の病気、犯罪者にしないために
知っておくほうがいいこと、自分を変える方法のこと。
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心理療法・2種を使い分ける(5)
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病気には患者ならば傾聴型ではなく目標が明確な認知行動療法を選ぶだろう
過敏性腸症候群(IBS)の研究をしている福土審氏は、IBSも心理的ストレスで悪化す
るので心理療法が有効であるが、それは認知行動療法であるという。そして、次のよう
に過敏性腸症候群の治療ならば、精神分析や傾聴型ではなく、認知行動療法を選択する
だろうという指摘を紹介した。⇒
(4)患者ならば
目標が明確な心理療法を選ぶだろう
このことは、過敏性腸症候群のほかに、うつ病、不安障害、依存症、パーソナリティ
障害などにも言える。Aが精神分析や傾聴型の考え方、Bが認知行動療法である。その
特徴を<(2)精
神分析療法(傾聴型)と認知行動療法(助言型)の比較>で見たが、福土審氏の説
明も引用する。
「Aという治療法は有名な学者が考えた治療法で、効く人には非常に効く。しかし、
あなたに効くかどうかは、やってみないとわからない。ほかの人に効くかどうかは問題
ではなく、あなたに効くかどうかだけが問題である。たとえ、病気そのものに効かなか
ったとしても、この治療法を受けたことで、あなたの人生が豊かになれば、それで良い
のではないか。なお、Aは時間もかかる費用も人によって違う。」
「Bという治療法は、あなたと同じ病名の患者100人に行い、85人が改善した。
重大な副作用はなかった。一方、あなたと同じ病名の患者100人に治療Bを行わずに
いたところ改善したのは5人しかいなかった。Bの治療が偶然に勝った確率は0.01%未満
であって、統計学的にもBの治療が良いことが証明されている。標準的なBの治療の時
間はこの程度、かかる費用もこの程度である。」
あなたはどちらの治療法を選ぶだろうか。おわかりだろうが、治療法Aは精神分析の
考え方、治療法Bは行動療法の考え方である。」(『内臓感覚』NHKブックス、167頁)
患者ならどちらを選ぶか。Bだろう。残念ながら、Bでうつ病、不安障害などを治療
できるカウンセラーは日本では少ない。Aが多い。電話相談でも「治療」までは
することを想定しないから、Aが多い。だから、日本では、相談、カウンセリングを受
けても治らない人が多いのだ。
だから、うつ病や不安障害、依存症(アルコール、違法薬物、あるいは合法薬物など
)の重い病気を治して自殺を防止するには、どうしても認知行動療法のできるカウンセ
ラーが多数育成されなければならないだろう。薬物療法だけでは、患者の厳しいストレスによ
る心理、行動を変えることは困難である。
ところで、費用であるが、カウンセリングは1時間5千円から1万円が相場である。
うつ病の認知行動療法は、6カ月、8〜10回でかなり改善すると期限目標を持つだろ
う。補助がなければ、費用は、4万円から10万円かかる。完治までは、時間と費用は
、この2倍くらいかかるだろう(もし、自己負担が3割ですむ保険や助成があれば、半
年で2〜3万円ですむ)。こういう心理療法を受けられる制度を国はすすめなかった。
これでも、治る可能性があるからいい。ところが、他のカウンセリングでは、期限
が不明であるし、治す仮説、理論が弱い。費用と時間をいくらかけたら治るかわからな
い。
重い病理でない問題の相談、カウンセリングは傾聴型のカウンセリン
グのほうがいい。傾聴型のカウンセリング、相談も重要である。だが、
傾聴で、うつ病だとわかった、死にたいという気持をひきだせた時、
医者にいきなさいだけでは不充分だというのだ。薬物療法だけではすぐには回復しないとか、効かないという人、再発する人も多い。だから、自殺予防、うつ病の改善には、認知行動療法の普及が必要である。それができる人、組織をたくさん作っていく必要がある。
認知行動療法の効果は、自殺に至る可能性の高い、うつ病、
不安障害、依存症などについていう。自殺予防対策のうち、これらを治療すること、薬
物療法でも治らない人が増えているため、自殺の減少を効果あるものにするためという
目標を持つ場合には、認知行動療法が有効である。
ところで、行動療法だけでは治療効率は高くはなく、認知療法を付加した認知行動療
法がいいという。医者が薬を処方して、突然、エクスポージャー法を助言してもうまくできない。エクスポージャー法は行動療法の一種である。音楽療法、運動療法だけでも、重いうつ病は治りにくいだろう。認知的技法が付加された認知行動療法がうつ病には効果が高いだろう。
精神分析療法(傾聴型)と認知行動療法(積極的課題提供型)
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Posted by
MF総研/大田
at 21:24
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新しい心理療法
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