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NO・1171友人からの助言と叱責 [2008年12月31日(Wed)]
 12月31日から来年1月3日まで、掲載を休むというお知らせを昨夜書いたが、早速友人数人からお叱りを受けた。中東では悲劇的なことが起こっている。それを放置するのかということだった。
 それは中東の人たちを放置するだけではなく、日本の安全をも放置することに繋がる。そこで今日も書くことにした。
 確かに昨日から今日にかけて、幾つもの書きたいニュースが入ってきている。まずサウジアラビアの宗教権威者であり、カタールに亡命している、世界的にも著名なエジプト人宗教学者、カルダーウイ氏の弟子でもあるシェイク・サルマーン・アウーダ氏が、ファトワを発した。
シェイク・サルマーン・アウーダ氏は「血は血で償わせろ」と語り、ジハードを行うようイスラム教徒アラブ人に呼びかけている。
 もう一人のサウジアラビアを代表する宗教学者、シェイク・カルニ氏もアラブ諸国政府を非難し、エジプトはガザ・ゲートを即刻開けと語っている。
 こうした著名な宗教学者の意見は、じわじわと大衆の間に浸透して行き、アラブ各国政府は、苦しい立場に追い込まれて行こう。
 これまで何度か触れたレバノンのヘズブラも、来年早々に、具体的な軍事行動に出る可能性が出てきている。ヘズブラのリーダーであるハサン・ナスラッラー氏は、ガザの住民に対して支持を送るとともに、新たなイスラエルとの戦闘に備えるよう、第一級の警戒態勢に入ることを指示している。
 ある友人がメールで知らせてきたのは、ヘズブラがシーア派であることから、来年1月7日前後に、行動を起こすのではないかという予測だ。1月7日はイスラム暦のムハッラム月10日にあたり、シーア派はこの日をアーシューラの日としているのだ。
 ガザの悲惨な状況を前に、イスラエル国民なった48年組と呼ばれるパレスチナ人の間にも、動きが出てきているし、西岸のパレスチナ人の間にも、武力闘争を開始すべきだ、という意見が拡大してきている。
 こうした新たな動きの前には、マハムード・アッバース議長は、何の指導力も持っていないし、。他のアラブ首脳も同じであろう。エジプトのムバーラク大統領がガザ問題で非難を浴び、対応に苦しんでいるが、簡単にはガザとエジオプトとのゲートを、開くことは出来ない。
 ゲートが開かれ、ガザの住民がエジプト国内になだれ込めば、ガザの惨状が語られ、エジプト国民の間で一気にイスラエル討つべし、というう感情が高まろう。しかし、エジプトがいまイスラエルと戦っても、勝利する確率は決して高くない。戦争の形態が完全に変わっているからだ。
 ガザの悲惨な状況が中東全域に拡大する危険性は、日に日に高まっている、ということだ。
Posted by 佐々木 良昭 at 17:46 | この記事のURL
NO・1170イラン通信社とイランTVのインタビュー [2008年12月30日(Tue)]
 今日イランテレビ・ジャムジャムのインタビューと、イラン通信のインタビューを受けた。相手の質問の主なものは、ガザで起こっていることをどう思うかということだった。
 述べるまでもなく、日本の新聞は比較的大きめに扱ってはいるが、外国通信社の記事を、外国にいる日本人特派員が翻訳し、書き直して送った表面だけの意味のない記事だ。中身は全くない。
 テレビはテレビで、相変わらず全く重要性のない、ニュース(?)を流している。あとはどたばた番組だけだ。こんな日本の報道を見ていたら、いったい日本人は何を考えているのかと、外国人がいぶかっても不思議はない。
 ガザでは連日のイスラエルによる空爆で、400人近い人が死んでいるというのに、日本人にはこの悲惨な出来事が、全く重要でないということなのだろうか。このイスラエルのによる攻撃に、欧米各国がどう反応しているかを知るだけでも、2009年以後の世界情勢の、予測が出来るのではないかと思えるのだが。
 インタビューの内容は、ガザ攻撃で何処がどんな役割を果たせるのか、という質問があったが、ロシアも中国も口先では反対しても、何の行動も起こさないうだろうから、阻止するにはいたらないだろうと答えた。
 それでは国連は、という質問が出たが、国連は何の力も持っていない、期待するだけ無意味だと答えた。
 そして、そもそもパレスチナ自治政府は、不満を述べるが難民の帰還が認められても、住宅も仕事も医療も教育も施せないだろう。したがって、現状維持が一番パレスチナ自治政府には、好都合なのだとも答えた。
 私の答えがあまりにもストレートなので、面食らっていたようだ。そして、アメリカによるイラン攻撃の、可能性についても質問されたが、アメリカはRMAで攻撃するから、アメリカ兵の死者は一人も出ず、多数のイラン人が犠牲になり、都市も核施設も破壊されるだろうと答えた。
 そうした状況を打破するためには、オバマ氏の大統領就任を機会に、イランがビッグ・プレゼントをするべきだと提案した。それの詳細は述べないが、核開発に絡んだことだ。
 イランが私の意見を聞き入れ、何らかの新提案を出し、アメリカ・イランの緊張が少しでも、緩和されることを望むばかりだ。私の仕掛けた平和への爆弾が、2009年を平和な年にすることを祈念する。皆さんにとっても2009年がいい年になりますように。
 特別の出来事がない限り、正月三が日は掲載を休みますのでご了承ください。よいお年を。
Posted by 佐々木 良昭 at 23:34 | この記事のURL
NO・1169悲しいなれという麻酔薬 [2008年12月29日(Mon)]
 イスラエル政府が徹底的にやる、まだ攻撃を継続すると言っている以上、ガザの惨劇はまだ終わったわけではないが、パレスチナのガザに対するイスラエルの攻撃は、300人近い死者を出している。アルジャズイーラ・テレビを見ていると、アラブの大衆による大規模デモが、全アラブから伝えられ、大衆は怒りに燃えている。
 しかし、今回のガザ攻撃をめぐる緊急アラブ・サミットの開催は遅れ、外相会議も遅れそうだ。リビアのカダフィ大佐はすでに、緊急アラブ・サミットには出る気がないむねの、発言をしている。彼によれば「どうせアラブの首脳が集まったって、イスラエル非難が行われるだけで、実質的な行動は決められないだろう。」ということのようだ。
 アラブ諸国のこうした態度に、業を煮やした大衆は、ガザのゲートを閉鎖したままで、イスラエル軍にパレスチナ人を攻撃させたとして、エジプト大使館に対する抗議デモを行っている。
 エジプト政府がイスラエルに対する、軍事攻撃を決断しない限り、どのアラブの国も、軍事行動を起こすことはありえない。つまり、エジプト大使館に対する抗議デモは、エジプト政府に立ち上がってほしいということなのだ。
 しかし、エジプトもイスラエルと戦争を、起こすだけの決断が出来ないのではないか。アメリカはすでにお伝えしたように、ガザからのハマースをはじめとした、パレスチナ各組織による、イスラエルに対するミサイル攻撃が続いている以上、イスラエルには反撃の権利がある。この戦闘を終わらせるためには、ハマースの側が攻撃をやめることが先決だ、という立場を発表している。ヨーロッパ諸国も停戦を呼びかけるだけで、それ以上の行動をいまだ取っていない。
 ハマースは多分、徹底抗戦するつもりだろう。ハマースの首相イスマイル・ハニヤが言った「死を恐れない」という発言は、本音であろう。この戦いを途中でやめたのでは、パレスチナ問題は元の木阿弥に、なってしまうからだ。
 しかし、アラブもヨーロッパもアメリカも、具体的な行動を起こしていないことから、ハマースは相当の犠牲者が出ることを覚悟しなければならないだろう。ここで気になるのは、レバノンのヘズブラがどう決断するかだ。
 ヘズブラはハマースとは比べものにならない、本格的なミサイルやその他の兵器を、所有している。そのヘズブラの兵器が火を噴くとき、アラブ諸国は立ち上がらざるを、得なくなるのではないか。
 ハマースやヘズブラが何処まで頑張って、アラブ諸国政府に立ち上がらせることが出来るかが、今回の重要なポイントであろうか。2006年にはレバノン戦争で、多数の人が殺され、長期にわたるイラク戦争では、毎日のように何十人という人たちが、死亡している。
 ガザの犠牲者の数は、それらに比べればまだ少ない。アラブの大衆が騒ぐのも、新しい出来事だからであろうか。イラクの犠牲者にはアラブは慣れっこになり、ほとんど関心を払わなくなった。
 慣れは人の死をも、通常の出来ごとの様にしか、受け止めなくさせてしまうようだ。そう言う私も、イラクでの犠牲者の記事を見ても、詳しくニュースを読む気になれなくなっているというのが本音だ。
 アラブの人たちにも、日本の人たちにも、世界の人たちにも、ガザの状況を時間の経過の中で、影の薄い関心のない、出来事にはしてほしくない。あまりにも悲しい、出来事ではないか。
Posted by 佐々木 良昭 at 01:07 | この記事のURL
NO・1168悲しい予測の的中・ガザ攻撃 [2008年12月28日(Sun)]
 これまで何度か、イスラエルがガザを攻撃するという予測を書いた。
 今回のイスラエルによる本格的なガザに対する攻撃の最大の理由は、ガザからのミサイル攻撃であることは否定しないが、イスラエルの攻撃は、想像を超える規模のものだった。
 もちろん、イスラエルは本格的にガザを攻撃し、ハマース体制を打倒すると言っていたのだから、ある意味では当然での攻撃であり、妥当な規模の攻撃だった、ということであろう。
 しかし、そのイスラエル側の発言を、まともに受け止めたくはなかった。イスラエルの攻撃は200人近い死者と、800人にも及ぶ重軽傷者を、ガザの住民の間に生み出した。重傷者の中からは医療設備が不備であることや薬品の不足から多数の死者が出ることだろう。
 アラブ連盟は緊急首脳会議を開催するといっているが、イスラエルの攻撃を止めるだけで終わり、イスラエルに対する非難を、アラブ各国首脳は宣言するだけだろう。しかし、それはアラブ各国、なかでもアメリカと親しい国の首脳の立場を、危ういものにするであろうことを予測させる。
 アラブの大衆が、独裁的な体制によって押さえつけられているとはいえ、我慢の限界点が近づいているのではないか。
 今回だけは、アラブ各国首脳は、評論家のように「イスラエルのガザ攻撃を非難する」だけではすまないのではないか。
 2009年を数日先に控えたいま、アラブ各国政府は正念場を迎えたのではないか。
 イスラエルの今回の攻撃は、ガザのハマース側からのミサイル攻撃があったからだといっても、許されるべき規模ものではあるまい。あまりにも激しい攻撃だからだ。このような激しい攻撃が行われたのは、イスラエル国民の側に不安と恐怖症が広がっていたことに、起因するのではないか。
Posted by 佐々木 良昭 at 01:50 | この記事のURL
NO・1167アラブの2009年予測―希望か [2008年12月26日(Fri)]
 アラブ諸国でも、来年2009年という年がどのような年になるのか、高い関心を持たれている。もちろん、願わくば、中東地域が平和な状態になり、経済的にも、繁栄するということであろう。
 アラブのアルハヤート紙は、2008年を振り返り、大きな出来事を並べている。それによれば石油価格の急低下が第一であり、結果的にはアラブ世界全体が、経済的困窮に追い込まれたとしている。
 そして、第二に挙げたのが、バラク・オバマ氏の大統領当選だった。アラブ紙は彼、バラク・オバマ氏がアフリカに祖先をもつ、第三世界のルーツの人物であることから、これまでのアメリカの大統領とは、根本的に性質を異にすると、期待を寄せている。
第三に挙げているのが、2018年ごろには先進国が、水素エネルギーや電気をエネルギーとする、自動車を生産し市場に流し始めることから、産油諸国はますます苦しい状況に追い込まれる、危険性があるとしている。
そうした現状分析の上に立ち、アルハヤート紙は以下のことを、2009年に予測している(期待)。

:アメリカ軍の早期撤退。
:イラク再建への各派の協力。
:イスラエル・アラブの和平。
:イラン・アメリカの対話による湾岸諸国の安定化。
:イラン・トルコを含む湾岸諸国・イラクの地域協力機構設立の提言。

 ここにアルハヤートが挙げている項目は、直接的な細目に当たるものではないが、地域にとって最重要な問題ということであろう。それを理解し、日本が地域に貢献するべきであろう。
 一方的な日本の独りよがりの協力は、税金の無駄遣いであるばかりか、決して援助を受ける側の国々に、歓迎されないのだから。
Posted by 佐々木 良昭 at 13:32 | この記事のURL
NO・1166アサド大統領ヘズブラは私と関係ない [2008年12月25日(Thu)]
 シリアのアサド大統領が、非常に意味深長な発言をした。イスラエルのエルサレム・ポスト紙とのインタビューのなかで、彼は「レバノンのヘズブラは私とは関係ない、ヘズブラは国境のあちら側におり、パレスチナのハマースもシリアの国境の向こうにいる。したがって、もし、イスラエルが平和を求めるならば、3つの相手と交渉すべきだ。」といった内容の発言をしたのだ。
 このアサド大統領の発言の内容と、それに対する反応には、幾つもの重要な要素が、含まれているものと思われる。レバノンのヘズブラはいままで、イランとシリアの支援を受け、かつ政治的な関与も受けて、活動してきた組織だ。いわば、ヘズブラはレバノンにおける、シリアのフロント的組織なのだ。
 換言すれば、レバノンのヘズブラ組織は、シリアとイランのレバノンにおける、代表のような役割を、果たしてきていたのだ。その組織を、シリアとは関係ない、とアサド大統領が言ったということは、今後のシリアとヘズブラとの関係に悪影響を与えていこう。
 もちろん、アサド大統領が「ヘズブラとは関係ない」発言したのは、あくまでもイスラエルが、レバノンのヘズブラはシリアの影響下にあるのだから、シリアが真にイスラエルとの和平を望むのであれば、ヘズブラの反イスラエル活動を、押さえる義務シリアにはある、ということに対する反論に過ぎないのかもしれない。
 アサド大統領はインタビュアーの質問に、軽く答えたのだといえばそうかもしれないが、イスラエル側はこのアサド大統領の発言を「ヘズブラはシリアとは関係ないから、イスラエル軍がヘズブラを、徹底的に攻撃したとしても、シリアは手も口も出さない。」という意味に捉えよう。
 イスラエル側がアサド大統領の発言をそう理解し、徹底的な攻撃を加えた場合、シリアは放置できないことから、武器をヘズブラに供与するか、あるいはイスラエル非難を行うことであろう。あるいは自国軍を動かす、可能性もあろう。
 イスラエル側はその場合、シリアのアサド大統領は、ヘズブラとの関係を否定したにもかかわらず、実際には深く関与しているではないか、と非難するであろう。そして、それはイスラエルとシリアとの間に、新たな緊張を生み出す、危険性があろう。
 また、イスラエルはこのアサド大統領の発言が、二枚舌であったとして、シリアが否定している核兵器の開発についても、同じように信用ならない、と世界に吹聴することになろう。
 そうなれば、イスラエルはますますシリアに対する軍事行動、軍事的圧力をかけやすくなるであろう。言ってみれば、今回のアサド大統領の発言は、イスラエル側に対し、きわめて不利な言質を、与えてしまったということにはならないか。
 アサド大統領はイスラエル側の、軍事攻撃を恐れ、トルコの仲介でイスラエルとの間に、間接交渉を進めてきているが、最近になって、アメリカが介在するのであれば、イスラエルと直接交渉を行ってもいい、という姿勢を示し始めていた。
 今回のアサド大統領の失言は、意外な波紋を生み出す、危険性があるのではないか。レバノンのヘズブラとの信頼関係や、パレスチナのハマースとの信頼関係が、揺らぐ可能性があるということだ。そして、シリアはイスラエルとの交渉で、不利な立場に立たされる可能性が出てきたということではないか。
Posted by 佐々木 良昭 at 22:27 | この記事のURL
NO・1165サウジアラビアが核兵器をご所望 [2008年12月25日(Thu)]
 世界最大の石油埋蔵量を誇る、サウジアラビアはこれまで、スイング・プロデユーサーとして、石油価格の安定化に大きく寄与してきている。サウジアラビアは又、エジプトがサダト大統領の時代に、イスラエルと和平を交わしたことから、アラブ世界の盟主の役も、果たしてきていた。 
そのサウジアラビアは、実は1975年の第一次石油ショック後から、密かに核兵器の入手を、検討してきていたと言われている。持てる巨額の富を持ってすれば、あらゆることが可能なのが世の常だが、この核兵器ばかりは、そうならなかったようだ。
 サウジアラビアは早い段階から、自国内、自国民の手で核兵器を造ることを
断念し、パキスタンの核兵器開発に資金提供を、行ってきたと言われている。
 ここにきて、一旦は死蔵されていた、サウジアラビアの核兵器開発の話題が、再度マスコミの間で取り上げられ始めている。それはなぜなのか。
 アメリカのウオール・ストリート・ジャーナル紙は、サウジアラビアがパキスタンの援助で、秘密の核開発を進めている、と言うニュースを伝えた。
 これに先立ち、2003年には、イギリスのガーデアン紙が、同様の内容の記事を掲載しているし、2006年には、イギリスのグローバル・ビジネスマガジンが、同様の趣旨の記事を掲載している。
 イギリスのMI−6(対外情報機関)は、サウジアラビアが既に、しかるべき核の技術レベルに達しており、核クラブに加盟する資格を持っている。いつ参加するかはサウジアラビアの意向次第だ。」とまで断言している。
 サウジアラビアが核兵器の入手に長期間にわたって努力してきたと言うニュースはいまどのような意味をもって受け止められるのだろうか。そもそもこのニュースはガーデアンやウオール・ストリート・ジャーナル紙で伝えられたわけだが、今このニュースを蒸し返したのは、イランのプレス・テレビだ。
 そのことから考えると、イランは中東地域にあって、核開発を積極的に進めたいと思っている、唯一の国家でない、イランとは異なり、サウジアラビアには、明確な核兵器開発の意向がある、ということを、欧米と世界に伝えたいのではないか。
そのことによって、イランへの圧力を少しでも緩和したい、あるいはアラブ諸国に対し、核開発の権利を主張する、イランの動きに賛同させたい、ということではないか。
他方、アメリカやイギリスのマスコミが、サウジアラビアの秘密の意図を公表することにより、サウジアラビアに対し、「核兵器の開発などやるな。」という警告を発しているのではないか。
Posted by 佐々木 良昭 at 14:57 | この記事のURL
NO・1164微妙な段階に入ったシリア・イスラエル関係 [2008年12月24日(Wed)]
 イスラエルのオルメルト首相は、すでに任期も終わりに近づき、まさにレイムダックを通り越し、北京ダック状態に近づいているようだ。
 そのオルメルト首相がここにきて、シリアとの和平に対して、積極的に動き出している。トルコが仲介する、間接交渉を継続するばかりではなく、どうやら直接交渉に乗り出す、可能性が出てきている。
 仲介役のトルコ政府は、以前からイスラエルに対し(シリアに対しても)、当事者同士の直接交渉を提案していたが、イスラエル・シリア双方は、自国内の政治的な事情から、なかなか踏み出せないでいた、といういきさつがある。
 では何故、この段階に入ってオルメルト首相は、シリアとの直接交渉に乗り出そう、と考え始めたのであろうか。それは、イスラエル国内の不安定な状況の危険さに、気がついたからではないか。
 イスラエルは、ガザのハマース、レバノンのヘズブラ、シリア、イランとの敵対的な関係から、イスラエル国民の多くが、自国は何時、これらのいずれかの国よって、急襲されるか分からない、という不安が広がっているのだ。
 そうした不安な心理状態が長期化すると、不安に慣れるという場合もあるが,不安が高じていき、先制攻撃をすべきだという判断が、国民の間に広がり、ついには、政府も同様の判断を、下してしまう危険性がある。
 すでに、ガザのハマースへの対応については、国民の間に広がった不安と、そのことによる政府への不満が、閣僚の多くをして、ガザ侵攻、ハマース打倒の方向に、向かわせている。
 それに加え、イスラエルでは次期首相になるべくして、カデマ党の党首に選出されたはずの、ツビ・リブニ女史が首相になれずに、強硬派リクード党のネタニヤフ元首相が、首相の座に返り咲く、可能性が高まっている。これは、イスラエル国民のなかに広まる、不安が生み出した結果であろう。
 トルコはこうしたイスラエル国内の状況を理解し、それをシリアに根気強く説明し、和平に向けてリードしていくべきであろう。少なくとも、トルコにはイスラエルとシリアとの間に、戦争を起こさない最大限の努力を、払ってもらいたいものだ。
Posted by 佐々木 良昭 at 16:08 | この記事のURL
NO・1163不安の域を超えたガザとイスラエルの緊張関係 [2008年12月24日(Wed)]
 ガザのハマースとイスラエルとの緊張状態が、どうやら不安のレベルをはるかに超え、現実のものとなりつつあるのではないか。
 イスラエルでは、ガザのハマース体制を打倒すべきだと主張する、政府高官が増えてきている。
 これまでは、停戦がほぼ守られてきていたが、それでもガザからのミサイル攻撃は、断続的に続けられていた。そのミサイル攻撃だが、次第にミサイルの飛距離が伸び、イスラエルの南部都市に届くようになってきたことが、イスラエル側の不安を、大きくしてきたのであろう。
 加えて、人質になっているイスラエル兵の釈放が、いまだになされていないことも、ハマースに対する不審と、怒りが高まった原因と思われる。これまで、何度となく交渉が試みられたが、ハマース側はパレスチナ人の受刑者の、大量釈放をその交換条件としてきていたために、成立することがなかった。
 イスラエル側は、ハマース傘下の武闘派グループが、次第にミサイルばかりではなく、各種の武器を確保し、本格的な戦闘にも対応できる、レベルに達してきているとも、判断しているようだ。
 このため、ガザに本格的に侵攻し、ハマース体制を打倒すべきだという考え方が、ほぼイスラエル閣僚の間の、統一したした見解になっている。問題は、その侵攻のタイミングを何時にするか、だけではないだろうか。
 イスラエル側が、こうまでも緊張状態になってくると、ハマース憎しのマハムード・アッバース議長も、放置しておくわけには、行かなくなったのであろう。彼はロシアを訪問し、中東和平に関与してもらうよう依頼した。
 エジプトのムバーラク大統領も同様に、イスラエルの外相ツビ・リブニ女史を招き、何とか緊張状態を緩和したいと努力している。
 ガザにイスラエルが軍事侵攻し、ハマースと本格的な戦闘を展開することになれば、レバノンのヘズブラも呼応して、戦闘を開始する危険性は非常に高い。すでに、レバノン国内ではガザの住民に対する、連帯のデモが大規模に、展開されてもいるのだ。
 そうなれば、望むと望まずとにかかわらず、西岸地区のパレスチナ人も、戦闘を開始する危険性がある。そうなればシリアやエジプトも放置できなくなり、大規模な戦争に拡大する可能性が高い。
 イランもその場合には、何らかの行動を起こすだろう。そうなれば、アラブ諸国の多くが動き出し、第5次中東戦争に発展するかもしれない。その場合の危険性とリスクを、日本も覚悟しておく必要があろう。
Posted by 佐々木 良昭 at 00:57 | この記事のURL
NO・1162ロシアはイランにS−300ミサイルを供与するのか [2008年12月22日(Mon)]
 ロシア製のS−300ミサイルの、イランへの供与をめぐり、情報が交錯している。
イランはロシアがS−300を、既にイランに供与したと語り、すでに使用可能な状態になりつつある、という報道をしている。
 他方、イスラエルはロシアのS−300が、いまだにイランには送られていない、とイランの報道を否定している。当然と言えば当然であろう。
このS−300ミサイルが、イランによって配備されれば、イスラエルが想定している、イランに対する先制空爆攻撃が、非常に危険なものになるからだ。
 S−300ミサイルは、地対空型のミサイルであり、150キロ離れた目標を撃墜できる、性能を持っているということだ。当然のことながら、イスラエルはS−300ミサイルを、イランに供与しないよう、ロシアに対するロビー活動を続けてきていたが、イラン側の働きかけの方が、勝利したということであろう。
 ロシアがイスラエルのロビー活動を撥ねつけ、イランに対し今回、S−300ミサイルの供与に踏み切ったのは、経済的理由が第一にあり、第二には中東地域への再台頭、ということではないのか。ロシアはこのほかにも、対空防衛システムのTor−M1システムを、イランに供与している。
 また、ロシアは世界的に問題視され、アメリカとイスラエルが怒りを顕わにしている、核開発の最大の支援国でもある。
 ロシアは中東地域に対しいま、何を考えているのかを、真剣に分析する必要があるのではないか。
Posted by 佐々木 良昭 at 15:58 | この記事のURL
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