CANPAN ブログ検索
Loading
  • もっと見る
« 2012年03月 | Main | 2012年05月»
NO・2295『イスラエル権力内部がイラン攻撃を巡り大割れ』 [2012年04月30日(Mon)]
 イスラエルのネタニヤフ首相がアメリカを訪問し、オバマ大統領を説得してイランに対する先制攻撃を仕掛ける許可と、その場合の援護を求めた。しかし、このネタニヤフ首相のイラン先制攻撃に始まる戦争計画は、失敗に終わった。
 いかにアメリカ国内でユダヤ人の力が強いといっても、これはイスラエル一国の問題ではなく、世界経済全体に大打撃を与える危険なものであり、オバマ大統領が賛成しなかったのは、当然の判断であろう。
 もし、イスラエルがイランの核兵器開発疑惑で、イラン攻撃をするようなことになれば、イランは対岸の湾岸諸国を攻撃し、加えて、ホルムズ海峡を封鎖することになる。そうなれば世界経済は大打撃を受けることは間違いない。
 中国は最も大きな被害を受ける国であろう。中国はいまだに鉄道輸送が未発達であり、トラック輸送に頼っているからだ。もし、湾岸諸国からの石油が入手出来なくなれば、中国の経済は破滅的な打撃を、受けることになるだろう。
 もちろん、ダメージを受けるということでは、ヨーロッパ諸国もアメリカも、第三世界も同じだ。つまり、イスラエルがイランに戦争を仕掛けるということは、イスラエルばかりではなく、世界中のユダヤ人が世界全体を敵に回す、ということなのだ。まさに、世界的規模でのホロコーストを起こす、引き金を引くことに繋がるのだ。
 イスラエルのネタニヤフ首相やバラク国防相は、戦争も辞さずという強い立場を堅持し続けているが、これは狂気に近いのではないか。以前から、友人と狂信的な人物が国家のトップになることの、危険さを語り合ってきたが、ネタニヤフ首相の立場は私が恐れる、まさにその立場なのであろう。
 しかし、イスラエルにも正常な判断が、出来る人たちが少なくないようだ。ネタニヤフ首相の戦争願望に対し、真っ向から反対する人物が現れている。一人はシンベト(国内情報機関)の元長官ユバル・ディスキン氏、もう一人はモサド(国際情報機関)の元長官メイル・ダガン氏だ。
彼らはイランが核兵器を開発しているという、確たる証拠はないとして、ネタニヤフ首相のイランに対する先制攻撃に反対し、このような国家存亡に関わる問題を、首相と国防相だけで決めることは、危険だと強く反対している。
 その通りであろう。それ以外にもネタニヤフ首相の強硬姿勢に反対し、閣僚を辞任すると言い出す人物も出てきているし、連立内閣から抜ける、と言い出している政党もある。ここにきて、イラン攻撃はイスラル内部から、可能性を潰し始めているようだ。そうあって欲しい。
Posted by 佐々木 良昭 at 22:55 | この記事のURL
NO・2294  『世論調査結果・エジプト大統領選挙の予想』 [2012年04月29日(Sun)]

       大統領選挙立候補資格審査を終え、最終的に13人が立候補することに決まった。来月の23,24日に迫ったエジプトの大統領選挙を前に、アラブネットが世論調査を実施した。
 世論調査の結果は以下の通りだ。
:アブドルモナイム・アブルフットーフ32%(元ムスリム同胞団)
:ハムデーン・サバーヒ%(ナセリスト)
:アムル・ムーサ16%(元外相、元アラブ連盟事務総長)
:ムハンマド・モルシー9%(ムスリム同胞団、自由公正党党首)
:アハマド・シャフィーク3%(ムバーラク政権最後の首相)
 最も組織的にしっかりしているはずの、ムスリム同胞団が結成した自由公正党党首の、ムハンマド・モルシー氏に対する支持が意外に低いのは、ムハンマド・モルシー氏が強硬派だということに加え、エジプト国民がムスリム同胞団の全権掌握を、嫌った結果ではないかと思われる。
 アハマド・シャフィーク氏とアムル・ムーサ氏に対する支持が低いのは、両者が旧体制の人物、ということが影響しているのではないか。この点はムスリム同胞団が何度も指摘しネガテイブ・キャンペーンをした結果であろう。
結果的に、ムスリム同胞団には投票したくないが、エジプト社会にはイスラム教の影響が、ある程度あるべきだとする保守的な人たちは、ムスリム同胞団を出て立候補した、アブドルモナイム・アブルフットーフ氏を支持し、世俗派の人たちはナセリストのハムデーン・サバーヒ候補を支持しているということではないか。
 大統領選挙までにはまだ23日ある。これから何があるか分からない、というのがエジプト大統領選挙の現実であろう。
Posted by 佐々木 良昭 at 10:57 | この記事のURL
NO・2293『優しい兵士が殺された・トルコ兵の悲劇』 [2012年04月28日(Sat)]
 クルド労働党(PKK)の15歳の戦闘員の少年が捕まったのは、昨年の12月の冬だった。
 PKK戦闘員の少年は雪の上に座り込み、寒さに震えていた。
 PKKの少年戦闘員に寒いだろうと自分のコートを着せてやった、優しい一人のトルコ兵がいた。
 トルコ兵の名はケマル・オズドアン28歳。
 そのケマル・オズドアンはPKK とのビンヨルでの戦闘で、今年4月に死亡した。
 彼の仲間の兵士たちは誰もが、彼をやさしいやつだったと語っている。
 彼は金曜日に故郷のカフラマンマスに埋葬された。
 ケマル・オズドアンがPKKの少年に自分のコートを着せてやっている光景を、仲間の兵士が写真を撮っ て残していた。
 その写真がいまトルコのマスコミで話題になっている。
 優しいやつは早死にするのかもしれない。
 ふとそんなことを考えた。
Posted by 佐々木 良昭 at 23:28 | この記事のURL
NO・2292『アメリカの思惑通りにはならないアラブの春のその後』 [2012年04月27日(Fri)]
 連続して起こったアラブの春革命は、アメリカが焚きつけたものだ、というのが私の判断だが、それはアラブの多くの識者の認識でもある。
アメリカが軍を送らず、資金もあまり使わずに、現地の人たちを戦わせて、最後にはその国から富を奪うという、新型の戦争であり、その後には新型の植民地支配が、起こりうると考えていた。
しかし、同時に私はそのアメリカの新型戦争と、新型植民地支配は決して容易ではあるまい、とも書いてきた。アメリカが仕掛けたアラブの春革命で、最も関与の度合いが強かったのは、リビアの革命だった。アメリカはイギリスとフランスに攻撃させ、最後の仕上げの段階では無人機を使って、カダフィ大佐の息の根を止めたのだ。
リビアでは革命の当初から、アメリカ、イギリス、フランスの軍事顧問が入り、加えて、カタールが武器と資金と兵員を送り込んでもいた。そしてアメリカは20年間、バージニア州で飼い殺しにしていた、リビアの軍人ハリーファ・ハフタル氏を革命と同時に、リビアに送り返してもいた。
彼はその後、軍の参謀長になった。同じようにアメリカに30年間住み続けていた人物は、帰国して首相職に収まってもいる。彼の名はアブドルラヒーム・キイブ氏だ。彼らに加え情報担当のトップに座った人物は、リビアとアメリカの二重国籍を有する人物だった。彼の名はサーレム・ハーシ氏だ。
情報、軍事、政治の3つの要職を、アメリカ帰りの人物たちが握ったのだから、これでリビアは完全にアメリカの手に落ちたように見えるのだが、その後の動向を見ていると、どうもそうは言い切れなくなってきている。
最近になってアブドルラヒーム・キイブ首相に対する、臨時統治機構(NTC)の見方が厳しくなり、一説によると、アブドルラヒーム・キイブ首相は既に、更迭されたようだ。
リビアでは何万という国民が、武器を手にして革命に参加したが、その後も武器を手放さず、幾つもある彼らのグループが、それぞれに権利を主張し続けている。そして、口々にしかるべき役職を与えろ、と要求しているのだ。
このミリシアの受け皿は、治安警察と軍以外にはありえまい。こうした問題の解決には、アブドルラヒーム・キイブ首相は向いていなかったのであろう。結果的に、リビア国内状況は不安定で危険なまま、放置され続けてきた。その結果が、アブドルラヒーム・キイブ首相の更迭ということなのであろう。
アメリカが送り込んだ三人のうち一人が更迭されると、残りの二人も決して安泰ではあるまい。結果的にアメリカは今回も思惑が外れたということか。
Posted by 佐々木 良昭 at 15:36 | この記事のURL
NO・2291『エジプト大統領選挙の行方はいまだ不明』 [2012年04月26日(Thu)]
 エジプトを30年にも渡って支配してきた、ムバーラク大統領は意外にあっけなく打倒された。以来、エジプトでは各派各政党の人たちが、自己主張合戦を繰り返している。
これに輪をかけて、軍最高評議会はどうエジプトの新しい体制を作り上げていくかに、苦慮しているようだ。その第一は、新大統領の選出なのだが、軍最高評議会は軍事裁判所の裁判官を長とする、選挙委員会を設立し、大統領候補者の資格審査を行った。
結果的に最有力とみなされていた、オマル・スレイマーン副大統領、ムスリム同胞団が最初に立てた候補の、ハイラトシャーテル、サラフィ派のハーゼム・アブイスマイル氏の各氏は、立候補資格を認められなかった。
結果的に残った有力候補は、ムスリム同胞団の政党自由公正党党首のムハンマド・モルシー氏、アラブ連盟事務総長だったアムル・ムーサ氏、ムスリム同胞団から候補者として認められなかったアブドルモナイム・アブルフットーフ氏、そして最後の首相を務めたアハマド・シャフィーク氏となった。
ところが、アハマド・シャフィーク氏も旧体制側の人物だとして、立候補資格を認められなかった。しかし、彼が抗議し何とか立候補に、こぎつけることができたようだ。しかし、彼の当選の可能性は、極めて低いのではないか。
そうなると、アムル・ムーサ氏とアブドルモナイム・アブルフットーフ氏の一騎打ちのようだが、そうとばかりは言い切れない状況が出てきた。それは、立候補者を擁立することに失敗したサラフィ組織が、こぞってムスリム同胞団の自由公正党党首ムハンマド・モルシー氏を、押す動きが出てきたからだ。
しかし、それは世俗派の人たちが、許さないのではないか。そうなると、アムル・ムーサ氏が有利なのではないか、という下馬評が広がっている。
選挙結果はどこの国でも、投票箱の蓋を開けてみないと分からない、といわれるが、アラブの選挙はなおさらであろう。どこで何が起こるか分からないからだ。
6月2日に出される予定の、ムバーラク裁判の結果によっては、エジプトは再度大混乱に巻き込まれるかもしれない。そうなれば、選挙そのものが実施されない可能性もあるのだ。
エジプトでは選挙をめぐり、大衆が喜んで選挙の行く末を、最高の話題にしているだろう。それは、この国の国民すべてが参加できる、一番公平で楽しいイベントなのかもしれない。
Posted by 佐々木 良昭 at 15:27 | この記事のURL
NO・2290『イランに対する経済制裁はトルコに追い風』 [2012年04月26日(Thu)]
 イランは昨年、350万バレル/日の石油を輸出した記録を有する、大産油国だ。その石油輸出による収入は、1000億ドルにも達している。しかし、その大産油国のイランは、ご存じの通りいま、アメリカを先頭に西側諸国によって経済制裁の、締め付けに苦しんでいる。
単に物の輸出入取引ができないばかりではなく、イランとの銀行決済が凍結され、イランが輸入したくても、あるいはイランが輸出したくても、ドルの流れが禁止されてしまっているのだ。
このアメリカの制裁方針に背いた企業は、アメリカとの取引が禁止される事になる。そうはいっても、これまでイランの石油に依存してきた国々は、何とかこのアメリカの制裁から逃れようとしてきたが、アメリカの厳しい圧力によって、うまくいっていない。
日本も例外ではなく、イランアからの輸入量を漸減させることによって、アメリカの懲罰を受けず、しかもイランとの関係を維持したい、と思っているようだ。インドとイランとの間では、インドの通貨ルピーでの取引を行ってはいるが、それは極めて限られたボリュームの、取引でしかあるまい。
そうした苦しい状況に追い込まれているイランは、官民共にいま、トルコに支店を開くことにより、制裁のダメージを軽減しようと、思っているようだ。
最近、イランの3つの銀行が、トルコに支店を開設している。それはテジャーラト・バンク(商業銀行)、パサルガド・バンク、そしてもう一つの銀行だ。
トルコで外国の銀行が支店を出し、金融活動をするには、2000万ドルの資金があればできることになっているが、実際に運営するとなると、3億ドルのデポジットが必要なようだ。
イラン企業のトルコへの進出は、金融部門だけではなく、他の民間企業によっても行われている。これまで1500社ほどトルコにあったイラン企業の支店が、昨年1年間を通じて590社増え、現在ではイラン企業のトルコ国内支店が、2140社に上っているということのようだ。
イランに対する経済制裁が意外なところで、トルコの経済を支えることになりそうだ。IMFはトルコの経済が脆弱だという報告を出していたし、他の機関からも、短期的投機的資金の流入が多いことを挙げ、不安定だという分析が出されていた。加えて、トルコが抱える対外債務が大きいことも、マイナス材料として指摘されていた。
イランの窮地が、案外トルコの経済を下支えするのではないか、と思われる昨今だ。
Posted by 佐々木 良昭 at 13:50 | この記事のURL
NO・2289『サドルが動き出したイラク・マリキー首相はどうなる』 [2012年04月25日(Wed)]
 アメリカ軍が駐留し始めてしばらくの間、サドル師が引きるマハデイ軍がイラク国内で、その存在を誇示していた。宗教組織が持つミリシアが、これだけの力を持つ者かと、驚愕したほどだった。
その後、マリキー氏が首相に就任して以来、サドル師は派手な行動を控えていた。マリキー首相が同じシーア派の出身であることから、ある程度の信を置いていたのかもしれない。
しかし、サドル師は少し前の段階から、クルド問題にも首を突っ込み始めた。クルド自治区のバルザーニ議長に対し、一定の理解を示していたのだ。バルザーニ議長はイラク中央政府との間で、石油輸出代金の配分でもめていたからだ。
そして今、サドル師は明確に政治への関与を、再開したのではないかと思われる。サドル師は最近、マリキー首相の政治手法は、独裁者に通じると批判し、彼を首相の座から引きずり降し、他の人物をイラクの首相に就任させたい、と考え始めているようだ。
その人物の名前は、クサイ・アルスハイル氏だ。この人物はイラク議会の副議長のようだが、今まであまり名前を聞かない人物だ。
最終的に、サドル師がこのクサイ・アルスハイルを押し続けるかどうかは、イラク国内の政治状況に左右されるだろうが、具体的な名前まで出てくるということは、マリキー首相の立場が不安定化してきているということが、ほぼ確実だということの、証明になるのではないか。
確かに、現在のイラクではクルド地区分の、離独立が語られ始めており、キルクークの石油利権をめぐり、クルド自治政府とイラク中央政府との間には、厳しい対立関係が出来てきている。その流れの中で、クルド自治地区が分離独立するという、選択肢も出てこよう。
それは、イラクを弱体化させるものであることは、間違いあるまい。だからこそ、マリキー首相はクルド地区の自治政府に、圧力をかけているのであろうし、そのうまみを熟知しているトルコは、今の段階からクルド自治政府との、特別な関係を構築することで、利益を得ようと考えていよう。
トルコにしてみれば、イラク全体の取引額の半分以上が、クルド自治政府との間で結ばれていること、PKK(クルド労働党)問題解決など、多くの国内問題がイラクとクルド地区に直接的にかかわり合っているのだ。
サドル師はトルコとの関係を、どう考えているのだろうか。それを探るには、もう少しクサイ・アルスハイル氏のデータが必要なようだ。
Posted by 佐々木 良昭 at 14:56 | この記事のURL
NO・2288『激変が始まるかイラン国内』 [2012年04月24日(Tue)]
 イランが核兵器の開発に向かっているということで、いままでアメリカとイスラエルが、何時でも攻撃する用意がある、と叫び続けてきた。それに対し、イランも負けじとばかりに、やれるものならやってみろ、と言い返してきた。
イランからすれば、イスラエルまで届くミサイルはないとしても、レバノンにはヘズブラ、ガザにはハマースという、これまで支援し続けてきた組織があり、何時でもイスラエルに対し攻撃を仕掛けられる状況にある。
加えて、シリアの存在はイランにとって、実は頼もしい味方であろう。シリアがイスラエルに対し、ヘズブラやハマースと時を同じくして、戦争を仕掛ければ、イスラエルの必ずしも有利な戦争を、展開できるとは限るまい。
加えて、エジプトもムスリム同胞団が与党となった今日、何時イスラエルに対して攻撃的な姿勢を取り始めるか、分からない状況にあるのだ。
しかし、だからと言って、イランがいま絶対的な優位に、立っているわけではない。イランはアメリカの切りだす経済制裁により、大分ダメージを受けているようだ。イラン政府は日を開けずに、ガス田の発見があった、大油脈が発見された、経済は伸びている、世界の国々はイランの石油を買い続けている、という情報を流しているが、イラン国民はそのような政府の話には騙されない。
イラン国内経済はアメリカの経済制裁の効果が出始めており、日に日に悪化しているようだ。イランの通貨の下落。それに伴う輸入品の高騰、それに続く国内製品の値上がりとインフレ傾向が、強くなってきている。
その程度はだんだんひどくなり、最近ではイラン国民が何時暴動を起こしても、おかしくない状況に至っている、という話が漏れてきた。
つまり、このままイラン政府が対応に手間取っていると、政権そのものが打倒される危険性が、出てきたということであろう。そうした中で、ハメネイ師は極めて難しい決断を、迫られているということであろう。
国を滅ぼすのか、あるいは彼のアメリカへの恨みを晴らすべく、頑張り続けるのか。彼はアメリカの攻撃(テロ)によって、右腕を失っていることから、絶対に妥協はしたくないというのが本心であろうが、ここに至っては、かつてホメイニ氏がイラン・イラク戦争の終わりごろに語ったように、毒盃を煽らざるを得ないのかもしれない。
そうなると、アメリカとのパイプを持っている政治家、聖職者がクロ−ズアップされ始めるということであろう。その大物とは、かつての大統領職を務めた人物たちの誰かであろう。その人物の活躍に期待する。
Posted by 佐々木 良昭 at 17:14 | この記事のURL
NO・2287『思惑が外れたイスラエルのガス輸入』 [2012年04月23日(Mon)]
 エジプトとイスラエルの関係は、1979年に旧キャンプ・デービッド合意を交わして以来、冷たいながらも平和な関係が、続いてきていた。そのため、両国は中東最大の軍事大国に対し、戦争に備える必要のない時間が、経過してきていた。
しかし、ここにきてイスラエル側は、エジプトを中東で最も危険な国家として、認識し始めているようだ。それは、キャンプ・デービッド合意の一部でもあった、シナイ半島産のガスを、イスラエルが特別安価で入手してこれていたが、今回契約期間が過ぎたということで、エジプト側が期間の延長を断ったからだ。
イスラエルにしてみれば、ほぼ半永久的にエジプトはシナイのガスを、安価で提供してくれるものと、思っていたようだ。そうでもなければ、イスラエルが仮想敵国であるエジプトのガスに、40%も依存するようなことはなかったろう。
このシナイ半島のガスが安価に、しかも長期間にわたって、イスラエルに輸出されていたのは、シナイ半島をイスラエルがエジプト側に返還することと、表裏一体の関係だったのであろう。
このガス契約が切れ、しかも延長されないということがあってから間もなく、イスラエルのリーベルマン外相が突然、エジプトをイラン以上の危険な国家だと言い始め、ネタニヤフ首相に対してもそのことを強調している。
リーベルマン外相の考えでは、シナイ半島のガス輸出を反故にするような国なのだから、将来和平合意も反故にするのではないのか、ということであろう。
他方、エジプトのオマル・スレイマーン副大統領(元情報長官)も、イスラエルがシナイ半島に軍を進めるのではないか、と警戒している。
イスラエルはエジプトが革命騒ぎで、国内混乱に陥っていたことを、内心喜んでいたであろう。つまり、そのような国内混乱状態では、戦争など考える余裕がないからだ。しかし、イスラエルの期待とは裏腹な方向に、エジプトは向かっているのではないか。
エジプトの議会選挙でムスリム同胞団が勝利し、与党になったことは既に誰もが知るところだが、イスラエルがいま頭を痛めている、ガザのハマースも同じムスリム同胞団なのだ。
エジプトのムスリム同胞団とガザのハマース(ムスリム同胞団)との関係が、今後進展していけば、エジプトとイスラエルとの間に、戦争は起こらないまでも、エジプトはガザのハマースを、扇動することはできよう。
そのことはハマースを勇気づけ、イスラエルに妥協し続けているファタハ(パレスチナ与党)を、苦しい立場に追い込んでいくことになろう。結果的にファタハ、パレスチナ自治政府は、次第に強硬派に変貌していかざるを得ないかもしれない。
Posted by 佐々木 良昭 at 15:42 | この記事のURL
NO・2286『マリキー首相の発言・イラクとトルコの緊張』 [2012年04月22日(Sun)]
 イラクのマリキー首相が突然、トルコを敵対国家だと非難し始めた。それはイラク・クルド地区のバルザーニ大統領の、トルコ訪問に起因しているようだ。バルザーニ大統領はイラク中央政府が、石油生産について公平な対応をしていないことを、非難してきていた。
 バルザーニ大統領の主張によれば、クルド地区のキルクークで生産される、石油輸出代金のうち、クルド政府が受け取るべき操業経費などを、受け取っていないということのようだ。そのため、クルド政府はイラクの石油輸出停止を、継続すると主張してきていた。
 イラクとトルコの間には、これ以外にもイラク・スンニー派のハーシミ副大統領に対する、トルコ側の対応にも問題がある。イラク政府はハーシミ副大統領が、暗殺を計画したことで逮捕しようとしたが、ハーシミ副大統領はクルド自治政府に庇護を求め、クルド自治政府は長期間彼をかくまっていた。
 その後、トルコ政府がハーシミ副大統領を受けいれている。次いでハーシミ副大統領はカタール、サウジアラビアなどを訪問している。マリキー首相にしてみると、ハーシミ副大統領を受け入れることで、スンニー諸国がシーア派のマリキー首相に敵対していく動きだ、という警戒心があるようだ。
 マリキー首相はトルコが地域での、覇権確立を狙っている、とも非難しているが、これはトルコにとって、極めて不愉快な発言であろう。トルコ側はマリキー首相の発言は、イラク国内における彼の立場を強化するためのものだ、と非難している。
 マリキー首相は近くシーア派のイランを訪問し、トルコとの緊張関係について、討議してくる予定だ。そのことは、トルコとイラクの関係が、両国内部では緊張の度合いが、非常に高まっているということであろう。
 トルコとイラクの関係は、双方にとって極めて重要であることは、述べるまでもない。トルコにとってイラクは、ドイツに次いで重要な市場になっているのだ。そのイラクとの取引で、イラクのクルド自治区はイラクとの取引総額の、半分以上の取引額に達している。
 イラク側にしてみれば、トルコ企業がイラク国内で復興支援をしており、イラク国内のインフラの整備は、トルコ企業が担っている割合が非常に高い。それは、トルコの企業がイラク国内の不安定なことを、あまり気にしないで進出しているためだ。
 トルコとイラクの関係悪化は、イラク復興が遅れるということであろうし、トルコ側にとっては経済発展の、足かせになるということであろう。
Posted by 佐々木 良昭 at 13:32 | この記事のURL
| 次へ