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NO4232『トルコのシリア侵攻は泥沼か』 [2016年08月27日(Sat)]
トルコ軍がシリアに越境攻撃を始めたが、これはユーフラテス川の東側に、クルドのミリシアを、追い出す作戦であり『ユーフラテスの盾作戦』と命名されている。

当初は空軍にカバーされた、450人規模のトルコ軍特殊部隊の、シリアへの越境攻撃であったが、専門家はトルコ軍のシリア攻撃には、最終的に15000人が増派されるだろう、と予測している。

戦車が送られ、空軍機が空爆を始め、自由シリア軍(FSA)が戦闘の前面に立っている、という構図のようだ。それをトルコの特殊部隊が、支援するという形なのであろう。

トルコ政府はこの作戦を、クルドはもとよりIS(ISIL)攻撃だ、としているが、メインはシリアのクルド・ミリシアであろう。ところがこのクルド・ミリシアとの戦いを、自由シリア軍(FSA)の戦闘員は、『クルド・ミリシアとの戦闘に参加したくない。』と言い出している。

それはシリアのクルド・ミリシアが、以前、シリア北部のコバネで、IS(ISIL)を撃退したことから、恐れをなしているのかもしれない。自由シリア軍(FSA)といえば聞こえはいいが、この自由シリア軍(FSA)が、いままで、まともな戦いをしたということは、聞いたことがない。トルコが丸抱えの、玩具の兵隊なのかもしれないのだ。

そうなると、結果的にトルコ軍が本腰を入れて、かからなければならない、ということになろう。そもそもこの作戦は、大分前からトルコとアメリカとの間で、話し合われてきていたようだ。情報によれば、この作戦に関する話し合いは、今年の6月から本格的に始まっていた、ということのようだ。

それがここまで遅れたのは、シリアへの軍事侵攻には、ロシア機撃墜後の露土関係の修復が、必要であったことに加え、7月にトルコでクーデターが起こったことにもよる、ということのようだ。

トルコ軍はシリアに越境攻撃を始め、ジャラブルスとそから、トルコ国境に点在する、村落を支配する計画のようであり、その結果として、70キロの国境地帯を制圧する予定だ、といわれている。

アメリカ政府はトルコ政府に対して、今回の作戦が始められたことを歓迎し、空軍支援を約束している。アメリカすればIS(ISIL)を打倒するためには、陸軍の投入が必要だが、自国軍は入れたくない、そこでトルコの陸軍を、引き出したということであろう。

アメリカやヨーロッパ諸国は、今回のトルコ軍によるシリア侵攻作戦が、長期化することを願っている、ということのようだ。つまり、それはトルコ軍が疲弊するということであり、莫大な戦費を要する、ということでもあろう。

ここに来て、トルコ政府はシリア作戦には、2年間の期間が必要だろう、と言い出している。つまり、簡単には終わらないという予測を、トルコ政府もしている、ということだ。

その2年間の戦争状態は、トルコの国内政治にどう影響するのか、トルコのPKKはこれを最高の攻撃機会と判断し、テロ攻撃を激化させるのではないのか。そうなればトルコは経済的破綻と、社会、政治的混乱の渦中に追いやられる、危険性が極めて高い、ということではないのか。
Posted by 佐々木 良昭 at 11:11 | この記事のURL
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