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(10)なぜ治らない人がいるのか [2008年11月27日(木)]
連載<働き盛りのうつ病予防・概要>

(10)なぜ治らない人がいるのか

 現在の薬物療法では治らない(薬の効果が充分には現われない)人や、いったん軽くなっても再発す る人が多いのはなぜだろうか。
 まず、治らない人がいるわけを考えてみます。次のわけが推測されます。
  • うつ病は広い脳の領域に変調が起きていることが推測されている。セロトニン神経、ドーパミン神 経、ノルアドレナリン神経、前頭前野、海馬、帯状回、体内時計、視床下部、HPA系(視床下部ー下 垂体ー副腎皮質)、自律神経系、扁桃体、甲状腺、女性ホルモンなどである。 うつ病はこんなに広い脳神経の領域に変調が
     広い領域に変調が起きているが、薬物はセロトニン神経に作用するのが最も中核となっている。あと 、ノルアドレナリン神経、ドーパミン神経、睡眠障害に関する薬がある程度である。これでは、上記の ように広い領域を回復させることが難しいのだろう。
  • セロトニン神経が最も上流の原因部位ならばセロトニン神経が回復すれば、他の問題領域も変調が 停止するだろう。しかし、セロトニン神経は上流ではない。心理的ストレスの場合、最も上流は心理的 な苦悩を起こす部位、すなわち、思考する部位であろう。過労や睡眠不足によるうつ病ならば大脳皮質 の緊張であろう。いずれにしても前頭前野であろう。セロトニン神経に作用する薬が前頭前野の変調を 回復させる仕組みがよく解明されていない。セロトニンの増加→脳由来神経栄養因子(BDNF)の増加→前頭前野 や海馬の神経細胞の修復が推測されている。このルートでは回復しない人もいる。うつ病とひとくくりで言うが、実際は別の原因によるうつがあるのかもしれない。別々の病気であるかもしれないとも言われている。
  • 非定型うつ病はセロトニン神経やドーパミン神経は弱まっていない(これと定型うつ病は別の病気かもしれない)。だから、現在の抗うつ薬では きかないうつ病(非定型うつ病もその一つ)も多い。
  • 最近の研究によると、単極のうつ病は、次の発症ルートが推測されている。
      ストレス→HPA系(視床下部ー下垂体ー副腎皮質)の亢進(自律神経系の亢進の別ルートもある)→ ストレスホルモンの過剰分泌→前頭前野や海馬の神経細胞が傷つく→前頭前野や海馬の機能障害が起きる
      (もう一つの症状が現われるルート
      ストレス→自律神経系の亢進→種々の身体症状・精神症状)
    HPA、ストレスホルモンのルートで、精神症状のうち意欲、記憶、思考などの障害は説明がつく。これが本当であれば、セロトニン神経に作 用する薬は少しずれている。このルートにセロトニン神経がない。
  • 前記のルートにない症状で重要なのは「抑うつ気分」であるが、上記のルートでもなく、セロトニ ン神経と抑うつ症状との関係も明らかではない。うつ病には、抑うつ症状と他の精神症状(意欲、記憶、判断など)、身体症状(睡眠、食欲、性欲にかかわる)が顕著であるが、これらの症状のセロトニンが関与するのは一部ではないのか。
  • 次の発症ルートがあたっている(まだ確定していない)として考察しよう。
      ストレス→HPA系(視床下部ー下垂体ー副腎皮質)の亢進(自律神経系の亢進の別ルートもある)→ ストレスホルモンの過剰分泌→前頭前野や海馬の神経細胞が傷つく→前頭前野や海馬の機能障害が起き る
    抗うつ薬はセロトニン増加→脳由来神経栄養因子(BDNF)の増加→前頭前野や海馬の機能障害の回復を起 こすように作用するとしても、上流のストレスが緩和されない状況(たとえば、休職できずに働きながら薬を服用 )では、ストレス→HPA系(視床下部ー下垂体ー副腎皮質)の亢進(自律神経系の亢進の別ルートも ある)→ストレスホルモンの過剰分泌は止まらないだろう。ストレスを受け続けていては治りにくいことが推測される。つまり、ウイルスによる病気っがある場合、症状としての発熱、痛みの症状緩和の治療をして、ウイルスを殺さないでいるのと似た治療法になるのかもしれない。再発防止は心理的ストレスによるうつ病ならば最も上流の心理的ストレスそのものの軽減(これは社会的対策、組織のメンタルケア対策)と心理的柔軟性の習得(個人のメンタルケア)がたられるべきであろう。
 上記のようなわけで治りにくいうつ病があるのだろう。
 しかし、治る人が6,7割はいるのだから、うつ病になったら、薬物療法を受けることが治りやすい。治らない場合に、別の治療を受ければいい。
 新しい薬の研究開発もすすめられている。心 理療法は薬物療法の弱点をおぎなう形で提供されている。最も上流のストレスを変化させる(後述)。

<続> (11)
連載<働き盛りのうつ病予防・概要>
 =マインドフルネス心理療法の視点より
 =働く人のうつ病、自殺を防止するために
    (「働き盛りのうつ病予防・メンタルヘルス」講演の詳細なテキストがありますが、その要点を抄録し ます。講演はご依頼により行います。)

Posted by 埼メンタル協会/大田 at 22:49 | うつ病 | この記事のURL