• もっと見る
« 2013年04月 | Main | 2013年06月»
NO・2848 『短信二本・イラン・ヨルダン』 [2013年05月21日(Tue)]
:イラン
やはり予測していた通り、今回のイラン大統領選挙への、ラフサンジャニ師の立候補は、ハメネイ氏にとって極めて危険な、兆候だったようだ。
ラフサンジャニ師が立候補すれば、当選の確率が低くないからだ。世俗派や改革派の国民、そしてバザール商人たちの支持が、圧倒的に彼に集まる、可能性があるからだ。
改革派や世俗派の国民からすれば、ラフサンジャニ師はイスラム法学者ではあるが、柔軟な思想の持ち主であり、受け入れやすい人物だ。バザール商人にしてみれば、今のような硬直した外交が、ラフサンジャニ大統領の誕生により、改善される期待を同師に対しては持てる。そうなると、これらの国民の票は、ラフサンジャニ師に流れる確率が高い、ということになる。
ハメネイ師側は、法学者協会のスポークスマンである、アッバース・カドウダエイ氏の口を通じて、ラフサンジャニ師の立候補に、クレームをつけている。同氏は名指しこそしなかったが『高齢者には長時間の激務に耐える体力がないので、大統領に立候補するべきではない』と語っている。
結果的に、選挙委員会はラフサンジャニ師を、適格者リストから外すのか否か、そこにイラン国民はいま、注目しているのではないか。

:ヨルダンの経済評価下がる
世界の企業や国家を経済的に判断して評価する、スタンダード&プアーズ社はヨルダンを、BBからBB―に1ランク下げたことを発表した。
その根拠は、ヨルダンに対する外国からの援助が、減少していることを挙げている。ヨルダンは外国、なかでも湾岸諸国からの援助を受けているが、その援助総額のヨルダンのGDPに対する割合が、2011年には5・9パーセントであったものが、2012年には1・5パーセントに下落しているからだ。
ヨルダンの経済状況が悪化していくと思われるのは、石油価格が高騰を続けていることに加え、安価で供給されていたシナイ半島産出のエジプトのガスが、パイプ・ラインの爆破テロなどで、スムーズに流入して来なくなっているからだ。
こうした状況では、ヨルダンデナールの下落、それに伴う物価の上昇、国民の生活苦、そして最も懸念される社会不安が、顕在化していくのではないか。
Posted by 佐々木 良昭 at 13:54 | この記事のURL
NO・2847『リビアのカダフィ体制打倒は米英の策略だった』 [2013年05月21日(Tue)]
事情通の間ではよく知られたことなのだが『リビアのカダフィ体制が打倒されたのは、アメリカとイギリスの介入によってであった。』と明言する専門家が増えてきている。
それだけリビアの場合は、アメリカとイギリスの介入が、明白であったということであろう。加えて、その後のリビアの状況が、あまりにも酷過ぎるからでもあろう。
アメリカやイギリスが行った、リビア革命時の空爆回数は、9600回にも及んでいたのだ。
カダフィ大佐が青年によって、銃殺された後のリビアは、カオス状態であり、政府は何も実行できていない。街中には銃を担いだ若者たちが跋扈し、軍や警察に就職させろ、と息巻いている。
リビアを二分、あるいは三分する考えを持っている人たちもおり、ベンガジは全くトリポリの意向を、受け付けない状態だ。トリポリタニア(リビア西部)とキレナイカ(リビア東部)、そしてフェッザーン地方(リビア南部)に分割するというのだ。
革命後のリビアは民主化どころか、日々の生活に不安が付きまとう状態のようだ。トリポリやベンガジなど大都市では、時折爆弾テロが起こってもいる。こうした状態に嫌気をさした若者の一部は、映画館にこもったきりになっている、という報告もあった。
そもそも、アメリカやイギリスは何故リビアに介入し、カダフィ体制を倒したのであろうか、という基本的な疑問に対する答えは『石油』の一語に尽きそうだ。
そのために一国を破壊し、その国の国家元首を殺し、その後の混沌のなかで、多くの国民を犠牲にするということだ。リビアの混乱は今後も、当分の間続くのではないか。それは他のアラブの春革命が起こった国も、同様に混乱が続くことになろう。
石油とは多数の人の血を吸ってでも、手に入れるべきものなのであろうか。石油に代わるエネルギーの話が持ち上がっても、なかなかそれが具体化しないのは、石油によって膨大な利益を、手にする人たちがいることと、他のエネルギーに比べ、石油が一番効率の良い、エネルギーだからかもしれない。
石油の時代が終わった、オイルシェール、シェールガス、太陽エネルギーと騒がれているが、それは現実の話ではないのではないか。
原発も石油に次ぐ、便利なエネルギーなのかもしれない。いったん建設してしまえば、原発は長期にわたって利用が可能だ。しかし、その後の処理は、必ずしも簡単ではないし、もし事故が起これば、極めて危険な結果となる。
石油を抑えるために起こす戦争や紛争、革命によって多くの人たちが血を流すわけだが、原発も同じような対価を人類に要求しているのかもしれない。
Posted by 佐々木 良昭 at 12:51 | この記事のURL
| 次へ