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NO3937『エルドアン大統領難民流入阻止は金次第』 [2015年10月07日(Wed)]
最近、トルコのエルドアン大統領がベルギーの、ブリュッセルを訪問した。この訪問はエルドアン大統領が、熱望していたものだったようだ。ヨーロッパとトルコの間には、いまだにオスマン帝国時代の暗い影が存在し、トルコ人のヨーロッパ入国には、ビザがいるのだ。

今回のエルドアン大統領の、ベルギー訪問目的には、当然このビザ問題があった。何とかビザなし渡航ができるように、したかったのだ。しかも、この時期は11月1
日に控えている選挙もあり、もしビザなし渡航が可能になれば、与党AKPは有利な選挙戦を、展開することができよう。

いま一つのエルドアン大統領のベルギー訪問目的は、シリアとイラクの難民問題交渉だった。まさにこの問題は交渉であり、トルコがどれだけの金を、EU
から取るかということだった。

エルドアン大統領は難民が100
万人単位で、ヨーロッパに押しかけて来るがどうするのだ、とある意味で恫喝したのだ。そして、難民問題を解決したければ、私の提案を受け入れて、実行しろということだった。

エルドアン大統領の解決策とは『シリア反政府派への支援』『安全地帯の設立』『飛行禁止空域の設定』だった。実はそのいずれもトルコにとって、有利な内容であり、シリア問題や難民問題のことを、考慮したものではないのだ。

エルドアン大統領はEU側に対し、露骨に資金提供を迫っている。彼に言わせれば『これまでトルコが支出した難民対策費用は、70億ドルに達している。EU
がもし難民の流入を阻止したければ、トルコに何十億ユーロ出すべきだ。』とういうものだった。

もちろん、EU
側はエルドアン大統領の要求に対して、即答はしていない。たとえ資金を出したとしても、その金が難民対策に使われるという保証は、どこにもないからだ。汚職にまみれた今のトルコ政府幹部の間で、この
EUの難民対策資金は、山分けされる可能性が高いからだ。

だからといって、EU
はトルコ側の要求に、全く答えないというわけにもいくまい。エルドアン大統領が恫喝しているように、ヨーロッパ諸国にはこの先、百万人単位の難民が、押し寄せて来ることは確実だからだ。

なかでも、ドイツはそのほとんどを抱えることになり、資金的にも社会治安上も、大きな問題となって行こう。そうでなくとも、ヨーロッパ諸国では民族主義が台頭してきている。難民と自国民との間に緊張状態が発生し、戦闘が起こることも、予期しなければなるまい。また
IS(ISIL)のメンバーが難民の中に潜り込み、テロを起こすことも考慮しなければなるまい。頭痛のEUということだ。
Posted by 佐々木 良昭 at 13:25 | この記事のURL
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