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今の不幸を過去のせいにする人は変われない [2008年06月12日(木)]

今の不幸を過去のせいにする人は変われない

 「今、自分は不幸だ」と思う人が多いだろう。
 心理療法では、治療の初期に、どうすれば、今の不幸から抜け出ることができるのかを分 析する。
分析する時に、マインドフルネス心理療法は過去の出来事のせいで不幸が続いているという 分析は重視しない。マインドフルネス心理療法の中核の技法は、マインドフルネスであり、 アクセプタンスである。これは、患者の今の心のスキルである。今、患者が、不幸になる反 応パターンをとっている。変えるべきことは、今の反応パターンであるから、分析は今の行 動、思考、感情である。過去を変えることはできない。
 過去は変えられないが、今の自分は変えることができる。変えることができる潜在力をそ なえている。

「本人を変えることが問題の解決になる」という仮説

 マインドフルネスとアクセプタンスが中核の技法であるから当然であるが、分析、解釈、 治療方針は過去ではなく現在である。現在の患者の行動、思考、感情を分析して、現在の心 理的柔軟性はどうか、神経生理学的な変調がないか洞察する。
 心理的柔軟性の欠如に症状や問題の維持があるということの背景に、幼い頃の出来事、人 生上の学習の分析には多くの時間をさかない。過去を変えることはできない。本人の現在の 心理的柔軟性の欠如が今起きている。それを改善するには何の連鎖が今起きているか、今の 連鎖を変えるにはどうすればいいかの洞察、治療を支援する。もちろん、過去のことを加害 者が本人に謝罪すれば動機づけになるのなら、そういう分析もいいが。かえって、本人は 、他者のせいにして、治療への動機づけを失うかもしれないことをセラピストは理解してお くべきである。疾患によっては神経生理学的な変調が生じている場合があり、謝罪だけで回復するとは限らない。
 アメリカのマインドフルネス心理療法者の1人は、次のようにいう。
     「解決しなければならない問題が患者の行動ではなく、周囲の行動であることもあるが、 セラピーの課題は、問題を患者またはセラピストの感情、思考、行為の側面という観点から 定式化することにある。」
 患者の不幸な現在の反応パターンの要因を解釈する(治療方針をたてるため)が、解釈は 過去の出来事や行動ではなく現在の出来事や行動に焦点をあてる。
 幼い頃の出来事、人生初期の学習歴を深く分析しても、治療にはあまり効果がない。自分の不幸はあの人のせいだと患者が強く思いこむと、怒りが生じて悪化するほか、治療行動への動機が失われるおそれがある。もうストレスのある出来事は過去 であって、今は停止しているのであれば、本人のメンタルな問題、障害は、とにかく、患者 本人が変わらないと治らない。
 マインドフルネスの心理療法者は「解釈は現在の行動を現在の出来事に結びつけるように 試みなくてはならないというものである」という。
     「患者はしばしば、どのようにして自分が今のようになったのかを知ろうと躍起になる。 幼い頃の出来事を論じたがったり、自分の問題の展開における人生初期の学習歴の役割を判 定したがったりすることが多い。このような目標は明らかに正統なものであり、セラピスト はそのような議論を完全に避けるべきではない。しかし、注意しなければならない点は、行 動パターンの発生に寄与した要因を理解するということは必ずしも行動を維持している要因 についての情報を提供するものではないということである。また、このような分析は、患者 がどうすれば変わることができるのかということをほとんど示しはしない(実際、患者は「 こんな人生を送ってきて、いったい私はどうしたら良くなれるというのですか」と反応する かもしれない」。幼い頃についての議論から患者が時として獲得する心の平安は、それが適 切に扱われるのならば時間を割くに値する。しかし、そのような議論のせいで、現在の状況 のなかでの患者の行動を理解する試みが失われてはならないのである。」
 種々の心理療法があるが、マインドフルネス心理療法は、本人が心のスキルをトレーニン グして患者が変わらないと改善しない問題を扱う。たいてい、背景に神経生理学的な変調が あるから周囲が変わっても本人の神経生理学的な変調(たとえば、他者への怒りの神経回路 が過敏とか、感情抑制の回路の機能低下など)が回復しないと治りにくい。そういう難治性 の問題が多くなっている。心理的にはマインドフルネス、アクセプタンスのスキルの欠如と なってあらわれる。

怒りは他者を傷つけやすい

 怒りは他者を傷つけやすい。キレやすい、怒りやすい、他者を増悪する、家族に暴力をふるうというのは治療しないと 治りにくい。怒りを繰り返しているので、神経生理学的な問題が生じていることが多いから である。だが、「怒り」の場合、他者のせいにする(それが「怒り」の本質)から、自分を 変えるべきだとは思わない人が多いので「治療」しようと思う人が少ない。治療できる問題 であるという認識もうすい。対人関係で落ち込むことの多い人も、「このように落ち込ませるのは、相手が配慮しないからだ。相手が悪い。」と思う間は、ここにも、落ち込みと他者への怒りがあるので、自分を変えようという意識がない。反応パターンが繰り返されているので、同じ状況がしばしば起こる。 だが、「怒りの感情」は自分の側がかなり対処法を学習して治療できる問題だ。リネハンの弁証法的 行動療法が「激しい怒り」を治療をする心理療法である。日本では、こういう領域に資源を 投入してこなかったので、激しい怒りの治療や予防の分野も遅れている。

 うつ病、不安障害や依存症などの治療、非行犯罪の再発予防にもアメリカではマインドフルネス心理療法 が適用されている。こういう問題は、薬物療法だけでは完治しにくい。日本の専門家はいつ 、心理療法の重要さを政府に働きかけ、国民に教育するのだろうか。

 うつ病や不安障害、依存症の中にも、いじめ、他者の理不尽な行為、組織の厳しいストレ ス、事件事故などで発症することもある(多い)が、その場合も、他者のせい、組織のせい だと思って、自分の側で変えられる努力をしないと治りにくい。対人関係でも他者(だけ)のせいだと思うと、怒 り、増悪が増して、かえって悪化しかねない。もちろん、理不尽な社会、環境、組織、教育 の改善も同じように重要である。メンタルな面と社会の改革と両面が必要である。
 キレやすい、怒り、不安、自己嫌悪、落ち込むなどみな感情であるが、若いころから繰り返す傾向がみら れるので、早いうちから治療を開始したほうがいい。こういう傾向があると、日常的に頻繁 に感情(怒り、不安、嫌悪、落ち込み)を起こしているので、慢性ストレス状況にある。慢性ストレス 状況にあると、何かの出来事が急性ストレスとなり激しい感情を起こして、精神疾患、対人葛藤、問題 行動を起こしやすい。非定型うつ病の拒絶過敏性も類似の繰り返しの反応パターンである。 これは一般的傾向であるが、そういうことを予防するのもマインドフ ルネス心理療法である。マインドフルネス、アクセプタンスの心のトレーニングが中核とな っている。自己の精神作用を観察し不快事象を受け入れて、周囲の人を困らせないで、自分の願いを崩壊させないような 行動を選択していける心のスキルのトレーニングを継続していく。
Posted by 埼メンタル協会/大田 at 15:58 | 非行犯罪 | この記事のURL