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なぜ自殺においこまれるのか [2008年08月02日(土)]

なぜ自殺においこまれるのか

 NPO法人「ライフリンク」(清水康之代表)がホームページに7月4日に公開した「自殺実態白 書」によれば、10の要因が多かった。 自殺の理由は一つではなく、平均で四つの「危機要因」を抱えていることが分かったという。次の記 事でふれました。

10の要因

 危機要因は(1)うつ病(2)家族の不和(3)負債(4)身体疾患(5)生活苦(6)職場の人 間関係(7)職場環境の変化(8)失業(9)事業不振(10)過労−−の順に多く、上位10項目 で全体の約7割を占める。それぞれの要因は互いにつながっており、
    会社員なら「配置転換→過労や職場の人間関係悪化→うつ病」
    経営者なら「事業不振→生活苦→多重債務→うつ病」
といった経路が典型的だった。

 4つの危機要因の連鎖がある。
 社会構造的な視点からの連鎖分析では、図のように会社員の場合と自営業の場合それぞれ1から4 の連鎖があるという。だが、詳細にみると、うつ病は最後に突然現われるのではない。うつ病が徐々 に進行していくありさまを示したのが図である。
 自殺予防対策を本人もとるべきだ。社会構造的な対策(勤務、貧困、債務、教育など)はと るべ きだ。だが、うつ病のメンタルな視点からの予防、治療の対策も極めて重要だ。

家族の緊張・不和

 2番目に家族の不和がある。これは、極めて重要だ。本人が改善すべき要因である。
 家族の緊張・不和は「うつ病」には相互に影響する。

家族の緊張・不和からうつ病へ

 家族の緊張・不和があると、慢性ストレスであり、すでにHPA系(視床下部ー下垂体ー副腎皮質 )の亢進によって、ストレスホルモンにさらされて、うつ病の前段階が準備されている。そういう状 態の人が別の危機要因にさらされた時、家族の緊張・不和が持続している状態であるから、悩んでも 家族に相談できずに、1人で対処するから、急速にうつが悪化する。

うつ病から家族の緊張・不和へ

 逆に、家庭が不和であったわけではないのに、別の要因で、うつ病や不安障害などの心の病気にな ると、家族に緊張・不和が生じることがある。他の家族もストレスをかかえて一杯で生きていること が多くて、他の家族の危機の支えになれないことがある。ついきついことを言って、家族の緊張・不 和が生じる。また、心の病気になったのは家族のせいだと思いこんで不和になることもある。離婚になることもある。不和により自殺に追い込むこともある。心理療法で治ることもあるのに残念である。 家族を恨むとむつかしくなる。怒り、恨みがあると、自分を変えて治すという気にならないから、治 療(薬物療法、心理療法)を受けない。治療を受けないから、心の病気は悪化していく。 危機要因の2番目にあるのは、首肯できる。
 人生には危機がいくつもおとづれる。家族に緊張・不和があると、うつ病、自殺のリスクが高いこ とが確かめられたことになる。
 慢性ストレスが持続している人は急性ストレス(自殺の危機要因)にさらされた時にあぶない。心 の病気になったり、非行犯罪に入るおそれがある。慢性ストレス状態、家族の緊張・不和の段階で、 カウンセリングを受けて、解決しておけばいいのだ。家族の不和を解決するセラピー、カップルセラ ピー、対人関係療法のようなものがある。(マインドフルネス心理療法でも家族で参加すれば改善される)

一つでもうつ病に

 危機要因が3−4個重なると、特に悩むからうつ病が治りにくい。だがうつ病は一つの危機要因で もなる。ある出来事(一つの危機)でうつ状態が始まる。なぜ、うつ状態になるかというと、「思い どおりにならない」という心理状態を建設的な方法で克服できない状況になるからである。
     「つらい、つらい」「いやだ、いやだ」「どうしよう、どうしよう」「わからない、わからない」 「にくい、にくい」「もう、だめだ」「悲しい」「絶望だ」「治らない」
 こういう思い(嫌悪的思考)が持続すると、HPA系(視床下部ー下垂体ー副腎皮質)が亢進し て、ストレスホルモンが分泌され続ける。それによって前頭前野や海馬、視床下部、体内時計、大脳 辺縁系がそこなわれて、うつ病が進行するようだ。嫌悪的状況が解消したりつらい思考を止めるとうつ病にならない。嫌悪的 思考を止めるには、2つの戦略がある。
  • (1)社会的な支援を求める
     誰かに相談して、悩みの原因になっている要因をとりのぞくとか軽くする戦略がある。これは、メ ンタルな視点ではない。他者の支援、社会の支援を求めることだ。自分ひとりでは動けない人がいる ので自治体、職場の人、NPOなどの支援をもらって厳しいストレスを軽くして、心の病気が重くなっ ているのを改善する。こういう社会的な支援は、今後、国や自治体が対策を提案していくだろう。今 でも利用できる支援があるはずだから、家族が協力して支援を求めていく。1人では、悩み始めた人 の精神状態では支援を求めるというコミュニケーションさえもむつかしくなっている。家族が動いて いくのがいい。
  • (2)早期の段階でメンタルな方面のスキル習得
     自分のストレス対処の心得を習得する戦略がある。悩みがちな心を悩みにくい心に変える。そして 、嫌悪的思考を止める。同じ人であっても、この心得があると、うつ病や不安障害になりにくいこと がわかっている。すなわち、認知療法やマインドフルネス心理療法のスキルのある人は、再発しにく い。こういうスキルを高校生、大学生の頃、習得すればよい。その頃、習得しなかったら、社会に出 てからいつでも習得すればいい。
     うつ病や不安障害になる人は、認知療法では「固定観念や認知のゆがみ」があるという。マインド フルネス心理療法では「心理的柔軟性の欠如」があるという。こういう潜在的に持つ特徴ある反応パ ターンを変えれば、同じ程度のストレスでもうつ病や不安障害にならないで乗り越えることができる 。
 「メンタルな方面のスキル習得」は今後重要になる。がん、生活習慣病などの予防には気を使うが 、うつ病・不安障害の予防も極めて重要だ。うつ病・不安障害になると、薬物療法で治らない場合も あって、ひきこもり、休学、休職、退学、退職、家庭崩壊、自殺などのつらい状況になることがある 。予防が重要だ。幸い、マインドフルネス心理療法は予防法として用いることができきる。自分でも グループでも集まってできるスキルトレーニングを継続できる。他のカウンセリング手法にはみられ ない特徴だろう。
 うつ病になってから治療する心理療法には、認知療法、対人関係療法、マインドフルネス心理療法 がある。うつ病や不安障害も早期発見、早期治療開始した方が治りやすい。
     「つらい、つらい」「いやだ、いやだ」「どうしよう、どうしよう」「わからない、わからない」 「にくい、にくい」
 と、悩みはじめたら、うつ病になるおそれがあると本人や家族が自覚して早い段階で、支援、治療を受けるべきだ。しばらく、この思考におちいると、前頭前野の機能がそこなわれて建設的な思考判断ができにくくなって、つらい状況の中にはいりこんで、浮かびあがりにくい。治療や他者の支援が必要である。  10の危機要因にはないが、「介護状態」は高齢者の自殺の危機要因である。「つらい、つらい」 「いやだ、いやだ」という思いが渦巻くと、うつ病、自殺、心中のリスクがある。だから、高齢者の 介護状態(される人、する人)にある人の (1)社会的な支援と、(2)メンタルな方面のスキル習得の支援が求められる。介護のほか、10の危機 要因について、この地域、付近ではどんな支援サービスが受けられるのか、足りないのは何か、情報 は簡単に入手できるのか、具体的な行動が求められる。シンポジウムで具体的行動への一歩としたい 。
Posted by 埼メンタル協会/大田 at 07:36 | 自殺防止対策 | この記事のURL