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NO・2342『モルシー大統領の演説は顰蹙モノ』 [2012年10月07日(Sun)]

 エジプトの第四次中東戦争の記念日は10月6日だが、この記念日にモルシー大統領は彼の就任以来、100日の行動の成果を発表した。
しかし、その内容は決して、聴衆の関心を引くものではなかったようだ。それどころか、配慮の足りなさ、話のスケールの小ささ、成果の無さにあきれた聴衆が、多かったのではないか。
モルシー大統領は彼の就任以来、100日間の成果について、家庭用ガスの普及問題を取り上げている。ガスのシリンダーの値段が5エジプト・ポンドだが、その原価は65エジプト・ポンドだと語っている。
しかし、それは彼の成果であろうか。以前からガスのシリンダーの価格は、そんなものではなかったのか?そして、シリンダーの原価を語ることによって、国民にあたかも自分の国民思いの政策の成果だ、とでも言いたいのであろうか。
モルシー大統領はもう一つの成果として、彼が11日間で9カ国を訪問したことを披瀝している。エチオピア、中国、アメリカとは語ったが、湾岸諸国については触れていないようだ。
これらの訪問の成果については、100億ドルの援助と投資を呼び込んだ、と語っているが、その成果は何も出ていないようだ。そして、IMF からの48億ドルの借り入れも、まだ定かではないが、1.・1パーセントの金利について高利ではないと弁明している。この件については、高利であるか否かではなく、ムスリム同胞団の政権が、シャリーア(イスラム法)に反しているではないか、というのが国民の率直な気持ちであろう。
あるエジプトの保険会社のトップは『言い訳だけの演説であり、国民に何も約束していない。』と批判している。その通りであろう。その場を誤魔化す、小市民的話題ばかりではないか。
道路を清掃する、治安を改善する、ガスを供給をする、パンを供給するというのが、演説の骨子だったのだから。
エジプト国民がモルシー大統領に期待したのは、希望の持てるエジプトの、未来像だったのではないのか。なにやら彼が日本の政治家に、似ているような親近感さえ、覚えるのだが。
Posted by 佐々木 良昭 at 23:05 | この記事のURL
NO・2341『エルドアン首相とシリアとの緊張そして』 [2012年10月07日(Sun)]
 2010年のダボス会議での、トルコのエルドアン首相の発言は、アラブ諸国の首脳の間に感動を呼び起こした。イスラエルのペレス大統領を『イスラエルは人殺しの国だ。』と痛烈に批判したからだ。
その後に起こったガザ地区への支援船マルマラ号事件も、アラブ世界を興奮させた。以来、トルコのエルドアン首相はトルコばかりではなく、中東地域全体のリーダーのような、イメージを創り上られていった。
しかし、そうだろうか。トルコ国内やヨーロッパからはエルドアン首相の手法を必ずしも歓迎しない動きが出てきている。その最たるものが、トルコ国民にとってはシリアへの対応であろう。エルドアン首相は戦争も辞さず、という強気の立場を採っている。
ヨーロッパ諸国からはエルドアン首相の政治手法は、ケマル・アタチュルクと変わらない独裁的な色彩の強いものだ、という批判が出始めている。確かに彼の政策に反対するジャーナリストが、逮捕されていることなどから、この批判は的外れなものではあるまい。
エルドアン首相がアラブ諸国で、実力以上に評価されているのには、幾つかの理由がある。アラブの春革命を経験した国々では、イスラムと民主主義の並立の、政府の雛形が出来ていないのだ。そこで、アラブの春革命を経験した諸国では、トルコのAKP( 開発公正党)を、モデルにしようと考えている。トルコに擦り寄ることによって、これらの国々は内外での自国のイメージを、良くしようと考えているのだ。
そして、トルコが自国に対し経済支援、技術支援をしてくれることに、期待していることも事実だ。トルコ企業が自国に投資してくれれば、その国の政府はあまり努力しなくても、経済状況を改善することが出来るという、他力本願的な発想なのだ。
そうした周辺諸国の雰囲気のなかで、エルドアン首相は次第に、中東地域のリーダーだ、と自分を過信し始めているようだ。そのことに対する反発が、トルコ国内では出始めている。
エルドアン首相の手法に対し、ブレント・アルンチ副首相やギュル大統領が、苦言を呈し始めている。ブレント・アルンチ副首相はエルドアンの周りには、最終的に『イエスマン』だけが集ってしまい、民主主義が機能しなくなる、と批判している。
ヨーロッパ諸国のトルコ批判も、この点を突いているのであろう。『トルコではいまだに自由な表現(フリー・スピーチ)が確立していない。』と批判している。エルドアン首相が冷静になり、早急に方向を修正しなければ、足元のAKP内部から、非難の炎が拡大する危険があろう。
Posted by 佐々木 良昭 at 11:59 | この記事のURL
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