• もっと見る
« 2015年05月 | Main | 2015年07月»
中東佐々木 [2015年06月05日(Fri)]
NO3701 6月6日 中東TODAY



『IS(ISIL)はどうサウジアラビアを手中におさめるのか』

だいぶ前から、IS(ISIL)
はサウジアラビアをターゲットにしている、と宣言してきている。世界で一番大きな産油国を手中に収めれば、あるいは彼らの唱える、イスラム国家の樹立も夢ではあるまい。

既に、IS(ISIL)はサウジアラビアでの破壊工作を始めており、2014年11月には銃撃テロがあり、先月は2
度もシーア派のモスクが爆弾テロに会い、多数の犠牲者を出している。こうなると、サウジアラビア政府も本腰を、入れないわけにはいかなくなった。

サウジアラビア政府が新たな対応をとった最初のものは、爆弾テロによる犠牲者や現場の様子を、テレビで公開しテロがいかに残酷で野蛮なものなのかを、国民に知らせることだった。人の身体がバラバラになり、床が血で染まっている光景は、サウジアラビア国民に、相当なショックを与えたことであろう。

この犠牲現場の光景を公開するという方法は、あるいはIS(ISIL)
が手掛けてきた、斬首などによる、ショック作戦の効果を、半減するかもしれない。そして、サウジアラビア国民のIS(ISIL)
に対する憎しみを、あおる効果があるかもしれない。

IS(ISIL)
側はサウジアラビアの、マイノリテイであるシーア派国民と、マジョリテイのスンニー派国民との間の亀裂を大きくし、スンニー派対シーア派国民の武力衝突を生み出したい、と考えているのではないか。

そうなれば、スンニー派側につくことによって、サウジアラビア国民の間から、新たなIS(ISIL)メンバーを集めることが、出来るかもしれない。
IS(ISIL)はサウジアラビアがワハビー派の国家であり、IS(ISIL)の思想と近いことから、容易にメンバーを集められる、と思っているのかもしれない。

しかし、そう物事は簡単ではないかもしれない。無差別に斬首するIS)ISIL)
の残虐な手法は、サウジアラビアで斬首刑がまかり通っているとはいえ、内容が全く違うこと(犯罪者の処刑)から、支持を集めることはできまい。

そして、シリアやイラクの場合とは異なり、サウジアラビアのスンニー派とシーア派の構成割合は、シーア派に甘い点数をつけてもスンニー派が8割、シーア派が2割(
実際のシーア派国民の割合は1割から1割5分程度といわれている)ではないのか。

そうした社会のなかでは、IS(ISIL)
がスンニー派を支援するといっても、受け入れられないのではないのか。加えて、サウジアラビアの国民は、ワハビー派の我々こそが、正統なイスラムだと思っていようから、
IS(ISIL)のリ−ダーであるアブーバクル・バグダーデイが唱えるカリフ制と聞いても、感動することはあるまい。

IS(ISIL)
側にとって唯一の優位な点は、最新の機器を使う戦法だ、インターネットやユーチューブ、ツイッターを使った宣伝戦、政府の治安機関などに対するハッキング、新型兵器や武器の使用、それを、外人戦闘員を使ってやるということであろう。

ただ、サウジアラビアが世界経済に与える影響が、大きな国であることから、シリアやイラクとは異なり、欧米が本格的に支援に乗り出す可能性が、高いことも忘れてはなるまい。かつては、アルカーイダもサウジアラビアを、支配しようとしていたそうだが、それは失敗に終わっている。
IS(ISIL)のアルカーイダに勝る知恵が、あるのだろうか。
Posted by 佐々木 良昭 at 15:15 | この記事のURL
NO3700 『OPECはどう動くか・石油価格の今後は』 [2015年06月05日(Fri)]
連日石油の話になるが、日本の円が120
円の後半のレベルになって来ると、石油価格がどう動くかということが、非常に大きな問題になって来よう。一時期のような、70
円台ならば石油価格が少しぐらい上昇しても、日本の経済にはあまり影響を与えなかったが、今は違うのではないか。

石油価格が安値を続けているのは、サウジアラビアが市場を押さえたいことと、アメリカのシェール・オイル生産によるのだが、そればかりではないのではないか、と思えてならない。

6月にはOPEC会議が予定されているが、そこでは産油諸国の台所事情が露骨に顔を出すのではないか。つまり、資金的に窮地に追い込まれてきている国と、余裕のある国との対立が、鮮明化するだろうということだ。


余裕のある国は、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウエイト、カタールなどであり、これらの国は資金を貯め込んできてもいる関係と、生産原価が10ドル/
バーレル台ということもあり、あわてる必要がないのだ。

他方、ベネズエラ、イラク、イラン、リビア、アルジェリア、ナイジェリア、アンゴラ、エクアドール、などは財政がひっ迫しており、少しでも石油価格を、引き上げたいと考えている。
OPECメンバーではないが、ロシアもしかりであろう。

そのロシアだが、サウジアラビアはロシアが生産を押さえ、サウジアラビアの市場を奪わないのであれば、自国も生産を抑えて、価格を引き上げることに反対しない、ということを言い出している。

石油の価格がOPEC諸国の合意で、生産削減されて上がれば、加盟国は喜ぶのだろうが、その上げ幅が難しいだろう。サウジアラビアの戦略で、40
ドル台に値上がりした石油価格を、60
ドル台で抑えられれば、オイル・シェールの採算価格以下であり、大成功ということになろうが、なかなかそうはいかないのではないか。

オイル・シェールの採算価格は、場所により異なるようだが、大体60ドル台から80ドル台のようだ。多分、70ドル以上がほとんどであろうから、60
ドル台を維持できれば、OPECが勝てるということだ。

しかし、値段は投機筋の介入もあるわけだから、異常に高くなって、そのあと異常に価格を下げるということもあろう。石油価格はすでに、生産国の手を離れているのだから、
OPECの影響力は限られているのではないか。それにしても、今後一波乱ありそうだということだけは、確かなようだ。
Posted by 佐々木 良昭 at 12:21 | この記事のURL
| 次へ