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NO3280 『危ない橋を渡るイスラエルのパレスチナ対応』 [2014年09月12日(Fri)]
イスラエル政府と軍は、大分神経がまいっているのではないか、と思えてならない。どうもイスラエル政府や軍の行動が、計算づくではなく感情に流されているような、気がするからだ。

つい最近までガザを攻撃し、2000
人以上のパレスチナ人を殺害し、ガザの街を廃墟に変えたことにより、世界中から嫌われ敵視されているにもかかわらず、その攻撃の矛先を、今度はヨルダン川西岸地区に向けているからだ。毎日のようにヨルダン川西岸地区ではイスラエル軍
(IDF)による住民逮捕が続いている。

当然のこととして、これにパレスチナ人は抵抗し、投石やモロトフを使った反撃が行われている。その結果、IDF
側にも負傷者が出ているようだが、負傷者の数はパレスチナ人の方が、多いのは当り前であろう。

そうした中で、9月10日の水曜日に、エッサ・カトリという名の22歳の青年が、IDF
のよって銃殺された。そのことは、ヨルダン川西岸地区住民の間に、に怒りを拡大させている。


ハマースはガザ地区からの攻撃だけではなく、ヨルダン川西岸の住民からも、イスラエルに対する攻撃が起こることを期待している。そのためには、ヨルダン川西岸地区に住むハマースのメンバーに、
IDFに対して挑発するよう働きかけているだろう。

今回殺害されたエッサ・カトリ青年も、あるいはハマースのメンバーだったかもしれない。IDF側の説明によれば、彼は爆発物をIDF
側に対して、投げようとしていたということだが、真偽のほどはわからない。


イスラエル政府に声を大にして言いたいのは、感情的になるなということだ。特に今の時期は、ヨルダン川西岸地区の住民もガザ地区の住民も、相当に感情的になっていよう。したがって、ちょっとした事でイスラエルに対する武力闘争が、ガザ地区とヨルダン川地区から始まる、危険性があるのではないのか。


イスラエルには悪いが、その結果、出るであろう大量のパレスチナ側の、死傷者に対する同情は、世界中から集まり、イスラエルとユダヤ人のイメージは、世界中でますます悪くなってしまおう。

それはこれまで、イスラエルに対して好意的だった(?)
、ヨーロッパ諸国やアメリカについても、言えるのではないか。例外的に、親イスラエルの人たちの心が変わらないのは、日本ぐらいかもしれない。それはイスラエル・パレスチナ問題に対する正確な情報を、彼等は持っていないからではないか。

軍事的な勝利は必ずしも、最終的な勝利にはつながらないということは、今回のガザ戦争でイスラエル政府も、分かっているはずだ。30
パーセントのイスラエル国民が『困難国にはもう住みたくない』と言い出しているのだから。
Posted by 佐々木 良昭 at 12:35 | この記事のURL
NO3279 『時間はテロリストを英雄に味方を敵にする』 [2014年09月12日(Fri)]
時間の経過とは、魔法使いのようなものだ、と中東を見ていると、つくづく思うことがある。いままでテロリストと呼ばれていた人物が、英雄になったり、国家を代表する人物になったりするし、その逆もある。

しかも、それが一人の人物に対しての評価でも、時間の経過によってころころ、変わってしまうのだ。例えばビンラーデンは、アフガニスタンにソ連軍が駐留している頃は、まさに西側から見た英雄であり、彼の活躍をアメリカもサウジアラビアも賞賛していた。

しかし、しばらく経つとビンラーデンは、極悪非道のテロリストの頭目として評価され、まさに世界的なお尋ね者に成り下がっている。似たような人物は何人も中東世界にはいるのだ。

リビアのカダフィ大佐もそうであろうし、イラクのサッダーム・フセイン大統領もそうであろう。イエメンのアリー・サーレハ大統領もエジプトのムバーラク大統領もその一人であろう。一時期彼らはみな高い評価を、西側諸国から受けていたのだ。彼らは最終的には、犯罪者、独裁者といったレッテルを、西側諸国と国民から張られ、不運な最後を迎えている。

いま、かつてはアルカーイダのメンバーとして逮捕され、イギリスの刑務所に投獄されていた人物が、リビアを代表する立場でアルジェリアを訪問し、アルジェリア政府は正式な客として受け入れている。

彼の名はベルハッジで、リビアで起こった反カダフィ革命の、初期の段階に活躍した人物だ。そのベルハッジの活躍を欧米は賞賛してすらいた。一体、欧米の中東の人物に対する評価は、どうなっているのかと首をかしげたものだ。

現段階ではISIL
に対する評価が、そうなのではないか。シリアの反アサド大統領の動きは歓迎され、イラクのマリキー政権つぶしの段階では、残虐な手法を取っていたにもかかわらず、一定の評価がなされていた。

しかし、いまとなっては完全に、西側の敵に回ったようだ。いままでスポンサーになっていたという、サウジアラビアのISIL
に対する評価は、極めて厳しいものになっているし、支援を送っていたといわれる、イスラエルもいまでは『ISILはイスラエルを襲うだろう』と言い出している。

こうして考えてみると、いまの極悪人は明日になれば、正義の味方になっているかもしれないし、その逆もあるということだ。まさにアラビアン・ナイトのような世界ではないか。ただそのなかでは多くの大衆が犠牲になっているということだけは、忘れてはなるまい。
Posted by 佐々木 良昭 at 00:28 | この記事のURL
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