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不安障害の不安・恐怖(2) [2008年03月22日(Sat)]

不安障害・非定型うつ病の不安・恐怖(2)

 =PTSD,トラウマ  不安障害や非定型うつ病に、不安発作がある。PTSD、トラウマのフラッシュバックも、恐怖体験が再現される。 不安恐怖は、無意識に起きる。すばやい経路が活 性化する。不安障害、不安発作の克服、治療の方針を考えてみたい。
 (前の続きです。)

治っても不安恐怖の部分は活性化したまま

     「このような理由から、そのような対象とFEAR(恐怖)システムとの結びつきは消すことができな いのですが、システムの出力が抑制されることは可能になっています。言い換えれば、連合は無意 識的に存続していても、その延長意識や自発的行動への影響が弱められたり、さらには完全に遮断 されたりするのです。第1章や第3章で言及したように、そのような抑制コントロールのための装 置は前頭葉、とりわけ腹内側野や眼窩野に位置しています。実験動物において恐怖ー不安反応の外 向きの表出が(行動変容技術によって示されるのは、完全な恐怖ー不安反応が 現われていたときとはほとんど同程度に強くFEARシステムが活性化され続けているということです 。二群間劇的に異なるのは、恐怖が抑制された群では前頭葉が同時に強く活性化されているという ことです。」(「脳と心的世界」マーク・ソームズ、オリヴァー・ターンブル、星和書店、198 頁)
 このことは、不安障害の心理療法で考慮される。パニック障害や対人恐怖などの不安障害が心理 療法で治ることがあるが、その時には、過敏な不安の回路(扁桃体)の亢進は弱まっていないのだ ろう。縫線核セロトニン神経や前頭前野の抑制力が強まっているから、行動が回避的にならずに、 「治った」という状態になったのだろう。抑制の強化なのであって、認知が修正されたわけではな いだろう。認知療法でカウンセリングした場合にも、前頭前野の抑制力が強化されたという報告が ある。不安障害は、抑制力の鍛錬をすることが、心理療法の技法としてすぐれているのかもしれな い。
 パニック障害もマインドフルネス心理療法で治療できるが、認知の修正の技法を用いないで、呼 吸法を用いる注意集中、思考の徹底的抑制、思考の解放が主な心理作用である。やはり、抑制の強 化が起きているのではないかと推測される。不安障害は、一般的な(恐怖の対象になっているもの の抑制でなくて)抑制力の強化で、症状が軽くなるようだ。
 恐怖の対象へのエクスポージャー法ではなくても、縫線核セロトニン神経や前頭前野の抑制が強 化される技法でいいわけだ。マインドフルネス心理療法は、呼吸法や運動によって、一般的な抑制 力の向上の作用によって、治癒するのだろう。治癒した時に、過敏な扁桃体は変わっていないよう だ。そうすると、前頭前野などの抑制力が再び低下すれば、再発するだろう。治った人は、呼吸法 や運動は継続したほうがいいのだろう。実際、そのように助言もしている。治っても、呼吸法など を続けたほうがいい。続けている人は再発が少ない。再発しても、軽くて、また治る。
  (続く)
Posted by MF総研/大田 at 23:15 | パニック障害・PTSD | この記事のURL