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NO3645『第二スエズ運河の効用』 [2015年03月06日(Fri)]
シーシ大統領の決定した、第二スエズ運河の建設は、着々と進んでいるようだ。この運河はシーシ大統領が、エジプト国民に送った、夢のプロジェクトであろう。いまどきの国家元首は、洋の東西を問わず、なかなか国民に夢を与えるような、大計画を提案できないでいる。その意味で、シーシ大統領の偉大さが分かろう。

この第二スエズ運河の建設に当たっては、当初5年あるいは3年で完成、といわれていたのだが、シーシ大統領の意向で、1
年間で仕上げることになった。第二スエズ運河ボンドは小額で売り出され、国民の誰もが買えるようになっていた。その利率は年12パーセントと、極めていいものだ。

第二スエズ運河は35キロの長さであり、既存の運河の幅が狭いところだけを、二本にするというものだ。残りの幅の広い部分については、岸の淵を深く掘り下げることにより、船舶の通過が楽になるように計画されている。


スエズ運河からの収入は、これまでエジプトにとって、最大の外貨獲得源であり、2014年には55億ドルが収入総額となっている。それが第二運河の完成後、毎日
97隻の船舶が通過し、運河通過料収入は132億ドルに達する、と予測されている。

そこで問題なのは、今後、石油価格がどのレベルで、推移するかということだ。述べるまでもなく、石油価格の低迷が続けば、スエズ運河を通過しなくとも、喜望峰経由で十分採算が取れることになるからだ。その場合は、スエズ運河の通過料を安くして、対応しなければならなくなることが予測される。

船会社や製造会社は、そのことを考慮して、運河経由を選ぶか、喜望峰回りを選ぶか、船舶の航路を決めることになろう。石油価格が高騰すれば、当然スエズ運河にとっては、追い風となろうということだ。

2014年の実績から見ると、スエズ運河経由のコンテナの数は、前年との比較では、5・5パーセント増加している。それが3倍から5
倍程度まで増えるのではないか、と見られている。

デンマークにある海運大手のマエルスク社は、第二スエズ運河プロジェクト計画を、賞賛している。同社に言わせると、第二スエズ運河プロジェクトは世界の貿易取引を増大させる、歴史的な価値を有するものだということだ。

確かにスエズ運河プロジェクトの完成により、マエルスク社が唱えるように、世界貿易が拡大することを願うし、エジプトの経済にとって、大きなインパクトとなることを信じたい。
Posted by 佐々木 良昭 at 13:14 | この記事のURL
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