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NO・2044「ガス石油パイプラインが攻撃対象・イスラエルに影響大」 [2011年07月31日(Sun)]

 最近になって、中東地域でのガスや石油パイプラインに対する、テロ攻撃が増加している。これは過去には全く無かったとは言わないが、極めて少ないものだった。つまり、ガスや石油の生産と輸出が、各国の生命線であることを、テロリスト側は知っていたが、手を出さないという不文律が、出来上がっていたのかもしれない。
 しかし、最近では、イランのトルコに繋がるパイプラインが、攻撃されているし、イラクからシリアに抜ける石油のパイプラインも、攻撃されている。そして、エジプトのシナイ半島から、イスラエルやヨルダン、レバノン、シリアに通じるガスパイプラインについては、何度と無くテロ攻撃が、繰り返されている。
 シナイのガスパイプラインに対するテロ攻撃は、過去に5回あり、今月(7月)だけでも、3度起こっている。このシナイのガスパイプラインに対するテロでは、テロリストが現場の担当者を避難させたあと、爆弾を設置し爆破するというものであり、極めて巧妙な攻撃になっている。
 つまり、シナイのガスパイプラインに対するテロ攻撃は、あくまでもイスラエルに対するガス供給を止める、という政治的な意図が、明確になっているということだ。
 イスラエルはエジプト(シナイ)が供給するガスで、電力をまかなっているが、その割合は40パーセントに達していることから、もしシナイからのガス供給に依存できなくなれば、大問題になろう。イスラエル政府内部では、既にシナイからのガスに依存しない場合の、対応策も検討し始めているようだ。
 しかも、最近イスラエル国内では、住宅費の高騰に抗議するデモが拡大し、5万人もが参加し、政府の物価高騰に対する無策を、非難している。ネタニヤフ首相が電力やガソリン価格の引き下げ、主要な税の引き下げなどを検討しているが、実際には極めて困難なものとなろう。
 加えて、アメリカの金融問題がイスラエルに対する援助を、削減させる可能性も否定できない。したがって、イスラエルは今後、非常に難しい局面に、向かって行くことになろう。
 イスラエルはシナイのガス供給が、自国を狙ったテロだと感じているようだ。そのため、ヨルダンやシリア、レバノンに対するガス供給に、あまり問題が無いと語っている。しかし、ヨルダンの場合、シナイからのガスによる発電が、80パーセントにも達していることから、決して被害は軽微ではなかろう。
 パイプラインに対するテロが増えていけば、それは湾岸の諸国でも似たようなことが起る可能性を、否定できないのではないか。その場合、イスラエルが現在直面している問題は、明日は日本の問題になる、ということではないか。
Posted by 佐々木 良昭 at 11:48 | この記事のURL
NO・2043「トルコ三軍のトップが辞任何故?」 [2011年07月30日(Sat)]

 トルコの三軍のトップと総参謀長が、突然辞任を発表し、大きな衝撃をトルコ社会と、政界に与えたようだ。しかし、その衝撃は与党AKP(開発公正党)にとっては、決して悪いものではないようだ。
 そもそも、今回三軍のトップが揃って、辞任すると宣言したのは、同僚の将軍が汚職その他の罪で、刑務所に入れられていることに、抗議してのものだった。つまり、汚職を始めとする犯罪を犯した仲間を、救うためのものであって、動機は決して大衆の支持を受けるような、性格のものではなかったのだ。
 加えて、彼ら三軍のトップは、任期の終わりを来週の月曜日に、控えていたのだ。任期満了のたった数日前に、辞任をすることによって、与党に揺さぶりをかけることを、狙ったのであろうが、完全にその目論見は、外れてしまった、ということのようだ。
 トルコのマスコミは、どの社も三軍のトップを支持していない、ということのようだ。それは当然であろう。汚職と犯罪にまみれた仲間を、釈放させることを目的にした今回の辞任劇を、支持する者はいまい。この一件で、トルコのマスコミはまともな判断をし、報道をしているということが分かろう。
 結果的に、新たに総参謀長に就任が決まったのは、ネジデット・オゼル将軍だが、与党は彼を今までの総参謀長の後任の、総参謀長にしようと考えていたようだ。それは総参謀長が任期満了となる2年後だったが、今回の総参謀長辞任で、ネジデット・オゼル将軍は、2年早く総参謀長に就任することになった。
 トルコの友人が『この辞任劇が起こることによって、トルコのAKP(開発公正党)体制は、より一層強化されたのだ。』と今回の辞任劇とその後について、解説してくれた。そうなると、この前の選挙結果もあり、今後、AKPは益々自信を持って国内外政策を、展開していくことになろう。
 そのなかには、憲法改正とクルド問題の解決、第二ボスポラス海峡のような大規模プロジェクトの推進、などが含まれよう。もちろん、中東地域における外交、調整の主役になることも、忘れてはいまい。
 一国の将来が希望の持てるものになるか否かは、リーダーの考えが正当であり、明確であることが、その基本的条件であろう。日本ではそのいずれもが、与野党共に不明確な状態に、あるのではないか。
Posted by 佐々木 良昭 at 21:02 | この記事のURL
NO・2042「リビア反体制軍司令官アブドルファッターハ・ユ−ニスの暗殺」 [2011年07月30日(Sat)]

 リビアの反体制派の軍司令官、アブドルファッターハ・ユーニス氏が暗殺された、というニュースが伝わってきた。これは何を意味しているのか。今の段階では全てが不明だ。
 不思議なことに、彼がどのような状況で暗殺されたのか、何処で暗殺が行われたのかも、明らかにされていない。その上遺体は未だに、見つかっていないというのだ。リビア反体制派のリーダーであるムスタファ・アブドッジャリール氏は、アブドルファッターハ・ユーニス氏の死亡については語ったものの、その詳細については、何も語っていないようだ。
 アブドルファッターハ・ユーニス氏は他の二人と一緒に、殺害されたようだが、この暗殺をめぐっては、いろいろな憶測が飛んでいる。アブドルファッターハ・ユーニス氏は秘密裏に、カダフィ大佐とコンタクトを取っていた、という噂があり、反体制派の一部からは、信用されていなかったというのだ。
 そのことが事実であるか否かは判らないが、この暗殺事件を機に、反体制派は弱体化していく、危険性があるのではないか。それは、アブドルファッターハ・ユーニス氏の出身の、オベイデイ部族がこの暗殺に、激怒したからだ。
 もしかすると、アブドルファッターハ・ユーニス氏の暗殺で、反体制派の間に、部族間対立が発生し、反体制派内部での抗争が、始まるかもしれない。そうなれば、反カダフィの闘争は、一時的に、棚上げになるというよりも、分裂してしまうだろう。
 以前に、欧米の中にはカダフィ体制を、叩けるだけ叩いて、欧米の意のままにしよう、という考えがあることを、ご紹介したが(NO・2040)、反体制派によるカダフィ体制打倒が、思いのほか進まないことに、欧米は業を煮やしたのかもしれない。
 今の段階では何とも判断し難いが、今回のアブドルファッターハ・ユーニス氏の暗殺で、カダフィ体制は当分持ちこたえることに、なるかもしれない。その場合、イギリスとフランス、そしてイタリアは戦費がかさむため、大きな負担となろう。
 それにしても、イギリスとフランスのカダフィ大佐に対する対応は、あせりすぎだったのではないか。第一に反体制派に出来るだけ早く、武力闘争に入るようそそのかしたことだ。そして、第二にはカダフィ大佐と彼の子息サイフルイスラーム氏、そしてアブドッラー・サヌーシー氏を国際司法裁判所で、有罪にしたことだ。
 もし、カダフィ体制が今後も持ちこたえた場合、イギリスやフランスは、今後どうカダフィ体制と、関係していくのだろうか。アメリカも無人機を使っての、空爆に参加しているが、やはり今後のカダフィ体制との関係は、複雑になっていこう。そうしたなかで、比較的関係再開が容易であろう、と思われるのはトルコであろう。しかし、そのトルコもNATO諸国の圧力があってであろうが、反体制派を正式なリビアの代表として、認めている。今の段階では明確なことは分からないが、今後リビア問題は複雑さを増すことだけは、明らかであろう。
Posted by 佐々木 良昭 at 01:53 | この記事のURL
革命と独裁のアラブ [2011年07月30日(Sat)]
各位
私が7月15日に出した『革命と独裁のアラブ』はおかげさまで、アマゾンの中東部門で、1位の売り上げを記録し続けています。
一部には批判もありますが、私の中東の友人たちとの交友関係が、信じられないようです。また新中東地図の話を、私の妄想だと誤解した人もいます。
あれは本のなかで、アメリカの退役中佐ラルフ・ピーターズ氏が書いたものだと記しているのですが。
しかし、お読みくださった多くの方々から、分かりやすいとお褒め頂きました。いま、世界的な規模で起こっている不安定が、中東では一番顕著に現れているのではないかと思います。
もちろん、日本もその大変革の例外国ではないでしょう。天災と人災が、日本では重なって起こっています。世界中が大きな転換点に向かって、突き進んでいるのだと思います。
そのような時は、外国の例を見ながら、日本の情況を検討し、日本人はどうするべきかを考える材料に、すべきではないでしょうか。そうした観点からも、お読みいただければ幸甚です。
Posted by 佐々木 良昭 at 00:39 | この記事のURL
NO・2041「誰もが自分の成果と語るアラブの春」 [2011年07月28日(Thu)]
  アラブの春なる大衆蜂起が起こり、チュニジアとエジプトの権力を打倒し、今リビア、イエメン、シリアの体制を打倒しかけている。加えて、バハレーンやヨルダンも、不安定の度を増し、サウジアラビアですら、焦燥感がみなぎっている。
 こうした中で、多くの組織や国家が、そのアラブの春は自分たちの成果だ、と主張し始めている。イランはアラブの春を、イスラムの復興であり、反アメリカのうねりだと、自国の革命をその出発点とする主張を、繰り返している。
 ムスリム同胞団もしかりで、あたかも自分たちが、エジプトの革命を成功させ、革命後のエジプト政治をリードするのは、自分たちの権利だと言わんばかりの、主張をしている。それはチュニジアのイスラム原理組織、ナハダ党もしかりだ。
 他方、世俗主義の大衆、なかでも若者たちは、この革命は自分たちの手で成し遂げたのだ、と主張してやまない。一体誰がこの革命の首謀者であり、主役なのか疑問が湧いて来る。
 各国各組織による、自分たちが主役だとする主張とは裏腹に、最近になって、意外な意見が飛び出し始めている。それは、イランに対するアラブ諸国の、大衆の支持が、急激に低下していることだ。
 つまり、アラブの大衆は別に、イランの革命を真似したのでも、イランの指導を受けたのでもなく、あくまでも自分たちの手で、革命が遂行されたのだという、自負心からであろう。
 ムスリム同胞団についても同様に、革命を遂行した大衆は、決してムスリム同胞団を革命の主役だ、とは考えていない。確か、エジプトのムスリム同胞団の幹部は、解放広場(タハリール広場)で行われた革命闘争に、参加することに反対していた。
ムスリム同胞団が解放広場に登場したのは、革命が達成した後であり、他人の努力の成果を、あたかも自分たちのものであるかのように、振る舞ったに過ぎない、実に恥ずべき行為であろう。
そのムスリム同胞団は今、世俗主義の革命の主役たちから、革命の成果を盗む者として、怨嗟の視線を向けられているのだ。今後、決して、ムスリム同胞団が順当に、エジプト政治の主役に、のし上がっていけるとは思えない。
今回の革命劇は大衆の成果であり、それを画策し、背後から扇動した人や国が、主役であろう。そう考えると、現在の段階で、革命劇のさなかにある国々の、今後の主役はおのずから見えてくるだろう。今高らかに革命の主役を語る者たちは、やがて主舞台から退散することになろう。
Posted by 佐々木 良昭 at 12:40 | この記事のURL
NO・2040「感情論だがイギリスは中東を支配しているのか」 [2011年07月27日(Wed)]
 最近とても耳障りなニュースが流れてくる。それはイギリスやフランス、イタリアといった国々が、あたかも、中東諸国の本当の支配者であるかのように、中東の国々の内政に介入し、国家元首の将来について、語っていることだ。
 同時に、リビアの場合を例にとると、非常に早い段階から、反カダフィ派に対し武力行使をそそのかし、戦闘状態に入らせている。これでは、リビアの体制派と反体制派が、話し合いによって問題の解決を図る時間が、ほとんどなかったのではないかと思われる。
 加えて、イギリスとフランスは、カダフィ派の拠点を空爆してもいる。そしてこの空爆作戦には、アメリカも無人機を使って参加している。フランスは反カダフィ派に対し、武器を空輸してもいるのだ。
 そもそも、イギリスやフランスがリビア問題に介入し始めたのは、カダフィ派が反カダフィ派の人たちを虐殺しているから、それを阻止するためだ、と説明していたが、現段階ではイギリスやフランスの、空爆による犠牲者の方が、多いのではないか。
 しかし、イギリスとフランスの作戦は、必ずしもうまくいってはいないようだ。反カダフィ派がいまだに、決定的な勝利を収めていないため、カダフィ派の巻き返しが、あちこちで起こっているのだ。
 業を煮やしたイギリスやフランス、そしてイタリアは、カダフィが権力さえ放棄したら、リビア国内に残ってもいいと言い出した。つまり、これ以上戦争を続けるのは、経費がかさみ過ぎる、と考えたのであろうか。
 あるいは、イギリスとフランス、そしてイタリアのリビア問題への介入について、正統性がないという意見が、国際社会の中で拡大してくることを、恐れたためであろうか。
 いずれの理由があるにしろ、反体制派に対し、勝手に攻撃をそそのかし、自らも攻撃を加えたうえで、カダフィ大佐といえども、一国家元首に対して自国にとどまっていいという権利が、何故イギリスやフランスにあるというのだろうか。
リビアも国家の主権を持った国のはずだが、これではいまだに、リビアはイギリスの植民地下にある、ということではないのか。カダフィ大佐の人となりはさておいて、これはどう考えても、無茶な話ではないか。
 もっといやらしい話もある。カダフィ大佐やシリアのアサド大統領は、痛めつけるだけ痛めつけたうえで、統治を続けさせる方が欧米の利益につながる、という考えだ。そうすれば、欧米は何時でもこれらの国に再介入でき。脅しが掛けられ、両国の国民を味方につけることが、出来るということだ。簡単な話なのだが、見えない人には見えないだろう。
Posted by 佐々木 良昭 at 14:32 | この記事のURL
NO・2039「エジプトのムスリム同胞団は自壊に向かうか」 [2011年07月26日(Tue)]
  エジプトの革命以前から、エジプトのムスリム同胞団とアメリカとのコンタクトが、あったことが伝えられた。あるいは、アメリカはムスリム同胞団を、トルコの開発公正党(AKP)と同じように、穏健なイスラムの組織と誤解しているのではないか、という懸念を書いた。
 エジプト革命から5カ月が過ぎた今、アメリカの共和党はムスリム同胞団に対する、懸念を口にし始めている。その語るところによれば、エジプトに対するM1アブラム戦車の、130億ドルにも上る輸出は、エジプトでムスリム同胞団が台頭してきている状況では、危険だというのだ。
 アメリカの共和党の主張では、エジプトのムスリム同胞団とガザのハマースとの関係が、何処まで深いものなのか、ということであろう。実際に革命後、エジプト政府はガザに対する往来の緩和や、イラン艦船の紅海入りを、黙認している。
 そうした中で、エジプトのムスリム同胞団が、どのような方向に向かうのかをめぐり、同組織内部で意見の対立が、顕著になってきているようだ。その内部対立は、決して簡単なものではなさそうだ。
 まず、ムスリム同胞団のベテラン層と、青年層との意見の対立だ。青年層は今回の革命運動の中で、最初の段階から参加し、一定の役割を果たしてきたが、ベテラン層はこれに参加しない立場を、採ってきていた。
ベテラン層が革命広場(タハリール広場)に顔を出したのは、ほとんど革命が成就した段階であった。つまり、トンビのように横から、アブラゲをさらった形だった。その場で革命を起こした若者たちを押しのけて、得意げにスピーチをしたのは、世界的に有名なイスラム法学者の、カルダーウイ師だった。
 こうした経緯から、今ムスリム同胞団のベテラン層と、青年層の間には、明確な立場の違いが、出来ているのだ。エジプトの大統領選挙に対しても、ベテラン層は議会の多数派を手にすれば、後はどうにでもなる、と考えているのであろうか。あるいは、権力への意欲がないように、カムフラージュする意図であろうか。
ムスリム同胞団のベテラン層は、大統領候補を立てないことを決めているが、これに対して反発し、大統領選挙に立候補すると言い出した、ベテラン層の一人、アブドルムナイム・アブルファットーフ氏がいる。当然のことながら、彼を支持する人たちが、ムスリム同胞団のベテラン層や、青年層の中にいよう。
そうなれば、ベテラン層は少なくとも、二つのグループに分裂するということになろう。同時に青年層も、ベテラン層と連帯するグループと、独自の新しい方針で、活動していくグループに分裂しよう。
鉄壁の結束を守り通してきたムスリム同胞団も、権力を目の前にして、心乱れたのであろうか。ムスリム同胞団は今後、少なくとも4つ以上のグループに分裂し、内紛を起こしていくのではないか。その結果、誰が得をし、誰が笑うのだろうか。
Posted by 佐々木 良昭 at 14:23 | この記事のURL
NO・2038「リビア戦争の口実はイラクより酷いでたらめ」 [2011年07月25日(Mon)]

 ブログにインフォーメーション・クリアリング・ハウスというのがある。ここには、世界中から発信される記事や、論文が集められ、紹介されている。従って、われわれのような仕事をしている人間にとっては、国際情勢を醒めた目で見る上で、好材料を与えてくれる、有益な情報ソースのひとつだ。
 そのインフォーメーション・クリアリング・ハウス7月23日付に、トーマス・マウンテン氏の論文が掲載されていた。内容が非常に参考になったので、ここにその要旨だけを、ご紹介することにした。論文のタイトルは『イラクより酷いリビア戦争』というものだ。
 氏はこの中で、人権委員会や人道組織の報告を元に、カダフィ派がリビア国民を大虐殺しているというのは、嘘だと書いている。カダフィ派がヘリコプターで市民を虐殺したことも、ジェット戦闘機が空爆したことも、確認されていないというのだ。
 人権委員会の報告では、数千人の市民が殺害されたと、西側マスコミや政府から報告されたが、それは嘘で、ベンガジで死亡したのは、たった110人だというのだ。しかも、そのなかには、ベンガジの反カダフィ派の人たちだけでは無く、カダフィ派の兵士も、含まれているということだ。
 他方、リビアの赤十字(赤新月社)の発表によれば、NATO軍の空爆で死亡した市民の数は、1100人に達しているということだ。そのうちの400人は婦女子、これに加え、6000人の市民が負傷したということだ。
 彼は大半のリビア国民が、カダフィ大佐を支持しており、大規模な支持デモも、行われていると主張している。その理由は、リビア国民がアフリカ大陸の国々の中で、最も恵まれているからだというのだ。
 リビア国民は無償の医療サービスが受けられ、無償の教育が受けられ、ほとんどの家族は自家用車を持っており、自宅を所有している、ということだ。そのことが事実であることを、私も見て確認している。
 それでは、そのようなリビアを、何故NATO諸国が、攻撃し始めたのかについて、トーマス・マウンテン氏はリビアがアフリカに、新銀行システムを構築しようとしたからだというのだ。
 この新型のアフリカの銀行(資金のほとんどはリビアの出資)が出来上がれば、アフリカ各国は無利子か、あるいは非常に低い金利で、金が借りられることになるし、貿易も決済にドルや西側の通貨が、絡まなくなると言うのだ。そのことが、NATO諸国なかでもアメリカの、逆鱗に触れたというのだ。もちろん、リビアの石油資源も同様に、NATOによるリビア攻撃の理由であろう。
 確か、イラクが攻撃を受ける前にも、同様のことがあった。それは、イラクが石油取引をドルではなく、全面的にユーロに変える、ということではなかったかと思われる。そのことが、アメリカを激怒させ、イラク攻撃が起こったのだということだ。当時、私は『イラク戦争は石油戦争であると同時に、通貨戦争だ。』と東京財団が開催した講演会で、語った記憶がある。
 しかし、こうしたアメリカや西側の努力も、中国に世界の資金が、大量に集まったことと、ロシアの豊富な資源、そしてBRICSと呼ばれる国々の、経済発展の前に、失敗していくのではなかろうか。
 中国とロシアは相互の通貨、元とルーブルでの貿易決済を、既に合意している。今後は、東南アジアの諸国と中国との間でも、元を基軸通貨とする貿易が、その割合を拡大させていくのではないか、と思われる。『ローマは永遠ではなかった。』ということを考え起こす時期が、来ているのではないか。
Posted by 佐々木 良昭 at 21:15 | この記事のURL
NO・2037「サウジアラビア政府にあせりはないか」 [2011年07月24日(Sun)]

 湾岸の一角にある島国バハレーンは、小国の中の小国であろう。外務省の資料によれば、東京23区と川崎市を合わせた面積(76平方キロメートル)に、124万人弱の人口が住んでいる国だ。
 その国で起こった反政府の動きに、不安を感じたサウジアラビアは、早い段階から自国軍を送り、安定化に努力している。コーズウエー橋によって繋がれている隣国が、不安定化することは自国の将来を、不安定化することに繋がる、と判断しての行動であったろう。
 しかし、どう考えても過剰な行動であったと思われるのだが、他国軍を入れてまで、力による弾圧をしたのでは、穏健な話し合いによる解決が、ほとんど望めなくなるからだ。
 その後、サウジアラビアは資金的な援助も、バハレーンに対して行っているが、それもあまり効果が出ていないようだ。力によって抑え込み、一時期は平穏を取り戻したバハレーンが、再度緊張状態を生み出し、バハレーン政府が呼びかけた平和会議には、反体制派の最有力組織である、ウィファークは参加を拒否している。
 つい最近になって、サウジアラビアはテロ対応のための、緊急法を定めた。それがいま、人権擁護委員会などから、非難を受けている。つまり、この緊急法は国民の自由な表現や、抗議行動を押さえ込むことになるというのだ。
 述べるまでも無く、この人権委員会の非難に対し、在英サウジアラビア大使館は、サウジアラビア国内で拡大しつつある、アルカーイダなど反政府テロ組織を、打倒するためのものだと説明し、人権委員会による非難は、何の正当な根拠も、無いとしている。
 しかし、最近ではインテリ層や女性、シーア派国民などがそれぞれに、政府に対し厳しい批判を主張し始めており、これらの動きを抑え込む上で、今回の緊急法が、適用される可能性があろう。
 サウジアラビアでは最近になって、秘密の地下組織がアルカーイダなどのテロ組織と連携し、反政府の行動を起こしている、という情報が流れている。そうなると、アルカーイダを始めとするテロ組織と、結びついているのではないか、ということを根拠に、民主化を求める活動を展開している人たちが、逮捕され、拷問を受ける可能性は、否定できまい。
 最近のサウジアラビアの動きには、何処かあせりを感じるのだが。あまりにも過剰と思われる行動や、決定が多過ぎるからだ。ヨルダンとモロッコをGCC(湾岸諸国会議)のメンバーにする動き、バハレーンへの対応はその典型といえよう。
Posted by 佐々木 良昭 at 17:49 | この記事のURL
N・2036「気になるサウジアラビアの隠れムスリム同胞団」 [2011年07月24日(Sun)]
 多分、以前に書いていると思うが、サウジアラビアが石油ブームに沸く前後から、大学をたくさん設立した。そこで、その計画段階から関与していたのが、エジプト人学者たちだった。
 彼らはナセル時代、弾圧から逃れてサウジアラビアに渡り、イスラム法学(シャリーア学)の教鞭を執っていた人たちだった。述べるまでも無い、彼らはムスリム同胞団のメンバーたちであり、しかも、強い政治的抵抗精神を、持った人たちだった。
 サウジアラビア政府には、十分な学問的知識をもつ人たちが、少なかったことから、サウジアラビアのイスラム大学は、押しなべてこのムスリム同胞団メンバーの学者たちの、指導に従って大学を設立し、講義を進めることになった。
 そのなかから出てきたのが、世界的に知られるイスラム原理の闘士、ウサーマ・ビン・ラーデンであり、彼と共にアフガニスタンで戦った、ムジャーヒデーン(聖戦の兵士)たちなのだ。
 つまり、サウジアラビアにはエジプトの、ムスリム同胞団の学者たちの、感化を受けた人たちが、相当数いるということだ。ややもすれば、サウジアラビアはワハビー派の、原理主義の国家といわれるが、実はその影で、ムスリム同胞団のメンバーが、増加しているのではないかと思われる。
 ムスリム同胞団とはその組織の発足当初から、極めて政治色の強い組織であり、単なるイスラム原理主義緒の団体ではない。しかも、彼らのメンバーはエジプトに始まり、シリア、ヨルダン、パレスチナなど、そしてリビアにも多数いるのだ。
 サウジアラビアでも、最近、『アラブの春』の影響が出始め、インテリ層が政府批判の言動を、し始めているが、近い将来、サウジアラビアの隠れムスリム同胞団メンバーが一気に、政治的な活動を起こすのではないか、という懸念が今私の頭のなかで萌芽し始めている。
 長い政治闘争の経験を持つムスリム同報団が、サウジアラビア政府を相手に、反政府の動きに出た場合、サウジアラビア政府には、その動きに対して、十分な対応能力が無いのではないか。
Posted by 佐々木 良昭 at 00:23 | この記事のURL
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