精神疾患を治す(2) [2008年04月06日(日)]
精神疾患を治す(2)=「連合の形成」と「連合の解消」意識下の連合・生理学的変調クライアント(患者さん)の思考、感情、行動に影響して、そういう反応パターンをとらざるをえないことがくりかえされる「連合」がある。意識上の機能間の連合と意識下の機能障害との連合がある。多数の連合が重層的に生じている。意識下で生じている種々の脳部位の変調が思考や感情や行動に影響している。マインドフルネス心理療法においては、そのような部位の変調の緩和、改善が治療方針となる。変調の一部の改善が期待できない場合、その変調による不快さを受容すれば、別の変調が改善される。 うつ病の症状をひきおこす意識下の脳部位の変調うつ病の場合、意識下で、前頭前野、海馬、前部帯状回の容積減少、機能低下がある。そのことによって、精神症状が起きる。特にワーキングメモリ(作業記憶)機能が低下するので、勉強や仕事ができなくなったり、対人コミュニケーションができなくなる。HPA系(視床下部ー下垂体ー副腎皮質)の亢進、負のフィードバックの機能不全がある。 このために、前頭前野などを傷つけることがやまず、回復を阻害する。 定型うつ病には、縫線核セロトニン神経や報酬系(ドーパミン神経)の機能低下がある。報酬系(ドーパミン神経)の機能低下により、意欲や喜びを感じない。嫌悪系の亢進、不安過敏があり、否定的思考に連合する。縫線核セロトニン神経の機能低下は、嫌悪・不安など感情抑制の不全、行動の不活発などをひきおこす。 非定型うつ病は、メランコリー型うつ病(定型うつ病)とは、機能亢進や低下の部位が異なる。非定型うつ病においては、概して、セロトニン神経、HPA系の機能不全はない。また、気分のよい時や喜びを感じる時もあって、報酬系は障害されていないようである。そのせいか、食欲、睡眠はそこなわれない。 ただ、非定型うつ病においては、嫌悪不安の扁桃体の亢進がある。また、前頭前野の機能低下がある。これらが、気分反応性、対人関係において拒絶過敏を起こす。さらに、鉛様麻痺感を生じる部位(帯状回か)の亢進がある。 非定型うつ病では、初期には、症状の悪い時ばかりではなく、好調な日もあるので、前頭前野の機能低下の部位は、発作性感情の抑制機能の部位に限定されているようである。長期化するうちに(どの苦悩もそうであるが)社会生活の阻害により、慢性的ストレスを持続させるので、障害を受ける部位が広くなって、メランコリー型うつ病にみられる症状も出てくると、推測される。 治療標的、治療方針こういう機能亢進や機能低下を改善することが治療方針となる。不愉快な症状を受容するには限度があるので、変調部位を変化(改善)させることができるならば、改善したい。しかし、改善しない間は、苦痛を受容することが連合を解消するので、意識下の変調部位の改善になる。抑制、活性、受容などの心理的トレーニングを用いることが方針となる。薬物療法は、縫線核セロトニン神経の再取り込み阻害の作用で、他の変調部位の改善に効果がある(たとえば、脳由来神経栄養因子(BDNF)の増加により、前頭前野や海馬の容積を増加させる)が、薬では改善効果、再発防止効果のない患者がいる。 心理療法による治療方針としては、心理療法的技法によって、患者の脳部位の機能亢進のある部位の亢進抑制の効果が得られる抑制型のトレーニングを行なう。機能低下の部位には、機能を活性化させる活性型のトレーニング技法を用いる。効果があらわれるまでの不快な事象は、受容のトレーニングを行い、不快な事象の連鎖、拡大を最小限にとどめる。 そのような課題を長期間、実行することによって、治るという報酬を得ることができるので、これこそ、長期報酬課題である。だが、それは、前頭前野の機能であり、その部位の機能低下があるので、効果あることを理解できないとか、信じることができにくい(前頭前野の障害のためにそうなりやすい)。そうなると、課題を実行しないことになる。 前頭前野の機能低下により、長期間の課題実行と報酬(治る)の関係を信じて、課題を実行できにくく、治療には困難を伴う。うつ病の治療には、これを考慮しておかねばならない。 セラピストが遠いと、治療を回避し中断する。こういう困難を少なくするためには、家族の協力支援が重要である。家族が同行して、治療方針と課題をよく理解して、セッションがない日の課題の実行を支援するセラピストの補助者となれば、治療から脱落することが少なくなるだろう。 (続) 精神疾患の症状をひきおこす意識下の変調とその回復 =「連合の形成」と「連合の解消」 |


