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自殺予防のためにうつ病の治療拠点を作る(2) [2009年06月01日(Mon)]

自殺予防のためにうつ病の治療拠点を作る(2)

 自殺防止には、うつ病、不安障害などを積極的なアドバイスで治療する心理療法( セラピー)を提供できる人を育成することが急務です。 種々の領域の悩みごとの相談(多重債務、加重労働、出産、育児、発達障害の悩み、 就労支援、生活保護支援、いじめ問題、進学、キャリア、経営、教育、スポーツ、介護支援、自死遺族支援、がんほか難 病の悩み支援、自殺予防*、など、多種多様な領域)を受けて医療以外の助言をしたり、心の悩みで も、患者さんの訴えをよく傾聴して積極的なアドバイスをしない「カウンセリング」も大切です。こういう多 くの領域の専門的なアドバイス、情報提供によって、悩みが解消されて、うつ病にな ることなく、なりかけていても、軽い段階で回復すれば、自殺しないですみます。こうしたカウンセリングで救済される人も多いのだ から、「カウンセリング」の重要なことはいうまでもないことです。
    (*)自殺予防カウンセリング。自殺予防についての幅広い知識、情報を駆使して、自殺予防の助言のスキルもカウンセリングになる。しかし、そのカウンセリングスキルと、うつ病を治す心理療法のスキルは別ものである。たとえば参考書がある。「自殺予防カウンセリング」(駿河台出版社)。これを読み、実際に相談活動にとりくめば、自殺予防カウンセリングになる。 だが、これにも、認知療法の概観があるが、習得するには、別に学習、臨床体験が必要になる。自殺防止には、一次、二次、三次があって、これまた、範囲が広く、よい「カウンセリング」ができるようになるには、相当の学習と経験が必要になる。うつ病の治療、そのものと両方できるのか不明である。ここも、分業、連携となるのではないか。
 しかし、自殺防止には、カウンセリングスキルだけでは不十分なのです。上記のようなカウンセリングを行う人は、うつ病の人をみつけたら、精神科医を受診するように助言するでしょう。しかし、薬物療法で治る人はいいのですが、治らない人もいます。精神科医はほかの治療をほとんど提供しません。欧米では、うつ病や不安障害の心理療法が盛んになっているのに、日本の医者の多くが心理療法を提供しません。 医者は、うつ病、不安障害 を治す心理療法(セラピー)を医学部での学習期間中にほとんど勉強しないといわれ ます。医者が行う心理療法は診療報酬がきわめて低いので心理療法を勉強しても病院の経営上は使うことができないから医学部では講座を持たないことになるのはやむをえないことです。
 一方、臨床心理士を育成する心理学部でも、医療モデルである「心理療法」を深く習得させるよりも 幅広い領域の心理学、幅広い領域でカウンセリングできるスキルを教えるでしょう。臨床心 理士が幅広い産業領域で活躍することが期待されているから当然です。これはこれで いいのですが、こと、自殺防止になると問題が生じています。うつ病になった人の自殺防止の心理介入は、狭く深いテーマです。
 自殺する人の大部分はうつ病になっています。他の悩みでもうつ病になっています 。相談においでになった時、うつ病らしいとわかっても、うつ病の治療のできる「心 理療法」を習得していないカウンセラーは、治すためのアドバイスができないので、 当らない別の助言をするか、精神科医の受診をすすめるでしょう。つまり、日本の「カウンセラー」の多く は、種々の産業領域の悩み解決か、傾聴型のカウンセリングのスキルか、うつ病の病理(医療 モデル)を第1義には扱わない心理学(たとえば、行動分析学)のスキルを持つ人が 多いでしょう。うつ病、不安障害を治す「心理療法」は多くなく、そのスキルを持つ人は多くありません。そういう 状況では、薬物療法がだめなら、カウンセラーにというわけにもいきません。カウンセ ラーも医療モデルの「心理療法」に熟練している人が多くないのが実情です。
    (注)他のカウンセリング手法や心理学を否定しているのではありません。承知のようにそれぞれの領域や問題、障害の改善で顕著な貢献をしています。しかし、心臓病のすぐれた治療法が肝臓病の治療には貢献できないように、どの心理学でも、うつ病の治療にすぐれた効果があるわけではないということを言っています。アメリカでは、うつ病には従来の認知療法でさえも反応しにくい難治性のうつ病があるとしてマインドフルネス心理療法が開発されたくらいです。また、他の心理学の手法は、治療の現場で部分的に活用されています。長期間の治療の動機づけに、傾聴も必要です。
 うつ病、不安障害などの「病気」を治すのは、医者の役目と思われてきたようです 。しかし、うつ病、不安障害が医者の薬物療法で治ればいいが、治らない人、再発す る人も多いです。そこから、自殺が起きる。自殺した人の事後調査でも、薬物療法の治療を受けていた人も自殺しています。薬物療法以外の治療法も必要です。 薬物療法の限界も、見えてきました。NHKのテレビでも、うつ病が薬物療法で治らな い人もいることを報道しました。薬物療法も効果があるが、限界もあります。

うつ病、不安障害の心理療法者の育成

 自殺を防止するために、うつ病を治す拠点が必要ですが、そのスキルを持つ心理 関係者は多くありません。うつ病、不安障害を治すのに、有効である「心理療法」は、認知 行動療法、対人関係療法、マインドフルネス心理療法などです。 他にも「○○療法」「○○セラピー」というのがありますが、うつ病、不安障害に効 果があるのかどうか臨床試験ではっきりと確認されていません。
 うつ病、不安障害に効果のある「心理療法」が得意な「セラピスト」を育成する必 要があります。狭い「うつ病」「不安障害」の治療の「深い」知識と卓越した治療ス キルを持つのが「セラピスト」としましょう。狭いが深いことが重要です。自殺は長期間ひきこもりを防止するのだから重要な役割です。自殺があるので、熟練が大切です。 熟練するのに、 時間が限られるか ら、広く、深く、上手、ということを1人の人間に求めるのは無理です。専門家が必要です。
 うつ病になるのは、種々の悩みからで、うつ病の「セラピスト」は、広い領域の知識が必要 になるカウンセリングのスキルはないでしょう。それは、それぞれのカウンセリングにまかせればいい。自殺防止は、セラピストだけでも不 十分。種々の領域のカウンセラー、精神科医、心理療法のセラピストが連携して活動 していかないと、自殺防止には限界があると思います。
 現状では、医療モデルの心理療法の得意な人が少ないのだから、カウンセリングを 公的保険の対象にということは実現しにくいでしょう。公的健康保険は病気を治す医 療の補助でしょう。カウンセラー業界が医療モデルの心理療法者を育成して、健康保 険の対象にするように国に働きかけていくのも自殺防止対策の方向だと思います。 現在の医療モデルでない「カウンセリング」を含めて<すべて>健康保険の対象に、 というのは無理です。うつ病、不安障害に効果のある「心理療法」を確認して、そのスキルを持つ人を認定して、その人の治療は保険の対象とする。こういう対策です。イギリスでは、国の予算で多数の認知行動療法者を育成するという。この方向です。  独立の心理士でいいのか、精神科医の監督でのみ認めるのかという問題があります。心理療法者が独自の職業とはなりにくい環境です。医者でない人で、うつ病などの治療をする心理療法者が育ちにくい日本です。
 心理療法による予防法もあるのに、うつ病、不安障害は薬物療法のみが盛んであるので、学校教育でも社会教育でも、うつ病、不安障害の予防法ということが啓蒙されません。死亡率の高い病気であるというのに。
Posted by MF総研/大田 at 11:13 | 自殺防止対策 | この記事のURL