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うつ病=海馬の変調 [2007年07月12日(Thu)]
マインドフルネス心理療法の本
うつ病や不安障害などを治すための新しい心理療法が開発されました。 それを紹介した本です。本で紹介した課題を実践すると治ります。

うつ病=海馬の変調

 =うつ病になると海馬が萎縮
 =心理療法の課題さえも記憶できない、思いだせない

 うつ病には、種々の精神機能の障害が起きる。身体症状も多い。それは、種々の脳 の部位に変調が起きているためである。セロトニン神経だけではない。精神症状は、 前頭前野、帯状回、扁桃体や、海馬の機能の障害が多いようである。今回は、海馬に ついてみよう。
 うつ病の患者には、海馬の変調がみられることも多い。海馬は、記憶の形成に 関係したり、HPA系の負のフィードバック機能があり、ストレスホルモンの分泌を抑制 する。うつ病の患者には、海馬の萎縮がみられる。
     「RajkowskaらはBA9野の皮質のグリア細胞が疎に分布し膨大化していることを報告 し、Harrisonも感情障害死後脳ではニューロンには変化がないか、あってもグリアの 変化に伴うニューロンの二次的な変化と考えている。一方、家族性の躁うつ病や単極 性うつ病のMRI解析でBA24野の灰白質の容積の低下を報告したDrevetsらは、家族性感 情障害死後脳でのみグリア細胞の減少を明らかにし、神経細胞には変化がないとして いる。したがって、感情障害の微弱な脳器質的な異常の主体はグリア細胞の減少であ るといわれている。一方、海馬はストレスにより過剰に分泌された副腎皮質ホルモ ン の神経毒素のため、神経細胞の脱落と容積の低下をきたすと報告されている。」 (1)
 海馬は、HPA系を抑制する機能もある。ところが、海馬には、 HPA系の負のフィードバック機能 があるので、海馬の機能が低下すると、HPA系の亢進が持続する。うつ病の患者に、海 馬の萎縮がある例があるが、ストレスによって海馬が萎縮してうつ病になるのか、も ともと海馬の萎縮があった人がうつ病になったのか、その前後関係は、まだ結論がで ていない。いずれにしても、うつ病の患者には、海馬の萎縮がみられる。このことは 、うつ病の症状に表れるだろう。
     「うつ病患者の脳画像では海馬の体積が小さいことも、この仮説の根拠の一つとさ れている。Cushing病患者や、ステロイド療法中の患者で海馬体積が減少しているとの 報告と上記のHPA系のネガティブフィードバック障害が海馬神経細胞の機能障害を引き 起こし、これがフィードバック障害をさらに悪化させるという悪循環の存在が考えら れる。一方、うつ病における海馬の萎縮は虐待の既往と関係するとの報告もあり、ス トレスによるコルチゾールの過剰分泌が海馬を萎縮させるという現象が、うつ病の病 態に関与しているのかどうか、結論は得られていない。」(2)

     デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)の研究からも、うつ病になると、DMNの機能低下があるという。DMNは、内側前頭前野や海馬から成る。ここにも海馬の機能低下が指摘されている。

     「海馬:うつ病では左右とも反復性・慢性の患者において体積減少を認める が、その程度は統合失調症より軽度である。双極性障害についての所見は一貫しない 。」(3)
 海馬には、HPA系の負のフィードバック機能があり、これが萎縮して、ストレスホル モンの分泌の抑制機能が障害されるならば、コルチゾールやサイトカインの分泌が持 続して、脳の種々の部位を障害する可能性がある。
 また、海馬は、記憶の形成に関係しているので、うつ病の患者に、海馬の萎縮が あれば、記憶障害がおこるであろう。新しいことを記憶できないとか、1か月以内の 出来事を思いだせないということがあるだろう。そうすると、勉強(生徒の場合)や仕事の能 率が落ちるだろう。また、会話や何かがある時に、適切な行動を選択するためにも、 短期記憶の中にあることから思い出す必要があるが、海馬の機能が充分でなければ、 適切な行動を選択できずに、回避やもの忘れが起きるだろう。
 うつ病になると、子どもなら、成績が下がり、対人関係も結びにくく、不登校の原 因になる。大人なら、仕事ができない。同僚や顧客と会話ができない。主婦は料理の メニューを思いだせないとか、材料から料理を作る手順を思いだせない。以前に覚え た料理のメニューを思いだせない、どういう材料からどう作るかわからなくなる。
 うつ病は、種々の脳部位の変調がみられる。前頭前野、帯状回、海馬、扁桃体、HPA 系、HPT系、自律神経、セロトニン神経、体内時計、視床下部、ドーパミン神経など多様な部位に変調が報告され ている。患者によって、その障害の部位が異なるので、うつ病にも、種々の症状が患 者によって異なるのだろう。抑うつ気分だけが強いとか、意欲だけがないとか、身体 症状が強いとか、睡眠障害がいつまでも続くとか、過食もあれば、食欲不振もある。
 うつ病の患者には、海馬の萎縮のある人も多いことがわかった。いずれにし ても、うつ病は治れば、海馬の機能障害は、永久的ではなくて、回復されうる。ただ し、幼い頃に、虐待など(それだけが海馬萎縮の原因ではないが)で、海馬が萎縮しても、うつ病を発症するのは、青年期以 降であるということは、海馬の萎縮のみがうつ病発症の原因ではない。多くの要因が 重なってから、うつ病が発症することになる。心理的ストレスは、大きなきっかけになるだろう。
 前頭前野は、長期報酬課題の実行に関係があったが、海馬も関係する。心理療法で治すのは、 長期報酬課題である。海馬の機能がそこなわれる程度が強い患者の場合、通院方式の カウンセリングでは、課題の記憶、助言の短期記憶の思い出しも、うまくいかないだろう。入院方式や毎日通う方式など特別の治療 プログラムを提供しなければいけないだろう。
 うつ病の症状のうち、記憶障害、対人コミュニケーション障害、作業障害などは、 ひとたび、うつ病が発症してからは、海馬の機能低下は、うつ病の維持、悪化に関係 するであろう。うつ病になってからは、記憶の出し入れがうまくいかないと、判断力 、治療行動、コミュニケーションがうまくいかないだろうから、家族などが、支援し て、適切な治療行動を受けるようにすることが必要であろう。何も助言しないと、何 も行動を起こせないかもしれない。そこで、うつ病を治すには、治療をすすめて、薬 物療法や心理療法を受けることが大切である。海馬については、記憶機能の障害が強 い患者には、かなり具体的に治療効果のある行動を家族などが、助言することや、入 院して治療行動をすること、頻繁にカウンセリングを受けて、認知や行動を修正する 助言が求められるだろう。
    (注)
    (1)「うつ病はうつ症状を呈する微小な神経障害性疾患といえないのか」三國雅 彦、池田研二(「うつ病のすべて」=医学のあゆみ、Vol 219 No.13, 2006/12/30 ) 1072頁。
    (2)「うつ病の分子生物学的研究」加藤忠史(「うつ病のすべて」=医学のあゆみ、 Vol 219 No.13, 2006/12/30 )1034頁。
    (3)「うつ病のNIRS研究」福田正人、三國雅 彦(「うつ病のすべて」=医学のあゆみ、Vol 219 No.13, 2006/12/30 )1058頁。
タグ:うつ病 海馬
Posted by MF総研/大田 at 18:20 | うつ病 | この記事のURL