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NO3710  『AKP 選挙敗北とギュル待望論』 [2015年06月12日(Fri)]
トルコで6月7日に行われた選挙では、与党AKPが敗北する、という結果が出た。これは意外というよりも、トルコ国民の多くがその結果を期待していたし、その期待通りになった、ということであろう.

与党AKPは選挙で敗北し、過半数を割ることになり、権力維持は不可能となった、ということだ。政府内にとどまろうとするには、野党との連立が必要なのだが、CHPともHDPとも、その可能性はほとんど期待できまい。

残るMHPもたとうが、野党各党がエルドアン大統領拒否であるために、連立を組むことは困難なのかもしれない。その結果、いま与党AKP内部では、選挙結果に対する責任の、なすりあいが行われている。エルドアン大統領はダウトール首相に、その責任があると言い、ダウトール首相もエルドアン大統領に、敗北の責任がある、と言い出している。

そうしたなかで、涼しい顔をしているのは、与党AKPを追われた、前大統領のギュル氏だ。彼はAKPの設立メンバーであったが、エルドアン大統領が権力を独占するために、彼を党から追い出したのだ。

しかし、AKP内部では今回の選挙結果が出た後、エルドアン大統領に対する反発と正反対に、ギュル氏に対する評価が高まっている。AKP内部ではダウトール首相を外して、ギュル氏を首相にすべきだ、という意見が出ているが、それはギュル氏が望むまい。

ギュル氏自身は沈黙を守っているが、彼の妻ハユルンニサ女史が『これから本当のインテファ−ダ(大衆の蜂起)が始まる。』と語った。つまり、エルドアン体制に対する反発が、これから展開される、という明確な挑戦状だ。

エルドアン大統領とダウトール首相との関係は、冷め切っているなか、ギュル氏がこれからどのような作戦を、実行し始めるのか興味深い。ギュル氏は長年、エルドアン大統領と政治を共にしてきているだけに、エルドアン大統領の強みも弱みも、熟知していよう。

ギュル氏は選挙後に、早急に連立内閣を作れ、と言っているが、それは野党間での連立を、意味していよう。もし、それでもたついていると、エルドアン大統領がどのような汚い手を使うか、ギュル氏はよく知っている、と言いたかったのではないか。

もちろん、いまだにAKP内部でも65パーセント以上の、支持者を抱えているギュル氏が、新党を結成しAKPつぶしに動く、可能性もあろう。その時には、いまエルドアン大統領と関係が悪化している、ブレント・アルンチ副首相(彼もAKP設立時からの幹部)、ダウトール首相、アリ・ババジャン副首相(財務担当)といった著名な党幹部も、ギュル氏のもとに、はせ参じるものと思われる。
Posted by 佐々木 良昭 at 16:31 | この記事のURL
NO3709  中東の重要なニュース短信』 [2015年06月12日(Fri)]
その日によって重要と思われるニュースが、幾つも届く場合がある。それをいちいち解説していたのでは何本ものブログを発信することになる。それで重要と思われるものをお伝えし、短くコメントすることにした。


:トルコがシリア難民の入国を規制。

シリア北部ではクルド・ミリシアと、IS(ISIL)との間で激しい戦闘が、繰り返されている。そのため多くのシリア難民が、トルコに避難してきている。

これまでトルコ政府は、無制限にシリア難民を、受け入れてきていたが、シリア難民の流入で問題が起きてきているために、今回は入国を制限することに、なったようだ。シリア難民による、安い賃金での就労は、トルコ人の仕事を奪っている。

シリア難民が無許可で開店する店舗は、税金を納めていないために、トルコの商店主たちとの間に、不満が高まっている。シリア難民の流入は彼らの、路上でのひったくりや物乞いが、観光産業にダメージを与えている、というようなものだ。

それ以外にもシリアの若者とトルコの若者との間の暴力事件も起きているがその場合トルコの警察はシリア人に甘い対応をしている。当然そのことは、トルコ人の間に不満を募らせ、シリア難民嫌悪の感情が高まっている。

トルコ政府はシリア難民の受け入れについて、今後も人道的な理由がある場合には受け入れると語っている。つまり、けが人や病人は、受け入れるということであろう。



:バハレーンをめぐる湾岸外相会議開催。

サウジアラビアの首都リヤド市で、バハレーンの治安をめぐる、会議が開催された。議長は、カタールの外相ハーリド・アテイヤ氏が務めた。

バハレーンの国内状況が、相当悪化してきているからであろうが、会議ではリビアやイラクシリアについても、討議がなされたようだ。

バハレーンはサウジアラビアの、出島のような立場にあるだけに、サウジアラビアにとっては、バハレーンの治安の悪化は、国内問題同様に、関心が高いのであろう。加えて、サウジアラビアの治安も悪化しており、バハレーンの治安悪化と結びつくと、危険度は一層高まろう。



:エジプトの経済状態にBランクが与えられる

フィッチはエジプトの経済状態を分析し、Bランクを与えた。

エジプトは初めてドル建てのボンドを、15億ドル発行することになったが、それを支える効果が、あるかもしれない。

このボンドは5年償還で、6パーセントの金利となっている。



:CHP元党首が議会で汚職調査できると語る。

トルコの野党CHOの元党首は、最近エルドアン大統領と対談しているが、その時のテーマは、連立内閣問題であったようだ。

しかし、エルドアン大統領の態度が悪かったのか、この対談の後で、2013年に露見したエルドアン大統領と、4人の閣僚と子息たちの関わった、汚職問題の追及は議会でもできる、と言い出している。

これでは与党AKPと野党CHPの、連立は成立しないだろう。もう一つの野党、クルドのHDPも、AKPとは連立しない、と明言している。
Posted by 佐々木 良昭 at 12:49 | この記事のURL
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