• もっと見る
« 2012年03月 | Main | 2012年05月»
NO・2291『エジプト大統領選挙の行方はいまだ不明』 [2012年04月26日(Thu)]
 エジプトを30年にも渡って支配してきた、ムバーラク大統領は意外にあっけなく打倒された。以来、エジプトでは各派各政党の人たちが、自己主張合戦を繰り返している。
これに輪をかけて、軍最高評議会はどうエジプトの新しい体制を作り上げていくかに、苦慮しているようだ。その第一は、新大統領の選出なのだが、軍最高評議会は軍事裁判所の裁判官を長とする、選挙委員会を設立し、大統領候補者の資格審査を行った。
結果的に最有力とみなされていた、オマル・スレイマーン副大統領、ムスリム同胞団が最初に立てた候補の、ハイラトシャーテル、サラフィ派のハーゼム・アブイスマイル氏の各氏は、立候補資格を認められなかった。
結果的に残った有力候補は、ムスリム同胞団の政党自由公正党党首のムハンマド・モルシー氏、アラブ連盟事務総長だったアムル・ムーサ氏、ムスリム同胞団から候補者として認められなかったアブドルモナイム・アブルフットーフ氏、そして最後の首相を務めたアハマド・シャフィーク氏となった。
ところが、アハマド・シャフィーク氏も旧体制側の人物だとして、立候補資格を認められなかった。しかし、彼が抗議し何とか立候補に、こぎつけることができたようだ。しかし、彼の当選の可能性は、極めて低いのではないか。
そうなると、アムル・ムーサ氏とアブドルモナイム・アブルフットーフ氏の一騎打ちのようだが、そうとばかりは言い切れない状況が出てきた。それは、立候補者を擁立することに失敗したサラフィ組織が、こぞってムスリム同胞団の自由公正党党首ムハンマド・モルシー氏を、押す動きが出てきたからだ。
しかし、それは世俗派の人たちが、許さないのではないか。そうなると、アムル・ムーサ氏が有利なのではないか、という下馬評が広がっている。
選挙結果はどこの国でも、投票箱の蓋を開けてみないと分からない、といわれるが、アラブの選挙はなおさらであろう。どこで何が起こるか分からないからだ。
6月2日に出される予定の、ムバーラク裁判の結果によっては、エジプトは再度大混乱に巻き込まれるかもしれない。そうなれば、選挙そのものが実施されない可能性もあるのだ。
エジプトでは選挙をめぐり、大衆が喜んで選挙の行く末を、最高の話題にしているだろう。それは、この国の国民すべてが参加できる、一番公平で楽しいイベントなのかもしれない。
Posted by 佐々木 良昭 at 15:27 | この記事のURL
NO・2290『イランに対する経済制裁はトルコに追い風』 [2012年04月26日(Thu)]
 イランは昨年、350万バレル/日の石油を輸出した記録を有する、大産油国だ。その石油輸出による収入は、1000億ドルにも達している。しかし、その大産油国のイランは、ご存じの通りいま、アメリカを先頭に西側諸国によって経済制裁の、締め付けに苦しんでいる。
単に物の輸出入取引ができないばかりではなく、イランとの銀行決済が凍結され、イランが輸入したくても、あるいはイランが輸出したくても、ドルの流れが禁止されてしまっているのだ。
このアメリカの制裁方針に背いた企業は、アメリカとの取引が禁止される事になる。そうはいっても、これまでイランの石油に依存してきた国々は、何とかこのアメリカの制裁から逃れようとしてきたが、アメリカの厳しい圧力によって、うまくいっていない。
日本も例外ではなく、イランアからの輸入量を漸減させることによって、アメリカの懲罰を受けず、しかもイランとの関係を維持したい、と思っているようだ。インドとイランとの間では、インドの通貨ルピーでの取引を行ってはいるが、それは極めて限られたボリュームの、取引でしかあるまい。
そうした苦しい状況に追い込まれているイランは、官民共にいま、トルコに支店を開くことにより、制裁のダメージを軽減しようと、思っているようだ。
最近、イランの3つの銀行が、トルコに支店を開設している。それはテジャーラト・バンク(商業銀行)、パサルガド・バンク、そしてもう一つの銀行だ。
トルコで外国の銀行が支店を出し、金融活動をするには、2000万ドルの資金があればできることになっているが、実際に運営するとなると、3億ドルのデポジットが必要なようだ。
イラン企業のトルコへの進出は、金融部門だけではなく、他の民間企業によっても行われている。これまで1500社ほどトルコにあったイラン企業の支店が、昨年1年間を通じて590社増え、現在ではイラン企業のトルコ国内支店が、2140社に上っているということのようだ。
イランに対する経済制裁が意外なところで、トルコの経済を支えることになりそうだ。IMFはトルコの経済が脆弱だという報告を出していたし、他の機関からも、短期的投機的資金の流入が多いことを挙げ、不安定だという分析が出されていた。加えて、トルコが抱える対外債務が大きいことも、マイナス材料として指摘されていた。
イランの窮地が、案外トルコの経済を下支えするのではないか、と思われる昨今だ。
Posted by 佐々木 良昭 at 13:50 | この記事のURL
| 次へ