なぜ、運動(エクササイズ)は「うつ」を改善するのか [2007年07月05日(木)]
なぜ、運動(エクササイズ)は「うつ」を改善するのか=脳科学の研究から推測される運動のうつ病改善効果運動するとうつ病が改善するという外国の研究者の研究成果を生田哲氏の著書(1)で、ひととおり、ざっとみた。運動は「重いうつ病」の人、軽いうつ病の人の改善効果があること、うつ病ではない人のうつレベルを改善、うつの予防効果があるというものだった。 では、なぜ、エクササイズ、運動はうつの改善・予防に効果を発揮するのだろうか。 こういう点について、生化学的な要因からは、エンドルフィン説やモノアミン説がある。 次に心理学的な観点から、気晴らし効果と自信回復の心理的な効果という説明がある。 さらに、別の理由を考察してみよう。 背外側前頭前野の活性化によるうつ病は、不快な情動の繰り返しによって、HPA系の亢進が続いて起きるようである。快の情動回路と不快の情動回路は異なる。
ところが、運動は、快の情動回路である、左背外側前頭前野、右小脳を活性化するだろう。こちらを活性化することが多いと、不快の回路の亢進がしずまっていくだろう。これが、うつ病は、運動で治ることがある理由ではないかと推測している。 実際、随意運動の時には、背外側前頭前野と小脳とが連携して活動することがわかっている。また、快情動の時にも、小脳が活動しているというのも、興味深い。小脳を活性化するような運動をすると、快の回路の一部が活性化する。そこをきっかけとして、快の回路全体が動きやすくなり、うつ病が治るのかもしれない。ただ、小脳でも、快の情動回路の小脳の部位と、運動時に活動する小脳の部位が全く同じなのか、その関係などは不明である。 心理療法への応用私は、うつ病は、前頭前野(他の部位もあるが、治すための豊かな技法へのてがかりとして前頭前野から入る)の機能不活性によって起きるから、治すのは、リハビリテーションで治るという仮説で心理療法を行なっている。前頭前野の機能で使わなくなっている機能(種々の)を、毎日、少しづつ動かす。そのことによって、うつ病は治るだろう。つまり、前頭前野の機能である、ワーキングメモリの機能、快の思考情動機能、コミュニケーション機能、感情抑制機能などを使わなくなっているのが、うつ病である。そこで、こういう機能を少しづつ動かすようなことを行なう。運動、呼吸法、生活行動の中での自動思考抑制などである。ワーキングメモリや快の情動回路などが動くような手法(今行なっている技法のほかにもたくさんあるだろう)を、患者さんに毎日実行してもらう。効果が高く、患者さんが実行しやすいものがよいわけで、試行が重ねられている。快と不快は、同時には、起こらず、快の時は、不快は抑制されるので、快の情動回路が活性化することをたくさん、患者さんが実行すれば、不快の思考回路が抑制され、低活性化した背外側前頭前野が活性化してうつ病(他の精神疾患の一部も、たとえば、不安障害や依存症も)が 治る可能性がある。(こういう方針であるから、認知療法的であるよりも、行動療法的な特徴が濃厚である) 元来、うつ病になると、快、喜び、自発性、意欲の機能がそこなわれる傾向があるので、うつ病の人でも実行できるような、背外側前頭前野が活性化する技法の選択、指導法の開発が課題となる。 運動以外も用いる運動ばかりがうつ病を治すのではない。運動ばかりではなく、背外側前頭前野(治療効果をあげるために、他の部位の改善になることも加える。たとえば、セロトニン神経や体内時計の改善など)が活性化するような行為(手芸でも、音読でも、料理でも)、呼吸法、生活実践を行なう。こういうことは、薬物療法とはかなり異なるが、背外側前頭前野を活性化するので、薬物療法で治らなかった「うつ病」でも、治ることがあるのだろう。アメリカでは、運動(「行動活性化」を用いる療法)も、マインドフルネス心理療法(マサチューセッツ大学医療センターで開始された「ストレス緩和プログラム」から開始されて、精神疾患を治療する種々のプログラムが開発された)も、広く臨床試験が行なわれている。日本でも、<自殺防止対策>のうちの「うつ病」治療の有力な一つとして、いくつかの病院で、臨床試験を行なってもらいたい。そして、種々の行動プログラムを提供するデイサービスを提供する施設を県に数箇所作れば、うつ病が治る人が多くなり、<自殺防止対策>となるだろう。私は、これまでの試行によって、一応、心理療法として整理して、自己洞察瞑想療法とした。アメリカで普及しはじめた「マインドフルネス、アクセプタンス」を用いる心理療法と極めて類似する。マインドフルネスとアクセプタンスが、背外側前頭前野の機能と関係が深いのだろう。呼吸法を行いながら、自分の問題を観察する。そして、日常生活のすべての場面での自己の精神活動の洞察を行う。目前の大切なことから意識をそらして、身体反応や思考(過去、未来、悲観的自己像、嫌悪的他者像など)にふりまわされる傾向があることを観察し、不快事象があってもそのまま観察してその特徴や害を洞察して、無茶な行動や大切なことを回避せず、大切なことを実行するトレーニングを生活の現場で行う。
(1)「うつ・ストレス・不安には「軽い運動」」生田哲、PHP研究所 うつ病は運動で治る
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