• もっと見る
« 2019年01月 | Main | 2019年03月»
NO:5385 2月8日『ポンペオ発言は失言か意図かトルコ分断』 [2019年02月08日(Fri)]
アメリカの国務長官という人は、おっちょこちょいなのか、あるいはとんでもない政治家なのか、判断が付け難い。彼の名はポンペオ氏、まさにアメリカのインテリを代表する、要職にある人物だ。

 彼の発言は世界最強最大の国家、アメリカを代表しているだけに、大きな影響力を、世界政治にもたらしている。その彼がどこでやったのかは知らないが、あるセミナーでとんでもないことを、口にしているのだ。正確に言えば、彼が語ったのではなく、彼が講演の中で示した地図が、大きな反響を呼んでいる。

 それはアメリカの盟友であり、NATOの有力なメンバーでもある、トルコの領土を分断することを、示すものであった。確かに、そのニュースに張り付いていた地図を見ると、トルコの領土は2つ、あるいは3つに分かれて、示されているのだ。

 西はボスポラス海峡を挟んで、少しアジア・サイドに食い込んでいる。アジア・サイドとはトルコのボスポラス海峡を挟んで、東側のアジアにつながる地域を指し、ボスポラス海峡の西側は、ヨーロッパ・サイドと呼ばれている。

 もう一つの国境線は、どうやらトルコとクルドの、国境を示しているようだ。だがこの地図では、クルドの地域が異常に狭く、描かれているような気がする。これは明確ではない、あるいは国境は描かれていないかも知れない。

 そもそも、トルコを分割するという考えは、以前からアメリカの中にはあった。特に軍関係者の中では『トルコを大国にしてはならない。』という考えがあり、何とか分断してしまいたい、という事のようだ。

 その時に描かれた地図が、今回のポンペオ国務長官の講演で、用いられたということであろうか。しかし、この講演会では何故、普通のトルコの地図が用いられずに、曰く因縁のある地図が、持ち出されたのか。そこにはしかるべき意図が、あるように思える。

 現在のアメリカトルコ関係は、お互いに必要としながらも、極めて複雑な関係にある。アメリカはシリアを自分のものにしたい、と考えているが、それはトルコも同じだ。アメリカ軍の巨大な基地がある、シリアのマンビジュをめぐり、両国は対立しているのだ。

 それ以外にも、アメリカとトルコが対立する要素は、幾らでもある。トルコのロシア兵器輸入も、その一つであろうし、イスラエルとトルコの関係も、しかりであろう。また、最近のアメリカのベネズエラ対応を、トルコが非難したこともその一つであろう。

 今の段階で結論めいたことを言うのは乱暴すぎようが、アメリカは将来的に、トルコという中東の大国を分断したい、と心の中では思っているのかもしれない。それが今回のポンペオ国務長官の講演で表に出たということであろう。
Posted by 佐々木 良昭 at 11:03 | この記事のURL
| 次へ