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No.3222『エジプト苦渋の選択はどうなるのか』 [2014年07月13日(Sun)]
イスラエルによる、ガザ地区への攻撃が続いている。既にパレスチナ側の死者は150人を超え、170
人台に達している、と伝えられている。そうしたなかで、ガザからエジプトに抜けるラファ・ゲートなどを通じて、重傷を負ったガザの住民が、エジプト側に搬出され、治療を受けている。

しかし、死者の数から推測して、負傷者の数は何百どころか、1000
人を越えているものと思われる。そうした負傷者の惨状と、死者の数が伝えられるとき、どうしてもエジプトン国民は、感情的になってしまう。

エジプトでは各団体や政党から、ガザからシナイに侵攻して行われていた、エジプト軍や警察に対する攻撃を忘れ、『ガザのパレスチナ人を救え。』という声が上がっている。

その声はだんだん強くなり『エジプトは永久にガザとの国境を開放すべきだ』と叫ぶ声が、政党などから出始めている。そんなことになれば、エジプトには少なからぬ、危険な動きが出てこよう。

第一には、イスラエルの攻撃が継続し、ガザからのパレスチナ人の負傷者が運び込まれる数が増えていき、死者も増えていけば、エジプトの国民はエジプト軍事に対して、パレスチナの側に立って、イスラエルとの戦争を始めろ、と言い出すだろう。

エジプトで新大統領となった、シーシ氏にしてみれば、現段階でのイスラエルとの戦争は、とんでもない話であり、エジプトの治安回復と、エジプトの経済悪化をどう救うかということで、頭の中がいっぱいであろう。しかし、エジプト国民の『戦争始めろコール』が大きくなっていった場合、その声を無視することは、シーシ体制の基盤を揺るがすことになりかねない。

エジプトの政党などが訴えるように、ガザとの国境を永久に開放などしようものなら、確実にエジプトも、他のアラブ諸国と同じように、イスラム原理主義組織が侵入し、内戦状態に陥ってしまおう。

シーシ大統領は現状をどう判断しているのであろうか。そしてどのような手を打つのであろうか。
まさにハムレットの心境であろう。アラブ民族の血が燃え上がれば、アラブ人はブレーキが効かなくなることは、アラブ人の一人であるシーシ大統領も、十分わきまえていよう。

今はエジプトはまさに『心を鬼にして』食糧や医薬品のガザへの支援と、負傷者の受け入れと、彼らに対する治療に限定すべきであろう。アラブの主柱であるエジプトが混乱に陥れば、アラブの未来は無くなってしまうのだから。
Posted by 佐々木 良昭 at 23:51 | この記事のURL
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