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NO・1262トルコ地方選挙結果をどう見るか [2009年03月31日(Tue)]
 トルコで地方選挙が行われた。結果は、与党AKPが後退し、野党が相対的に、伸びた形となった。これをAKPの後退とみるか、否かについて考えてみたい。
 与党AKPは政権を取って以来、選挙を実施するたびに躍進し、支持を増やす形になっていた。前回の選挙では、47パーセントを上回る支持を取り付け、独走態勢にも見えた。
 しかし、今回の選挙では得票数が38・9パーセントと、7パーセントもの落ち込みを見せている。その反対に、CHPが8パーセント支持を増やし、23・2パーセントの得票率となっている。
他方、クルド人の政党であるDTP(クルド人の政党・民主社会党)は、全国レベルでは5・5パーセントだが、トルコ南東部のクルド地域では、圧倒的な勝利となっている。
全体的には、AKPがいまだに強い支持を得ているが、世界的な経済の悪化が、AKPにとって選挙での不利な条件を、生み出したのであろう。
今回の選挙結果を受けて、クルド人の議員の地方・中央政府レベルで、発言力が強まることが予想されるが、これは、トルコ全体にとって、いいことではないのか。
つまり、武力闘争を展開するPKK (クルド労働党・武力闘争派)ではなく、トルコの政治に正式に参加するDTPが、クルド人の支持を集めたということは、今後、クルド問題が話し合いによって、解決されていくということを、予測させるのではないか、と思われるからだ。
ギュル大統領のイラク訪問と、その結果としての、イラク中央政府、クルド自治政府のPKKに対する締め付けが、今後、DTPをしてトルコのクルド人を全面的に、代表させる形になっていくものと思われる。
AKPは、今回の選挙結果を受けて、方針転換を考えると言っているが、それほど大きな方針転換は、出てこないのではないかと思われる。
Posted by 佐々木 良昭 at 13:54 | この記事のURL
NO・1261イラクの内紛は再発するのか・アメリカの意向は [2009年03月30日(Mon)]
 アメリカのバラク・オバマ大統領が最近、気になる発言をしている。彼はイラクの石油に対する対応が不十分であり、治安が改善されても、アメリカ軍はイラクにとどまる、という趣旨の発言をしているのだ。
 過去数日間、イラクの首都バグダッド市では、武力衝突や爆弾テロが、頻発し始めている。しかも、その犠牲者の数は何十人規模であり、テロの規模が大きいことを、意味している。
 武力衝突は、シーア派とスンニー派との間で起こり、両宗派間の敵対感情を、あおっているようだ。イラク覚醒グループとイラク軍の武力衝突では、3人が死亡し15人が負傷するというものだった。
 これらのイラク国内での衝突は、イラク人の間での、いがみ合いの結果なのか、あるいは、外部からの働きかけによるものなのかは、定かではない。イラク国内からの報道によれば、旧バアス党メンバーによる武力行使、という表現が目立ち始めている。
 つまり、あくまでもイラク国内のスンニー・シーア派間の勢力争いが、嵩じたものだ、と言いたいのであろうか。
 しかし、他方には先に書いたように、イスラエルやイランの都合が、あることも事実だ。両国はイラクの治安が悪化し、結果的に、アメリカ軍の駐留が長期化すれば、それにこしたことはない、と考えているのではないか。
 アメリカもアフガニスタンへのテコ入れ、とは言ってはみたものの、アフガニスタン情勢は、極めて不安定であり、制御が難しいことを、知っているはずだ。最近、アフガニスタンのカルザイ大統領の任期は、次の選挙時まででいい、という意見が出始めてもいる。
 その後は、再度アフガニスタンの各派による、合従連衡が起こり、情勢は不安定化する、ということであろうか。カルザイ氏の任期を、次の選挙までと区切ろうとする勢力は、最高裁判所だが、この意見は反カルザイ派からも、出ているのだ。
 そうである以上、アフガニスタンは次の選挙時の8月までに、ますます混乱してこようし、そうしたなかでは、アメリカが軍を増強する相談も、軍事行動を打ち合わせる相手も、アフガニスタン側にはいなくなる、ということではないのか。
 それなら、アメリカ軍はイラクの国内情勢に、まだ不安があるとして、イラク国内にとどまった方が、いいのかもしれない。
Posted by 佐々木 良昭 at 15:49 | この記事のURL
NO・1260似通っているイランとイスラエル恐怖症 [2009年03月29日(Sun)]
 イスラエルの空軍機が、スーダンで武器を輸送していた、とされるトラックを空爆した、というニュースが流された。そして、そのトラックに積まれていた武器の供給元は、イランだという説明がなされた。
 このニュースと、それに対する解説は、事実かもしれないし、全くのでたらめかもしれない。空爆された現場を見たわけではないので、実際に武器が積まれていたのか、スーダンが主張するように、アフリカの人たちが乗っていたのか、想像の域を超えることはできない。
 ただ、このニュースを読んでいて、ふと考えたことがある。それは、イスラエル側の主張しようとしているのは、スーダンのトラックに武器が積まれていたから空爆した、ということだけではなさそうだ。
 このニュースで説明されていたのは、イランで詰まれた武器が、ペルシャ湾を通過し、イエメンに届き、次いでスーダンの港ポートスーダンに着き、そこからエジプト領土を通過して、ガザに持ち込まれているということだ。
 この武器密輸には、シナイ半島での輸送に、レバノンのヘズブラが、関与していることにもなっている。彼らがシナイ半島のベドウインたちと協力して、ガザに武器を運んでいるということだ。
 次いで、そのレバノンのヘズブラと、シリアとの関係は深く、そのシリアは、イラクへの義勇軍の、通過地点になっているということだ。そして、イラクのシーア派は、イランと特別な関係になっているということになる。
 これでお分かりだろうか、イランは、既に、アラビア半島を完全に包囲している。イランはイスラエルを敵としているだけではなく、アラビア半島の各国も、攻撃の対象と考えている、ということになるのではないのか。もちろん、そのことはアラビア半島の石油・ガスが、危険な状況になっている、ということでもある。
 その説明は、実にうまく出来ていて、多くの人たちを信じ込ませよう。だが、同時に、イスラエル国民もこの説明を信じ込み、異常なまでの恐怖心を、駆り立てられることになるのではないか。
 そこから出てくる現象には、幾つかがあろうが、ここではとりあえず、最も分かりやすいものを、引き合いに出そう。
第一には、イスラエル国民は自分たちが、非常に危険な状態にあると考え、アメリカ軍が出来るだけ長期間にわたって、イラクに留まって欲しい、と考えるだろう。
 アメリカ軍がイラクに留まる限り、イラクはイランの手には落ちないし、万が一の場合、イラクに駐留するアメリカ軍が、イスラエルを守ってくれる、と思っているだろう。
 第二には、イランがイスラエルの安全上、最も危険な国家であり、ヘズブラもハマースもシリアも、イランが支援しなければ、イスラエルにとって、危険ではなくなると考えよう。その結果、イスラエル国民は、イスラエル政府とアメリカが、一日も早くイランを攻撃し、イスラム革命体制を打倒してくれればいい、と望むだろう。
 イスラエル政府は、こうしたイスラエル国民の不安を、取り除かなければならないわけであり、否が応でも、イランに対して敵対的姿勢を、とらざるを得まい。
 イスラエルがレバノンのヘズブラや、パレスチナのハマース、シリアに対し、イラン攻撃と同時に、攻撃する可能性をちらつかせているのは、イスラエル国民に対する、リップサービスの部分もあろう。もちろん、イスラエルはイランに対する攻撃を、実行したいとは考えているが、それは、アメリカのイラン攻撃が、イスラエルのイラン攻撃とあい前後しなければ、出来ない危険なものであろう。
 イランの場合はどうであろうか。イランは何時、イスラエルやアメリカが攻撃してくるか分からない、という不安の中にある。そこで、イランが考えるアメリカの攻撃や、イスラエルの攻撃を阻止する方法とは、イラク情勢を悪化させ、アメリカ軍をイラクに縛り付けておく、ということではないか。(皮肉にも、この点では、イスラエルとイランが、同じことを望んでいるのではないのか。)
同時に、イラクの状況が改善したということで、アフガニスタンに力を入れようと思っている、アメリカの出鼻を、くじく必要があろう。アフガニスタンがもし片付けば、確実に自国が攻撃される番だと、イランは考えているのではないのか。
 イランがパレスチナのハマースや、レバノンのヘズブラ、そしてシリアに支援を送るのは、イスラエルによるイラン攻撃を、抑える目的ではないのか。もちろん、イランはイスラム世界の解放、アラブの民族闘争支援といった、美辞麗句を並べてはいるが、一番優先して考えるのは、自国の安全なはずだ。
 こうして考えると、イスラエルがイラン攻撃を、あきらめることはなかろうし、イランがすんなり、イラク関与を止めるとは思えない。
そして、アメリカのバラク・オバマ大統領が望んでいる、アフガニスタン対応での、イランの協力取り付けの交渉は、始まりうるものの、協力関係を構築出来る可能性は極めて低い、と考えるべきではないのか。
イランは自分の家に飛び火しそうな火の粉を、一生懸命他家に押しやることによって、火災から逃れようとするのだが、結果的には、自分の家に火をつけているのと、同じことをやっているのではないか。
イスラエルもまた、自分の危険を押しとどめるために、外国に対して攻撃的な姿勢を崩さず、一部は攻撃を加えることによって、ますます危険の度を高めているのではないか。
恐怖心は、ないものをあるように見せ、それに対する過剰な反応を起こさせ、結果的には、始めにはなかったものを、無理やりあることにし、危険を現実のものに、してしまうのではないのか。
それは、お化けがいると勘違いした臆病者が、夢中で逃げているうちに、崖から落ちるようなものではないのか。イランもイスラエルも、もう一度冷静に、全体像を見つめ直して欲しいものだ。
Posted by 佐々木 良昭 at 23:13 | この記事のURL
NO・1259アフガン対応でイランが必要になった欧米 [2009年03月28日(Sat)]
アメリカの大統領がブッシュ氏から、バラク・オバマ氏に代わってなお、アメリカはアフガニスタンを、何とかしたいと考えているようだ。
 しかし、バラク・オバマ大統領にとっては、アフガニスタン対応が、どんどん困難になってきている。アメリカ軍の空輸の基地であった、キルギスのマナス軍事基地は、キルギス政府の拒否で使用不可能となっている。
 加えて、パキスタンからアフガニスタンに抜ける、幹線道路にかかっていた橋が爆破され、トラック輸送が非常に困難になっている。そのことに加え、パキスタン北西部の、アフガニスタン向け貨物集積地のトラック輸送ターミナルに、ロケット攻撃が行われ、使用不可能になったという情報が、私のところに昨日届いている。(パキスタン経由のアフガン向け貨物は、全体の75パーセントを占めている)
 こうした状況下では、アメリカがイランと直接交渉して、協力を仰ぎたいところであろうが、ことはそう簡単ではないようだ。したがって、最初にNATO がイラン側に接近して、アフガニスタン向けの輸送路を、提供してくれるようイランに交渉し始めるだろう、という予測を書いたが、現実にNATOはそう動き始めたようだ。
 先週の木曜日に確認された情報によれば、NATOとイランとがブリュッセルで直接交渉を行ったようだ。もちろん、テーマはアフガニスタンの治安、ということだ。
 アメリカもNATO とイランとの直接交渉を機に、イランへの接近を早めることになろう。既に、アメリカの高官は「イランがアフガニスタン問題解決の上で、重要な役割を担っている」と語っている。
 イランが何処まで、このNATOとアメリカの要望に応えるのか、何を交換条件として突きつけるのか、これからの欧米とイランとの交渉は、実に興味深いものになろう。その成り行きを見ていれば、アメリカの現在の実力が、どの程度なのかと、今後の中東情勢が、見えてくるような気がするのだが。
Posted by 佐々木 良昭 at 23:20 | この記事のURL
NO・1258 一月に起こったスーダン空爆の奇々怪々 [2009年03月27日(Fri)]
 今年の1月に、スーダンで輸送用トラックが空爆される、という事件が起こった。その空爆を行ったのが、誰なのか今日なお、不明のままになっている。
 一部からは、アメリカ軍が空爆したという情報が流され、他からはイスラエル軍機によるものだ、という情報が流された。もちろん、アメリカ政府はこの空爆に、何ら関与していないという声明を、即座に出し反論している。
 それでは、空爆はイスラエルによって行われたのか、ということになるが、イスラエル側は否定も肯定もしない、あいまいな状態を続けてきていた。しかし、最近になって、イスラエルのオルメルト首相が、意味深長な発言をしている。
 オルメルト首相は、イスラエルにとって危険であれば、世界中のどこでもそれを阻止する行動を、起こせると語ったのだ。確かに、イスラエルは1981年にはイラクのオシラク原発(タンムーズ原発)を空爆しているし、2007年にはシリアの核施設に、空爆を敢行し破壊している。
 イスラエルは、イスラエルが必要であると判断した場合は、何の躊躇もなく外国に対して、攻撃を加えてきている、という事実を忘れてはなるまい。
 それでは、スーダン空爆の必要性があったのか、ということになるが、各方面から流れてくる、情報に沿って考えれば、無理からぬことかもしれない。スーダンはイランからの、中東諸国への武器密輸の、重要拠点になっていたからだ。
 スーダンでバシール政権が誕生して以来、スーダンとイランは、イスラム的革命国家として友好関係にある。スーダンはイスラミストの軍事訓練キャンプも、10か所以上設置していると、西側情報機関は見ている。
 イランが中東各国、なかでもレバノンのヘズブラや、パレスチナのハマースに対し、資金や武器を提供してきたことは、広く知られているが、このイランから提供される武器は、ペルシャ湾を経由し、イエメンに届き、次いでスーダンの紅海に面した、ポートスーダン港に運び込まれ、シナイ半島からガザに、送られているということだ。 
 シナイ半島では、現地のベドウインが現金やレバノンのハッシッシを受け取り、密輸を行っているということだ。
 この話がどこまで正確かは別にして、イスラエルにとっては当然攻撃しなければならない、輸送トラック群であったろう。しかし、スーダン政府は空爆されたトラックには、アフリカ各国の人たちが乗っていたのであって、武器が積まれていたのではないと主張し、空爆を非難している。現場の写真が公開されれば、誰が嘘を言っているのか、一目瞭然だと思うのだが。
Posted by 佐々木 良昭 at 13:34 | この記事のURL
NO・1257イランの笑えない笑い話・密造酒で10人死亡 [2009年03月26日(Thu)]
 イランは国名をイラン・イスラム共和国と、命名しているだけに、イスラム法の徹底ぶりは、他のイスラム諸国と比べても、格段に徹底している。したがって、国民のすべてが、イスラム法によって、統治されることを甘受し、イスラム教徒としての道を歩むことを、喜びとしている。
 そう思う人たちもいるかもしれないが、イラン国民もいたって当り前の人たちであり、非イスラム諸国と変わらない生き方を、したがっている人たちが、少なくないようだ。
 イランの北部にあるギラン県の、中心都市ラシュト市で、イスラム教の国にふさわしくない、大事件が起こった。その事件は規模が大きかっただけに、大騒ぎとなったようだ。
 ラシュト市の住民が密造酒を造り、大酒盛りをやった結果、10人が死亡したというのだ。それ以外にも、2人が病院に担ぎ込まれ、生死の境をさまよっている、と伝えられている。
 イランでまさか、と思う人が多いだろうが、イランは同国西部の国、たとえばトルコなどから、密輸で大量のアルコールが持ち込まれ、密かに販売されているのだ。そのような経路を通じて、イラン国内に密輸されたアルコールは高価であり、大衆の手には渡りにくい。そうなると密造酒が造られるのは、当然の帰結ということになろう。
 イランではこうした、密造酒の飲酒による事故が、よく起こっているようで、小さな記事で紹介されることが、少なくないということだ。
 密造酒を造った者も、それを飲んだ者も、ばれればむち打ち刑、あるいは刑務所が待っているのだ。それでも止められないのが、酒という悪魔の水なのだろうか。
 それにつけても、日本に生まれてよかったと思う、日本人は少なすぎるのではないか。あらゆる意味で、日本ほど自由な国は、世界にはないのが現実なのだが。
Posted by 佐々木 良昭 at 15:21 | この記事のURL
NO1256ガザはエジプトに責任を持たせろ [2009年03月26日(Thu)]
 アメリカの元大統領カーター氏が所有する、カーター・ライブラリーから、パレスチナのガザに関する、新たな見解が出された。
 これは、1979年のエジプト・イスラエル合意に逆戻るものだが、当時、ガザ地区については、エジプトが管轄する方がいい、という考えがあった。
 ガザ地区は、エジプトが1967年の第三次中東戦争、つまりイスラエルとの戦争に敗れるまでは、エジプトがイスラエルが建国された1948年以来、管理していた地区だ。しかし、エジプトが戦争に敗北したために、以来、ガザ地区はイスラエルの管轄下(占領下)に置かれている。
 当時、ガザ地区をエジプト側に、管理させるべきだとする意見に対し、イスラエルのベギン首相が、ガザ地区を自国領土と認識し、受け付けなかったということだ。
 しかし、最近のイスラエル政府のガザ地区に対する対応は、明らかにガザ地区を、イスラエルの固有の領土とする考えとは、異なるものであろう。
アラファト議長存命の時に、成立したオスロ合意は、ガザ地区にパレスチナの自治政府を置くというものであったし、シャロン元首相がガザ地区を、パレスチナ側に返還したことも、ベギン首相の時代とは、全く異なる対応であることが分かろう。
 今回のガザ戦争を機に、イスラエル内部にも、より一層明確な形での、ガザ地区切り離しの考えが、出てきているのではないか。そのことを踏まえ、今回の話が出てきたものだと思われる。これはネタニヤフ政権成立後の、イスラエルとパtレスチナとの間の、最大の懸案になるかもしれない。
Posted by 佐々木 良昭 at 14:18 | この記事のURL
NO・1255シリアがアメリカ軍撤退に協力意向 [2009年03月26日(Thu)]
 シリアのムアッレム外相が、バグダッドを訪問した折に、シリア政府はアメリカ軍が、イラクから撤退するに当たり、シリア領土の通過を認める、意向であることを、明らかにした。
 これは、イラクのズイバリ外相と行った、共同記者会見の場で、明らかにされたものだが、今後のシリア・アメリカ関係に、好影響を与える可能性がある。」
シリアはアメリカの大統領が、ブッシュ氏からオバマ氏に代わったのを、関係改善の機会ととらえているようだ。
 アメリカ側はオバマ政権に代わって以来、シリアとの関係を改善する意向であり、アメリカから最近、シリアを訪問した代表団は、訪問後、共通の意向があることを、明らかにしている。
 アメリカがシリアとの関係を、改善する最初のステップは、在シリア・アメリカ大使の派遣であろうが、これは案外容易に、実現するのではないかと思われる。それは、オバマ大統領が中東和平に、力を入れていく方針であることから、予測できる。中東和平を推進する上では、シリアの存在を無視することはできないからだ。
 シリアもまた、イスラエルとの緊張関係を緩和させ、国内経済の再建に向かいたい、と考えるだろう。もし、アメリカとの関係も改善されることになれば、イラクの石油・ガスの輸出ルートとして、シリアが再浮上することも、期待できよう。
Posted by 佐々木 良昭 at 13:53 | この記事のURL
NO・1254ギュル大統領のバグダッド訪問とイラク・クルド問題 [2009年03月25日(Wed)]
 今週の月・火曜日にかけ、トルコのギュル大統領がイラクの首都、バグダッド市を訪問した。当初、他の都市も訪問することが検討されていたが、安全上の理由から、今回の訪問では、バグダッド市だけになったようだ。
 トルコの大統領がイラクを訪問するのは、33年ぶりだと言われているが、それだけ歴史的な訪問が、どのような成果を上げたのか、非常に気になるところだ。
 イラクとトルコとの話し合いは、極めて順調だったようだ。双方は、PKK(クルド労働党)に対する対応で、意見の一致をみている。イラクのタラバーニ大統領(クルド人)はPKKに対し、「武器を捨てるか、イラク領土から出ていくか」の選択を迫った。
 これと呼応して、トルコのギュル大統領は、「武器を捨てて投降する者に対しては、特別の恩赦を与える」ことを表明している。つまり、PKK問題の解決に向けて、イラクとトルコとは、完全に立場を一致した、ということであろう。
 こうした進展が、なぜ見られたのかというと、イラクの側には、今後に対する不安が、あるからではないか。アメリカ軍がイラクから撤退した後、イラク国内での武力衝突が、懸念されているからだ。
 それは、イラクのクルド、シーア、スンニーのいずれのグループも、望むところではあるまい。安定の中で、イラクの再建がスムーズに進むことを、いずれのグループも、望んでいるものと思われる。
 クルドは1991年以来、自治権を手にし、クルド特区を発展させてきたが、もし今後、イラク国内で各派の対立が嵩じ、武力衝突にでもなった日には、これまでの努力が、水泡に帰することになろう。
 ギュル大統領はバグダッド訪問時に、クルド自治政府のバルザーニ氏に会い、PKK問題が解決したら、トルコとクルドとの間には、国境はなくなると語っている。ギュル大統領はバルザーニ氏に対し、「隣人であり親戚だ」とさえ語っている。
 トルコにとっては、クルド地区を足掛かりとし、今後のイラク再建に、大きく関わりたいだろうし、クルド自治政府もイラク中央政府も、トルコとの協力無には、再建を進めていけない、と判断しているようだ。
 イラク中央政府にとっては、自国内の安定への協力と、トルコからの水資源の確保が、今後の死活的な問題になっているからだ。3月半ばに、トルコのイスタンブールで世界水会議が開催されたが、トルコはこの機会で、水が世界で紛争の種になることを強調し、トルコの水資の価値のアピールと、その戦略的活用を主張している。
 こうしたトルコとイラクとの友好協力の流れに対し、PKKは当然のことながら反発し、「武器を捨てることはない」と語っているが、現状は極めて厳しさを増している、ということではないか。それが決定的になるのは、トルコ南東部デヤルバクル市での、地方選挙の結果であろう。
もし、トルコの与党AKPが勝利すれば、平和路線は進み、PKKは弱体化していこう。もし、AKPが敗北すれば、PKKが台頭し、トルコ南東部の民主化は後退していこう。幸いなことに、現在の状況はAKP有利、ということのようだ。
Posted by 佐々木 良昭 at 16:02 | この記事のURL
NO・1253イスラエル労働党の連立内閣参加の意味 [2009年03月25日(Wed)]
 さんざん混乱し、結成があやぶまれていた、ネタニヤフ氏(リクード党)を中心とする連立政府が、最後の段階で労働党との連立に成功し、結成されることになった。
 労働党内部では、バラク党首のリクード党との連立参加をめぐり。白熱した議論が交わされたようだ。結果は、680人の党員代表のうち、507人がリクード党との連立を、支持することとなり、連立参加が可決された。
 労働党の中の連立参加反対派からは、バラク氏があくまでもイスラエルの軍事部門を、牛耳りたいがためだ、という意見があり、労働党の基本方針に反するものだ、という意見もあった。
 こうした、リクード党との連立に反対する党員に対し、バラク氏はネタニヤフ氏を恐れていないし、彼のイチジクの葉っぱになるつもりもない、わが党は平和路線を推進するために、連立政権に参画するのだと語っている。
 これまでリクード党は、シャス党の参加があったが、イスラエルの国会クネセトの、120人の過半数には満たなかったことから、組閣があやぶまれていたが、今回の労働党の参加で、同党が13議席を有していることから、連立議席が66議席となり、過半数を確保し、連立が成立したわけだ。
 問題は、バラク氏がなぜ最後の段階で、連立に参加することを決めたのか、ということだが、バラク氏はネタニヤフ氏の強硬路線に対し、ブレーキをかけたい、と考えたのであろう。
 同時に、バラク氏は新生イスラエル政府が、イスラエルの右派政党だけによって構成されたのでは、対外的に悪いイメージとなり、イスラエルにとって不利になる、とも考えたのであろう。
 加えて、バラク氏はイスラエルが現在置かれている立場は、きわめて危険な状態だとも、判断したのではないか。その原因は、オバマ政権の誕生、アメリカの金融破綻、欧露の反シオニズムなどがあるのではないか。
Posted by 佐々木 良昭 at 14:01 | この記事のURL
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