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NO・1427イスラエル青年層の兵役拒否は大きな変化の兆し? [2009年10月15日(Thu)]
 戦後の若者は、年々国を守るという意識が薄れている、という意見をよく耳にする。しかし、それは青年の意識によるというものではなく、彼らを取り囲む社会環境が、生み出す現象ではないのか、といつも考えている。
 寝る場所があり、食事があり、ちょっとアルバイトをすれば、缶ビールとタバコが買え、いろんなメーカーが若者向けの、安価な衣類を売っているようでは、真剣に頑張って働いて、お金を手にしなければならない、という意識は生まれにくい。
 こういう世の中では、ある言い方をすると、頑張る奴がかえって、異常に見えてくることもあろう。頑張る必要が無いのに、何故頑張っているんだろう。いまが平和なのだから、このままでいけばいいじゃないか、といった心理だ。
 振り返って、サラリーマンの場合も、会社はどうせ首にしないのだから、下手に管理職になろうとして、無理をする必要は無い、まさにぶら下がりで行くほうが、よほど気楽な人生が送れる、と思う人がいてもおかしくない。
不都合なのは肩書きが無いのと、少し給料が安いことぐらいなものだ、がそれを気にしなければ、何も問題は無い。公営住宅に住んでいれば、莫大な住宅ローンを支払う必要も、無いと考える人もいよう。
つまり、日本社会は成熟しすぎたために、現代の若者の心理が生まれているのだが、それとは少し意味合いは異なるが、大人たちにも共通した心理が、あるのではないか。
四方をアラブという敵に囲まれたイスラエルは、これまで必死にアラブとの戦争に備え、常に勝利してきていた。そして遂には、敗北ということを忘れかけていた。
そうした心理状態のなかで起こったのが、レバノンのヘズブラとの戦争だったが、この戦争では心理的な緩みから、大きな打撃を受け、精神的に明確な敗北を記録することになった。
しかし、その後もイスラエル政府要人たちは、責任の所在追及だけで、本当の意味での危機感を、忘れてしまっている。そのなかで、かろうじて彼らが守ろうとしているのは、イランの核兵器による攻撃、ということのようだ。
しかし、それはある意味では、起こりえない可能性がある、あっても大分先のことだ、という情報が氾濫しているため、何処までイスラエル国民や、政府のなかに緊迫感があるのか分からない。
そうした緊張感の緩みのなかから、出てきたひとつの社会現象が、イスラエルの高校生による、徴兵忌避運動であろう。88人の高校生がガザ侵攻は赦せないとして抗議し、占領を非難し、暴虐で、人種差別的で、非人道的で、違法で、非民主的で、良心が無いのがイスラエルの対パレスチナ政策だ、と非難しているということのようだ。18歳の青年たちはいま徴兵を前に、それを忌避する行動に出たのだ。
中東地位域にあっては、経済的に豊かで、自由が保障されているイスラエルでは、パレスチナ人に弾圧を加えなければ、自分たちは平和に暮らせる、と信じ込む若者たちが、増加し始めているのかもしれない。
他方では、イスラエルがもうユダヤ人の夢を、満たしてくれない土地になったと思うようになり、イスラエルから離れていく人たちも、少なくないようだ。ニューヨークで、東京で、トルコのアンタルヤで、土地と不動産を買いあさる、ユダヤ人がいる、という話を何度か耳にした。
アメリカから来たある外人が「貴方は、イスラエルはあと、何年持つと思いますか?」と聞いてきた。明確な返事はしなかったが、その不安が無いわけではない。
イスラエルの場合は、日本と似たような社会変化のなかで、中年のあいだでも、青年のあいだでも、国防意識が薄れていったのではないかと思うが、日本とイスラエルは、根本的に全く置かれている条件が異なり、多くの、いまにでも命をかけて攻撃してくる敵が、イスラエルの周辺には存在するのだ。
日本はそのことを全く無視していっていいのだろうか、日本にはイスラエルには存在する不安が、全く無いと言えるのだろうか。
Posted by 佐々木 良昭 at 00:16 | この記事のURL
NO・1426マハムード・アッバース議長の危険な立場 [2009年10月14日(Wed)]
 いまパレスチナ自治政府のマハムード・アッバース議長は、これまでの政治活動経験のなかで、最も危険な時期を迎えている。それは、ガザ戦争をめぐるゴールド・ストーン氏の、国連への報告書への対応で、大きな失敗をしでかしたからだ。
 ゴールド・ストーン氏はガザ戦争の調査士報告書を、国連に提出したがそのなかで、イスラエル側にもハマース側にも、戦争犯罪があったとしている。この報告書は国連総会から、国連安保理にまわされることになっていたが、アメリカの圧力を受けたマハムード・アッバース議長は、国連安保理に回すのを遅らせるように申し出、結果的に国連安保理には持ち込まれなかった。
 このマハムード・アッバース議長の下した決断は、ガザの住民の犠牲を無駄にするものだとして、激しい反発がガザ地区だけではなく、西岸地区のパレスチナ人の間でも広がった。
 マハムード・アッバース議長のお膝元である、西岸のラマッラ市などでは激しい議長への、反発デモが繰り広げられたことから、パレスチナ自治政府が、ヨーロッパ訪問中のマハムード・アッバース議長に対して、現段階で西岸に戻るな、と警告したほどだ。
 ハマースはこのマハムード・アッバース議長の、判断ミスを激しく非難し、彼にはパレスチナ解放闘争を指導していく、能力も資格も無い、と非難の舌鋒を鋭くしている。そのことに加え、パレスチナの元在エジプト大使のナビール・アムル氏からは、自分がマハムード・アッバース議長によって、暗殺されるのではないかと恐れている、というコメントが飛び出している。
 さすがに困ったマハムード・アッバース議長は、これまでの立場を変更させ、国連人権委員会でガザ戦争について、投票を依頼したいと語り始めた。しかし、とき既に遅し、ということであろうか。パレスチナ人の心は、マハムード・アッバース議長から既に離れていよう。
 パレスチナ人の間ばかりではなく、アラブ全域でマハムード・アッバース議長に対する非難が高まっており、彼だけではなく、彼が組織した内閣のメンバー全員に対しても、ノーが突きつけられている。
 一体、何故このようなばかげた失敗を、マハムード・アッバース議長は下したのだろうか。実は、アメリカが彼にガザ報告の国連安保理送りを、断念することと交換に、西岸に新都市建設の資金を提供する、ともちかけたようだ。結局彼は欲に目がくらんで、大きな判断ミスをしてしまったということであろう。
 パレスチナ問題をめぐって、アメリカから厳しい注文と、妥協を迫られているイスラエル政府にしてみれば、今回のマハムード・アッバース議長の判断ミスは、当分の間、パレスチナ内部に混乱をもたらすことから、歓迎すべき状況ということになろう。アメリカがマハムード・アッバース議長に持ちかけた話は、それが狙いだったのであろうか?
Posted by 佐々木 良昭 at 00:00 | この記事のURL
NO・1425不安は無いかアラブ首長国連邦の人口構成 [2009年10月13日(Tue)]
 アラブ首長国連邦の人口がついに190万人増加したというニュースが流された(2007年の数字では449万員であることから、現在は訳640万人ということか)。それは国力の間違いない証明であり、人口の少ない国にとっては、極めて喜ばしいニュースであろう。
 現実に、クウエイトやバハレーン、カタール、アラブ首長国連邦、オマーンといった湾岸の国々の、自国民人口はほとんどが、つい最近まで、数十万人規模でしかなかった。そのことは、周辺の人口大国を前にしたとき、どうしても弱い立場に、立たされるということだ。 
 したがって、人口小国は外国人の受け入れに対し、極めて寛容な政策を採っている。しかし、そのことは外国人の自国内居住を、放置するようなことをしているわけではない。
 保証人(スポンサー)や雇い主がいなければヴィザは発給されないし、入国後は、イミグレーション・オフィスに定期的に、登録に行かなければならないのが普通だ。加えて、多くの場合、雇い主がパスポートを取り上げて、勝手に出国できなくしている。
 そうでなければ、雇われ人が罪を犯した場合、雇い主に責任が降りかかってくるからだ。窃盗、殺人、傷害、姦淫、犯罪の種類はいくらでも挙げられよう。雇い主がパスポートを預かるということは、湾岸諸国ではきわめて当然のこととして、厳密に行われているのだ。
 さて、人口が190万人増加した、アラブ首長国連邦の人口のうち、何パーセントが自国人で、占められているのであろうか。驚くことに、自国民人口は16・5パーセント(100万人超)にしか過ぎないのだ。 
外国人の居住者のほとんどは、西アジアからの人たちで、インド人が175万人、パキスタン人が125万人、バングラデッシュが50万人、それ以外のアジアからは約100万人が入国しているということだ。アフガニスタン、中国、韓国、フィリピン、タイといった国々からだ。
それ以外には北アフリカ、ラテン・アメリカ、西ヨーロッパからであり、この合計が訳50万人ということだ。
つまり、インド人やパキスタン人の人口が、アラブ首長国連邦国民人口よりも、多いということであり、極めて不自然な人口構成になっている。もし、国内のインド人が蜂起すれば、あっという間に、アラブ首長国連邦人を制圧する危険性がある、ということではないか。
もちろん、その様なことが起こらないように、国内の情報機関は極めて効率的に、活動しているだろうし、国内での武器の入手についても、厳しく取り締まられていよう。日本はこれらの湾岸諸国から、外国人受け入れの場合の対策と、現実に起こっている問題を、学ぶ必要があるのではないか。
Posted by 佐々木 良昭 at 00:38 | この記事のURL
NO・1424女性の覆面(ニカーブ)は是か非か? [2009年10月12日(Mon)]
 いまエジプトでは、女性が覆面(ニカーブ)を着けることをめぐり、大論争になっている。ニカーブとはイスラム教の女性が、顔をスポリ隠す被り物のことを言うのだが、それはイスラム氏の初期からあったものではなく、後世になってから、流行するようになったものだ。
 現在でも湾岸諸国の一部に残っており、アフガニスタンでも形は違うが、使用されている。 
 アフガニスタンの場合には、顔の部分は編み目になっており、頭から身体全体をスッポリ包む、フード付きのワンピースのようなものだ。湾岸諸国の一部に残っているのは、黒い衣装にスカーフ、そしてからす天狗のような、顔面を覆う仮面のようなものだ。
 湾岸諸国の場合は、このカラス天狗は決して多数派ではない、サウジアラビアですら、国内ではそれほど多くは無い。スカーフで顔を隠す方式のほうが、多いのではないか。
 ところが、こともあろうにアラブ最大の都市カイロで、頭から顔をスッポリ包むニカーブが、流行り始めたのだ。このことにショックを受けたのであろう。イスラム世界全体に大きな影響力を持つ、エジプトのアズハル大学のトップである、シェイク・ル・アズハルに就任しているタンターウイ教授が、ニカーブの着用に、異議を唱えたのだ。
 彼はニカーブを付けることはよくないと発言した。それは多分に、タンターウイ教授がムバーラク大統領から指示されてのことであろう。そうでなければ、タンターウイ教授がそのようなことを、言い出すはずが無いからだ。
 イスラム法では、顔をスッポリ隠すようには、定められてはいない。髪を隠し顔は出していいことになっているのだが、アラブ社会などでは、他の男性の視線を避けるために、ニカーブが着用されるようになった、と考えるべきであろう。
 しかし、ニカーブはイスラム教徒の女性が、つつましいということになることから、広がったものと思われる。それは自分の家族の女性に対する、過剰なまでの保護の精神から来たものであろう。
 ところが、このシェイク・ル・アズハルである、タンターウイ教授の発言に、アラブ世界最大のイスラム集団である、ムスリム同胞団が噛み付いたのだ。イスラム教徒の女性がニカーブを被ることは、奨励されることがあっても、否定されるべきではないというのだ。
 このムスリム同胞団の見解は、保守的なアラブ世界の男性の間で、支持されるようになっている。
 シェイク・ル・アズハルであるタンターウイ教授は、苦しい自分の発言に対する、弁明を行っているが、結果的には、ムスリム同胞団に、政府とアズハルの権威に対する、攻撃の口実を与えてしまったようだ。
 シェイク・ル・アズハルであるタンターウイ教授は、二カーブ批判をする前に、何故いまエジプトの、しかも大都会であるカイロの女性たちの間で、スカーフを着用する人たちが激増し、それがニカーブにまで発展したのかを、考えるべきであったろう。
 貧富の格差が広がり、結婚したくても出来ない若者が激増しているなかで、女性たちは次第に自分を隠すことと、イスラムの形に傾倒することに、救いを求めているのではないのか。
 それはあたかも、神との結婚を誓ったキリスト教の尼さんたちと、どこかで通じるのではないか。
Posted by 佐々木 良昭 at 02:38 | この記事のURL
NO・1423イランに対する経済制裁は効果があるか [2009年10月10日(Sat)]

 アメリカはいま、ヨーロッパやロシアを巻き込んで、イラン対する新たな経済制裁を、効果あるものにしようとしている。もちろん、この話には日本も、がっちり組み込まれているのであろう。
 問題はアメリカが真剣に取り組んでいる、経済制裁による核問題に対するイランの妥協引き出し策が、成功するか否かだ。これまで何度も書いてきたように、もし、イランが最後まで妥協しなければ、アメリカは好むと好まざるとに関らず、イランとの軍事衝突という選択を、せざるを得なくなるだろう。
 つい最近、ノーベル賞選考委員会はオバマ大統領に対し、ノーベル平和賞を贈ることを決定した。このことは、オバマ大統領に苦しい選択をさせることに、繋がるかも知れない。
 述べるまでも無く、オバマ大統領がノーベル平和賞を受賞することになった理由は、「核の無い世界」の実現を推進していくためだ。そのオバマ大統領が、みすみすイランが核兵器を作ることを、放置したのでは笑い者になろう。従って、オバマ大統領はノーベル平和賞を受けることによって、選択肢が狭められたということではないのか。
 他方、イランだが、経済制裁のなかで、最もイランが困窮するのは、ガソリンの輸入が止まることであろう。公共のバスや電車が不整備なイランでは、自家用車や民営のバスが、主たる移動手段となっているからだ。
 もし、イランのガソリン輸入が不可能になれば、国民の不満はいやおうにも高まろう。ガソリン・スタンドでの喧嘩や、ガソリン・スタンドへの放火といったことが起こり、社会不安そして政治不安に、繋がる危険性があろう。
 ベネズエラがガソリンの輸出を申し出ているが、同国のガソリン生産には限界がある。ベネズエラはイランと同様に、アメリカと敵対していることから、石油精製設備が老朽化しているからだ。
 イランがガソリンを輸入しようと思えば、残るのは周辺諸国からの、密輸に頼るということであろう。イラク、トルコ、トルクメニスタン、アゼルバイジャン、パキスタン、アフガニスタンなどがそれだ。もちろん湾岸諸国からも、密輸は行われよう。
 そして中国がアメリカの主導による、イランに対するガソリン禁輸に、どう対応するかだ。いままでのところ中国は、アメリカが進めようとしている、イランに対する制裁で、非協力的な立場を守っている。それは中国がなんとしても、イランの石油・ガス資源を、手に入れたいと考えているからだ。
 イラン同様に中国もまた、公共の移動手段が未整備であることから、石油の輸入に支障が出れば、国内では暴動が起こる、危険性があるのだ。そう考えると、中国は何らかの形でイランに対するガソリンの輸出、あるいはイラン国内でのガソリン生産に手を貸すのではないか。
 イランのマスウード・ミルカゼミ石油相は「輸入先は追加した」と語り、ガソリン禁輸は効果を生まない、と豪語している。逆に、イランに対してガソリンを輸出することから抜ける企業に対しては、輸入リストからはずすとも語っている。
 イランにしてみれば同国が有する石油とガス資源を、中国ばかりではなく、フランスやドイツ、イギリスなどが狙っていることも、強みであろう。
 そして、イランがこれだけ強気なのは、世界の景気が悪いことに加え、石油精製の量に余裕があり、精製業者は輸出したがっているからだ、ということのようだ。そのことに加え、イランは独自で石油精製能力を高めるとし,早晩、イラン自身がガソリンの需要を、満たせるとも語っている。
 考えてみれば、ガソリンの精製には、それほど高い技術を必要としてはいまい。日本は大東亜戦争の頃、松の木の根から油を採り、使用していたではないか(松根油)。
 原油に熱を加え、ガソリンや灯油を作り出すことは、簡単で小さな設備でも、可能なはずだ。言ってみれば、酒から焼酎を造るようなものであろう。従って、ガソリンのイラン向け禁輸を、アメリカが実行したとしても、イランは一定期間、それに耐えうるのではないか。
 もし、イランが本格的な、ある程度の規模の製油所を、作ろうとするのであれば、それが結果的に核開発のスピードを、落とす効果があるかもしれないが。
Posted by 佐々木 良昭 at 22:55 | この記事のURL
NO・1422イラク各派が選挙に向けた動き活発化 [2009年10月09日(Fri)]
 イラクでは来年に控えた選挙に向け、事前の活動が活発化してきている。マリキー首相は野党側の攻勢を前に、必死で多数派結成工作をしているようだ。
 マリキー首相の動きは、多分にアメリカの意向を受けたものであり、宗教や宗派にこだわらない、世俗的連合政権であり、スンニー派、シーア派、キリスト教徒などを集めたものを構想している。
 マリキー首相はこの連合を、「法治国家連合」と名づけているようだが、何処まで法治なのか疑問だ。この法治国家連合には、クルド出身のタラバーニ大統領も参画するようであり、既に、アメリカ政府はタラバーニ大統領に対し、現在の権力機構を、全面的に支援することを約束している。
 他方、シーア派出身であるマリキー首相(ダウア党)にも誘いをかけた、シーア派のサドル師を中心とする野党連合(シーア派連合)は、「イラク国民同盟」と名乗り始めている。この連合組織にはシーア派のハキーム派「イラク・イスラム最高評議会(SIIC)」も主要な組織として加わっている。
 この流れのなかで、興味深いのはハキーム派に対し、サドル派が優位に立ってきていることだ。そして、これまでイラク・シーア派の最高権威者とされてきた、イラン人アヤトラ・オズマ(大アヤトラ)である、シスターニ師の影響力が、イラク・シーア派内部で後退してきているのではないかということだ。
 それは、サドル師がイランのクムで、宗教の勉強を積み、アヤトラ・オズマになったことが、影響しているのではないか。これまでは、シスターニ師を除いて、アヤトラ・オズマがイラクにはいなかったからであろう(他のイラク人のアヤトラ・オズマは、サダム政権時代に殺害されている)。
 従って、イラクのシーア派イスラム教徒はシスターニ師に、あらゆる面で指導を仰がなければならなかった。しかし、いまではイラク人のサドル氏が、アヤトラ・オズマに昇格したことにより、ファトワ(宗教裁定)を出す権限が、サドル氏にも与えられるようになったのだ。
 今後は、イラク・シーア派の国民の間で、サドル氏の発言力が、ますます強まっていくのではないか。そして、このサドル氏と元首相だったアラーウイ氏との関係が、強化されて行くことが予測される。
 その場合、立場が弱くなったシスターニ師は、マリキー首相との関係を強化していくのか、あるいは沈黙していくのかが、今後イラク国内政治の上で興味深い点だ。現時点では、シスターニ師は選挙に対し、前向きな意見を口にしていない。
 もし、マリキー首相がスンニー派の元サダム親衛隊ともいえる、バアス党員の情報部員を重用していくことによって、自身の権力を守ろうとすれば、当然のこととして、シーア派国民のほとんどを、敵に回すことになりかねない。しかし、彼は不安からその禁じ手を使うかもしれない。今後、イラク国内は来年の選挙に向けて、相当もめそうだという予測が、順当なのではないか。
Posted by 佐々木 良昭 at 23:34 | この記事のURL
NO・1421カダフィ大佐も人の親か、息子がかわいい [2009年10月09日(Fri)]
リビアではカダフィ大佐が高齢(? 69歳)に達したことから、誰が彼の後継者になるのかということが噂に上って久しい。
 そうしたなかで、最初に話題に上ったのは、次男のサイフ・ル・イスラーム氏だった、彼は穏健でいわゆる常識派の人物であり、内外で評判がよかった。
 サイフ・ル・イスラーム氏は欧州で学び、かつロシアとの合弁企業の責任者として、オーストリアにも長い間滞在していた。
 これまで、サイフ・ル・イスラーム氏はリビアの外国でのイメージを・改善するために・いろいろな役割を果たしてきていた。彼は芸術的なセンスもあり、ビアの遺跡の紹介とあわせ、絵画展を日本でも開催している。彼の絵はそれなりに見られるものだったと記憶している。
ムウタシム氏というもう一人の息子が、最近ではカダフィ大佐の後継者ではないか、と言われてきた、長身でハンサム、どちらかというとカダフィ大佐の若い頃に、サイフ・ル・イスラーム氏よりも似ている風貌だ。
 彼は治安軍を指揮しており、これまで大分無茶なことをしてきてもいる。そのため、カダフィ大佐はサイフ・ル・イスラーム氏のほうを、評価してきていたようだ。
時折、カダフィ大佐とサイフ・ル・イスラーム氏との間では、意見の対立があり、親子喧嘩をしたという噂も流れていた。そのことが、ムウタシム氏の後継の可能性の噂を、作り出していたのであろう。
今回、リビアの南部都市セブハで開催された全国人民会議の席で、カダフィ大佐はサイフ・ル・イスラーム氏に、しかるべきポジションを与えるように、会議参加者に持ち掛けたということだ。
会議に先立ち、カダフィ大佐はマスコミをシャット・アウトしていたが、ネットで情報が流れた。その情報によると、カダフィ大佐はサイフ・ル・イスラーム氏を「明日のリビア」の、責任者にしたいということのようだ。
この組織は、リビアの経済開発やイスラミストとの関係改善など、極めて困難で重要な役割を担っている。そのトップにサイフ・ル・イスラーム氏を据えたいということは、カダフィ大佐がサイフ・ル・イスラーム氏を、やはり一番評価しており、後継者にしたいということの、意思表示ではないかと思われる。
サイフ・ル・イスラーム氏は欧米各国で、既に顔が知られており、彼の外交的な活躍も、高く評価されている。彼が後継者になれば、リビアも国際社会のなかで、十分しかるべき評価を得られるのかもしれない。そうあってほしいものだ。
Posted by 佐々木 良昭 at 00:18 | この記事のURL
帰国しました [2009年10月08日(Thu)]
台風の一日前昨日帰国しました。おかげで成田に着陸できました。
不思議なものです。今回はトルコ航空の席が取れなかったのですが、それが幸いし昨日の朝の到着となりました。
何かアッラーの御意志のような気がします。
Posted by 佐々木 良昭 at 23:41 | この記事のURL
NO・1420ガマール力量不足で大統領候補に推せず [2009年10月01日(Thu)]
 エジプトのナジーフ首相が、今年中には2011年のエジプト大統領候補を、与党は推薦しないことを発表した。
 エジプトでは2011年に、大統領選挙が行われる予定だが、現在81歳のムバーラク大統領は、1981年以来28年の長きに渡って大統領の職にあるが、どう頑張ってももう限界なのであろう。
 そうなれば、当然出てくるはずなのが、以前から後継者と噂されていた、ガマール氏(44歳)の擁立だが、ナジーフ首相はそれを、敢えて否定した。つまりガマール氏ではいまだに力量が不足しているということであろう。
 エジプトンも全国の与党議員の間でもガマール氏をムバーラク大統領の後継者として押す人はごく一部であり、一説には4000人を対象にした調査では、ガマール氏を推す人たちは、360人しかいないという話のようだ。
 これまで与党は、ムバーラク大統領の意向で、ガマール氏を与党の要職に付け、アメリカとの関係も強めるように、何度と無く訪問させ、それなりの役割も果たさせたのだが、どうも実が結んでいないようだ 
 そうなると、野党側はますますガマール氏への禅譲に、反対の意向を強めよう。その結果、与党内でも同じように、ガマール氏ではだめだ、という意見が高まるのではないか。
 もし、結果的にムバーラク大統領の後継者に、ガマール氏が就任できなかった場合、彼は天国から地獄に、落とされるかもしれない。逮捕、取調べといった事態も起こりえよう。
 権力の座に長い間就いているということは、自分ばかりではなく、家族もまた勘違いさせることになる。結果は、汚職、職権乱用であり、それは犯罪行為ということになろう。権力の座から遠ざかったとき、ツケは利子を付けて払わされるのが常だ。
Posted by 佐々木 良昭 at 23:53 | この記事のURL
海外出張のお知らせ [2009年10月01日(Thu)]
                海外出張のお知らせ

 10月2日から10月7日までトルコに出張にでかけます。したがってこの機関は中東TODAY を休ませていただきます。
 帰国後にホットな情報がご提供できるよう頑張ってきます。
Posted by 佐々木 良昭 at 00:44 | この記事のURL