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うつ病の新薬の開発(1) [2007年12月15日(土)]

うつ病の新薬の開発(1)

 日本では、うつ病は、薬物療法のみに治療が集中しているが、現在、薬物療法 が効果があるのは、7割程度といわれる。
     「既存の抗うつ薬には、@有効率が60−70%程度にとどまる。A効果発現 までに時間がかかる。B副作用がある。などの欠点が存在することも事実である 。これらの欠点は、うつ病の病態とも関連すると考えられるが、既存の抗うつ薬 がモノアミン仮説に基づいて創薬されていることを考えれば、モノアミン仮説の 限界を表しているものとも解釈できる。これらの限界を超えるには、モノアミン 仮説によらない抗うつ薬の開発戦略が必要と考えられる。」(1)

     「SSRIおよびSNRIは従来の三環系および四環系抗うつ薬と比較すると副作用の 軽減は認められるものの、有効率は70%に満たない。 さらに、治療効果発現までに数週間を要し、作用発現の速さにおいても満足でき るものではない。これらの問題点を克服するため、抗うつ薬創出の新規ターゲッ トとして、従来の「モノアミン仮説」とは異なる新たな神経科学的機序に関する 研究から、種々神経ペプチドが次世代の抗うつ薬のターゲットとして注目されて いる。 」(2)
 だから、治らない人が多くて、社会復帰できない人、自殺する人がいる。9年 間、自殺が3万人を超えて、減少しない理由の一つが、うつ病を治す薬物療法の 有効率が高くないことである。 うつ病は、死にたくなるという症状があるので、深刻である。

 そこで、新しいうつ病の薬の開発がすすめられている。下記注の論文で紹介さ れている。まず、HPA系に作用する物質である。

HPA系に作用する物質

 うつ病の患者は、HPA系の負のフィードバック機能不全を起こしていて、スト レスホルモンの分泌が多い。上流のCRFというペチド(アミノ酸の一種、図では CRHと書いてある)の分泌が多いので、これを止める作用をする薬の臨床試験が 海外でおこなわれている(3)。
 セロトニン神経に作用するSSRIなどは、直接症状を起こしている標的から遠い セロトニン神経に作用するのだから、効き目がすぐにあらわれないようであるが 、CRF(CRH)なら、亢進している直接の部位に作用するから、うつ病が治る割合が 高くなるかもしれないと期待できる。
 しかし、私は、心理療法を併用すべきだと思う。このようなHPA系の亢進をし ずめて、うつ病がいったん軽くなっても、ストレスの大きいところに復帰すると 、また、HPA系の興奮が始まるはずだと思うからである。それを防ごうとして、 新薬の服用を継続できるのか、副作用が未知だろう。ただし、一度は、寛解にな るのは、朗報である。これまで、治らなかった人が治るだろう。その時に、スト レスへの対処法(心理療法)を身につけて再発をふせげばよいわけだ。今の薬で は寛解にいたらないうつ病患者が寛解になる割合が高くなる。臨床試験が終わる のが待たれる。(それでも、再発防止には、心理療法が重要だ。心理療法の開発 もすすめていくべきだ)
    (注)
  • (1)「新規抗うつ薬の開発動向」稲田健(東京女子医科大学)、(「日本臨 床」2007/9、1648頁)
  • (2)「神経ペプチド受容体:抗うつ薬創出の新しいターゲット」茶木茂之、 奥山茂(大正製薬)、(「日本薬理学雑誌」Vol.127(2006),No.3、196頁)
  • (3)上記の2つの論文。
Posted by 埼メンタル協会/大田 at 21:34 | うつ病 | この記事のURL