非定型うつ病(11)=不登校の背景に非定型うつ病
学童期の子どもが、非定型うつ病になると、欠席が多くなったり、不登校になった
りします。不登校の背景に、こういう非定型うつ病がある場合には、当然、その治療
をしないと復帰がむつかしいでしょう。
貝谷氏の本では、不登校のケースは、次の例が紹介されています。
- 事例4=17歳の女子高生(62頁)
- 幼稚園の頃、暗闇を恐れて眠れない夜があった。小学生になっても、雨の音や家
で1人だけで留守番をすることに恐怖心を抱くことがよくあった。
- 中学3年生の時、お腹が張り、おならが出て、教室で周りの人に迷惑をかけると
いって夜になると家で泣くことが時々あった。内科で検査を受けたが異常は発見され
なかった。
- 高校に進学し、テスト1週間前になると、夜、泣き出す。2年から時々、登校を
しぶる。夜になると理由もなく涙が出てくる。
- ある日、友達と、ちょっとしたことを言われて、気分が落ち込み、3日、学校を
休んだ。
- SSRIと抗不安薬による薬物療を始めたが、すっきりせず、時々、学校を休んだ。
- 4カ月後、貝谷氏のクリニックに来て、治療を始めた。抗うつ薬に加えて、非定
型抗精神薬を服用したら、元気になってきた。
- 事例11=中学生の時から、保健室登校、17歳で境界性パーソナリティ障害と
診断された女性(89頁)
- 中学2年生の時に友達関係に悩んで不登校になり、保健室登校を続けた。時々、
パニック不全発作があった。
- 専修学校に進学したが、休みがちだった。17歳から、うつ症状を訴え、休学、
心療内科で治療を受けた。夜になると泣いたり、リストカット、過眠、過食が見られ
た。
- 18歳になって学校に行けるようになったが、クラスメートと意見があわず、自
己嫌悪におそわれてトイレでリストカット。次の日から体が鉛のように重くなり、起
きられず、また不登校に。パニック発作、リストカット、飛び降りようとする行動が
みられた。医者に、境界性パーソナリティ障害と言われて、臨床心理士のカウンセリ
ングを受けた。
- 貝谷氏のクリニックで、薬物療法とカウンセリングを受ける。その後、症状は軽
くなったものの、買い物くせ、退行がみられた。
こうして、学校を休みがち、保健室登校、不登校の裏に、非定型うつ病やその前駆
症状がみられる場合もあるでしょう。若い女性に、リストカットが多いそうですが、
この例にもあります。リストカットやオーバードーズ(薬の過剰摂取)の裏には、非
定型うつ病、または、それに近い症状もあるでしょう。
早期に治療しないと、成人になっても、外出がむつかしくなるかもしれません。学校
におけるカウンセリング、不登校の子の支援には、うつ病、非定型うつ病のことも心
得ておかないといけないでしょう。いじめだけが不登校の理由ではないのですから。もちろん、いじめによって、非定型うつ病になることもあるでしょう。いじめによって、非定型うつ病の発作性の症状が起こる、ということもあるでしょうから、いじめは、もちろん、やめさせなければなりません。
しかし、生徒の場合、非定型うつ病らしいと判断がついても、治療やカウンセリン
グには、むつかしさが予想されます。家庭が治療やカウンセリングを受けることを許
すか、本人がカウンセリングを受ける意欲があるか、むつかしそうです。幼い本人に
、病気であると伝えていいものかも、むつかしいことです。クラスメートがうつ病と知ると、いじめる側の問題ではなくて、本人が問題だと偏見を持つかもしれません。
一番いいのは、こういう病気にならないように予防することですが、家庭の方針が
深く関係していますので、予防対策がとりにくい。ともあれ、本人の意思でカウンセ
リングを受けられる年齢になったら、貝谷氏のような、非定型うつ病に詳しい医師
の診断を受けて、治すべきです。
非定型うつ病には、拒絶過敏性という発作的心理が関係しているので、瞬間的な心の反応パターンを変える心理療法の併用が重要だと思います。長引くと、20代、30代までひきづります。早期に心理療法の併用をおすすめします。
(参照)「気まぐれ「うつ」病ー誤解される非定型うつ病」貝谷久宣、ちくま新書、
2007/7
非定型うつ病