• もっと見る
« 2012年12月 | Main | 2013年02月»
NO・2433『クルド自治政府の強気な石油政策とトルコの対応』 [2013年01月10日(Thu)]
 クルド自治政府反統治する地域に隣接するキルクークは、イラクのなかにあって、最も有望な産油地帯だと言われている。それだけに、サダム体制下ではクルド人を追い出し、イラク・アラブ人を移住させるということが、行われてきた。
 しかし、サダム体制が打倒されると、アメリカのバック・アップを受けるクルド自治政府は、このキルクークを自分たちの父祖の地だと言い始めた。サダム時代とは逆に、イラク・アラブ人を追放し、クルド人を移住させている。
 これまでキルクークで産出される石油の輸出や、新たな開発については、イラク政府が優先権を持っていた。それはトルコに送り出すパイプ・ラインの所有権が、イラク政府にあるからということもあろう。
 イラク政府はクルド自治政府に対して、イラク政府の許可なく石油を輸出することや、外国企業との間に新たな石油開発を進めることを、禁じてきていた。しかし、次第にクルド自治政府は力を付け、強硬な立場に変わりつつある。
 クルド自治政府が新たに始めた石油輸出は、トルコの財閥メフメト・エミン氏が所有するジェネル社との契約だが、この契約ではパイプ・ラインを使わずに、タンクローリー車で原油をキルクークから、トルコのメルシン港まで運ぶという方法だ。
 ジェネル社はトルコ国内に持ち込んだ原油と交換に、精製油をクルド自治区に戻すという方式のようだ。この流れに合わせ、クルド自治政府はタクタクオイル・フィールドの自主開発も進める方針のようだ。それもトルコのジェネル社との間で進められるようだ。
 現段階ではクルド自治政府が、タンクローリー車を使ってトルコに輸出している原油量は、15000トン・日程度のようだが、将来は増量されるであろう。そうなると、イラク政府との緊張関係が、高まるということであろう。
 このクルド実政府とイラク政府との権益争いを巡る動きを、シェブロン社、エクソン社などが、注意深く見守っているという構図だ。
 クルド自治政府がこうも強気で出てきているのは、述べるまでもなく、トルコ政府との密約があっての話であろう。とてもクルド自治政府だけでは、イラクの正規軍と対峙することは不可能であろう。そして、それはPKK(クルド労働党)問題)解決と繋がっているのではないか。
 トルコ側からはPKK問題の解決に、明るい兆しが見えたという報道がもっぱらだし、ヨーロッパ議会からは現在の動きを歓迎する、とのコメントが出されている。
Posted by 佐々木 良昭 at 16:12 | この記事のURL
NO・2432『イスラエルの不安とアメリカの冷遇』 [2013年01月10日(Thu)]
 最近、アメリカとイスラエルの関係が、だんだん弱まっているような感じがする。これまではアメリカの中東政策上、イスラエルは最も重要なパートナーであり、イスラエルはアメリカの中東における、前線基地のような役割を担っていたのではないかと思う。
 それだけに、イスラエルの言う無茶が国連の場でも、アメリカによって支えられてきた。イスラエルのためにアメリカは何度となく、拒否権を発動してきている。
 ところが、オバマ政権が第二期に入って以来、アメリカのイスラエルに対する対応が、冷たいものになってきているようだ。今回決まった国防長官のヘーゲル氏の起用や、国務長官起用が内定したケリー氏らは、いずれもイスラエルに対しては、ニュートラルな立場であり、是々非々で対応するのではないか、と思われている。
 そうした憶測が流れているなかで、アメリカの下院外交委員会のランド・ポール議員(現実主義者のロン・ポール氏の子息))がイスラエルを訪問し、厳しい内容の発言を行っている。
彼がイスラエルの記者団を前に語ったのは、、。
『アメリカが外国から金を借りてその金で外国を支えるというのはおかしい。』『アメリカとイスラエルはお互いにメリットがなければならない。』
『アメリカの援助だけではなく、イスラエルは金を払って兵器を購入すべきだ。』といった内容の発言をしたというのだ。
 確かにそうであろう。経済難で苦しんでいるアメリカが、年間30億ドルもの援助を、ほとんど無条件でイスラエルに与え続けるということは、どう考えても尋常ではないだろう。
 こうしたアメリカ側の対応の変化や、ヨーロッパ諸国のイスラエルに対する嫌悪感の広がりを受け、イスラエルの政府要人の間で、イスラエルは対外方針を変更させるべきだ、という意見が出始めている。
 元シンベト(イスラエルの情報機関)のトップヤアコーブ・ぺリ氏は『イスラエルはパレスチナ自治政府との和平交渉に戻るべきだ。そうでなければイスラエルは世界から嫌われ者になろう。』『このままの状態を維持していけば、確実にインテファーダ(パレスチナ人の抵抗闘争)が再開されよう。』と語っている。
 しかし、イスラエルでは近くクネセト(国会)議員選挙が行われるが、国民の相当数は、国家の安全を考えると、ネタニヤフ首相の強硬路線を支持する者が多いようだ。強硬路線がイスラエルをどれだけ孤立させ、危険の淵に追いやるかというところまでは、考えが及ばないのかもしれない。
Posted by 佐々木 良昭 at 14:56 | この記事のURL
| 次へ