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NO4053『トルコはどのクルドと戦っているのか』 [2016年02月16日(Tue)]
トルコのエルドアン大統領は、クルド人との戦いを、宣言し続けている。彼は最後の一人を殺すまで、クルドとは妥協しない、といった激しい演説もしている。しかし、そのエルドアン大統領の言うクルド人とは、誰のことを指しているのであろうか。

大げさに言えば、トルコの国民人口の25パーセント、少なく見ても15
パーセントはクルド人であろう。彼らもまた、エルドアン大統領の抹殺の、対象ということであろうか。そうであるとすれば、エルドアン大統領の言うクルドの抹殺は、トルコ国家そのものの抹殺、ということになってしまおう。

今、エルドアン大統領が対応しているクルドには、大まかに分けて3つのグループがある。そして、国民の一部をなしているクルド人だ。

:第一のグループは、トルコが1984年以来戦い続けてきた、PKK
(クルド労働党)であり、その組織のリーダーであるアブドッラー・オジャランは、現在トルコのイムラル島にある、刑務所に収監されている。これまでエルドアン大統領側は、
PKK側と和平交渉をしてきたが、うまくいっていない。



:シリア・クルド(PYD)この組織はシリアで誕生した、シリアからのクルドの分離独立を、目指す組織であり、IS(ISIL
)とコバネで展開した戦闘では、大勝利したことで国際的に有名になった。

トルコとの関係はまさに敵対関係であり、現在もトルコ政府はPYDを、PKKの連携組織として、敵視し攻撃を加えている。この組織の下には、YPG
という武力闘争組織が存在する。



:イラク・クルド自治政府は、イラク北部を自治領として、自治政府を運営している。その自治政府のリーダーはバルザーニ議長であり、彼の家はこれまで、長い間クルドの分離独立を目指して戦ってきている。サダム・フセイン時代には大弾圧を受け、化学兵器で多数が殺害されてもいる。

サダム体制が打倒された後も、イラク中央政府との間では、石油利権をめぐる対立があり、問題を抱えたままだ。これに対して、トルコがクルド支援に回っており、トルコとクルド自治政府との関係は良好だ。

つまり、エルドアン大統領が、相手にしなければならないクルドの組織は、大まかに言って3組織であり、そのうちの2
組織は敵対関係にある。残りのイラク・クルド自治政府についても、関係は石油がらみであり、どうでも変わる不安定な関係であり、危険性があるということだ。
Posted by 佐々木 良昭 at 11:59 | この記事のURL
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