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NO4660 8月12日 『ヨルダンがイラクとの関係強化希望だが』 [2017年08月12日(Sat)]
ヨルダンのアイマン・サファデイ外相が、イラクのアバデイ首相と会議を持ち、そのなかで、ヨルダン・イラク両国のあらゆる面での、協力促進について話し合った。なかでも石油パイプ・ラインの再開問題は、最も重要なものであったようだ。

ヨルダンとイラクとの間には、バスラからアカバに通じる、ツイン・パイプ・ラインの完成が待たれている。このパイプ・ラインが完成すれば、イラクから石油やガスが、ヨルダンに安価で供給されるだけではなく、西側市場にも送られることになるのだ。

従って、パイプ・ラインの完成はイラクにとっても、ヨルダンにとっても緊急性を持つ、重要な課題ということになろう。なお、イラクがヨルダンに対して、特別安価で石油を供給していたのは、サダム体制の時代からのことだ。

ヨルダンとイラクとの間では、このことに加え、ヨルダン・イラク国境の開放も、話し合いのテーマに上っている。もし両国の国境が開放されれば、人の移動が自由になり、しかも物資の移動も容易になる。

ヨルダンは自国の製品だけではなく、他の国の製品も陸路で運ぶことになり、その事はヨルダンの経済を、大いに潤すことになる。イラクが平和な時代には、ヨルダンのアカバ港で陸揚げされた、外国からのあらゆる物資が、トラックでイラクに運ばれていたが、それはまさに数珠繋ぎの状態に、なっていたものだ。

この一見すばらしい、イラク・ヨルダンの協力促進にも、問題が無いわけではない。述べるまでも無く、いまはイラクで敗北した、多くのIS(ISIL)
の戦闘員が、外国への逃亡経路を、探している。

ヨルダンとイラクとの陸路が解放され、国境のゲートも開放されれば、難民などに身分をごまかしたIS(ISIL)
のメンバーが、ヨルダンに流れ込む危険があるからだ。彼らがヨルダンに入り込めば、幾らでも隠れ家はあろう。反政府思想を持つヨルダンのパレスチナ人の多くが、彼ら
IS(ISIL)の味方に、なってくれるからだ。

当然のことながら、それはヨルダン政府も予測していよう。従って、万全の治安対策が採られる、ということであろうが、そううまくはいかないのではないか。イスラエルでもトルコでも、治安維持のための壁が建設されたが、ヨルダンとイラクとの間でも、今後、治安維持のための壁の建設が、必要になるかもしれない。

経済的なメリットを優先させ、治安問題を放置すれば、やがてはヨルダンもシリアやイラクのような、内戦国家になる危険性がある、ということだ。ヨルダンのアメリカや
NATOとの軍事協力は、誰しもが知るところであるだけに、IS(ISIL)とすれば、ヨルダンは是非攻撃したい国の、一つであろう。
Posted by 佐々木 良昭 at 11:02 | この記事のURL
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