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NO4396 1月21日 『トルコがシリア対応で現実路線』 [2017年01月21日(Sat)]
*トルコのメフメト・シムセク副首相が、トルコのシリア対応について、現実的な意見を述べた。これはこれまでのトルコの、シリア対応から考えると、180度変化したことであろう。*

トルコ政府はいままで、シリアのアサド大統領体制を、何としてもつぶすという、強硬なものだった。この目的のために、トルコは膨大な資金と武器を、反シリア政府側の各組織に、提供し続けてきていた。*

シリアの反政府各組織の幹部たちは、トルコ政府のゲストとして、イスタンブールやアンカラに、贅沢な住宅を提供され、高額な生活費も支給されていた。まさに革命貴族気取りだったのだ。*

メフメト・シムセク副首相は、現実的に考えて、アサド大統領抜きのシリア問題解決は無い、と判断したと語ったのだ。トルコはシリア国民が直面する、困難と悲劇は存在するものの、プラグマテイックで現実的な対応をすべきだ、とダボス会議で語った。

他方、先週エルドアン大統領のスポークスマンは、『アサド大統領が存在する限り、シリア問題の解決は無い。』と語ったばかりだ。ただし、エルドアン大統領のスポークスマンは、シリアのアサド体制に対する対応は『ステップ・バイ・ステップだ』とも語っている。それはトルコがこれからは今までのような、性急で強硬なシリアへの対応手段は取らない、という意味であろう。

こうした変化が、トルコ政府内部に出てきているのには、幾つかの理由がある。

:第一に考えられることは、ロシア軍の全面支援で、シリア軍が相当優位に立ってきていることだ。その事は、シリア国内の軍事、政治状況を、大きく変化させている。

:カザフスタンのアスタナで、シリアをめぐる会議が開催されるが、そこではトルコはロシアと、協調姿勢を示さなければ、国際的に孤立してしまう。

:先月のアレッポの戦闘で、シリア軍が完全に反政府派を打倒した。

もっとうがった見方をすれば、シリアの内戦は終りが近いということだ。そのため、トルコは戦後の復興で、シリアに進出したいと考えており、アサド体制が存続する以上、アサド大統領との妥協の糸口を、つかんでおきたい、ということも考えられよう。それがトルコの本音なのかもしれない。
Posted by 佐々木 良昭 at 10:28 | この記事のURL
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