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no・2023「イスラエル・レバノン海底ガスが戦争の引き金に」 [2011年07月11日(Mon)]

 中東という地域は、戦争の種の尽きない場所のようだ。イスラエルとレバノンの海底に、ガス田があることが知られ、その開発が進むなかで、イスラエル・レバノン間の戦争が起きる、危険性が高まっている。
 イスラエル側の語るところによれば、レバノン側が主張する領海は、イスラエルの領海に食い込んでおり、海底油田の自国領の範囲を、拡大するつもりだということのようだ。
 しかし、イスラエルのこの主張を素直に受け入れるわけには、行かないのではないか。もちろん、レバノンンの主張もしかりだ。経済的に大きなメリットのある領海の設定を、両国が自国に都合のいいように、主張するのは当然のことであろう。
 その場合考えられることは、国連の調停によって、領海の範囲を決定することであろう。しかし、イスラエルはこれまで、パレスチナの土地に非合法に、入植地を建設してきた経緯もあり、既成事実を作ったものが、勝ちだとする考え方が、強いのではないか。
 その際、一日も早くガスを生産できる体制に、するということであろうが、現在、イスラエルは既に、アメリカのノーブル・エナジー社との間で、掘削を進めている。そうなると、アメリカ政府はイスラエルに有利な立場を、採る可能性が強くなろう。それは、自国企業の利益を守る、という立場からだ。
 その結果、レバノン側はどんどん追い込まれ、自国の領海が狭められ、ガス資源の獲得は、不利になるということになる、可能性が高いのではないか。そのことをレバノン政府が、気が付かないはずはない。
 結果的に、そこからどのようなことが想定されるかといえば、次のようなことではないか。レバノン政府としてはあくまでも、国連の場で正当な権利を主張しよう。
レバノンにはイスラエルに対して、戦争を仕掛けるだけの、軍事力も経済力もない。あくまでも、国際社会を味方につけて、自国の立場を有利にする、という方法だけであろう。
 しかし、レバノンにはヘズブラが存在する。ヘズブラはイランの支援を受けて、イスラエルに対して軍事的に挑戦してくる、可能性があろう。そうしたことが想定されるからこそ、最近になってイスラエル軍機が、大挙してレバノン領空侵犯を、行っているのではないか。
つまり、イスラエル軍機によるレバノンの領空侵犯は、ヘズブラ側に攻撃を思いとどまらせるための、示威行為であろう。
 現在レバノンのヘズブラには、2006年に起こったイスラエル・ヘズブラ戦争時よりも、保有する兵器の質がよくなり、しかも量が増えているといわれている。しかも、テルアビブまでも届く、飛距離の長いミサイルが、増えているということだ。
 それが戦争の勃発によって、イスラエルの各地に飛んでくるようなことになるのであれば、イスラエルもそう簡単には戦争を、始められないのではないか。そうであるとすれば、イスラエル側もレバノンのヘズブラ側も、お互いにぎりぎりまで強気の振る舞いを、続けていくのではないか。しかし、それはちょっとした計算違いで、戦争に発展しかねない、危険なものであろう。
Posted by 佐々木 良昭 at 23:26 | この記事のURL
NO・2022「シリア国民大討論会というが?」 [2011年07月11日(Mon)]
 7月10日から、シリアの首都ダマスカスから19キロ離れた、国営リゾート施設で、シリア国民大討論会が開催された。述べるまでもない、現在の混沌とした状況を、いかにして解決するか、ということが、この会議開催の主題だ。
 しかし、蓋を開けてみると、どうやらこの会議は、国民のコンセンサスを生み出す会議というよりは、シリア政府、バッシャール・アサド体制が打ち出した、国内民主化政策を発表するものである、ということのようだ。
 広く国民に呼びかけて、この会議に参加をうながした、ということになっているが、会議に参加したのは、独立系の国会議員や、バアス党員でほとんどが、占められているようだ。
 独立系議員といっても、シリアの厳しい政府の取り締まりの中で、議員に選出されるということは、簡単に言ってしまえば、シリア政府のイエスマンであり、バッシャール・アサド大統領万歳組であろう。
 述べるまでもなく、この会議には反政府勢力からは、誰も参加しなかったようだ。1300人の死者と12000人の投獄者を生んだ、今回の反政府デモは、反体制派の人士をして、政府の準備した会議への参加を、思い留まらせたのであろう。
 シリア政府はこの会議を開催し、政府の考える民主化路線が、参加者から賛同を受け、実行することになる、ということであろうが、バッシャール・アサド体制が、それほど柔軟な対応変更を、出来るとは思えない。
 加えて、反体制運動がここまで来てしまうと、反体制側も妥協はできないだろう。そうなると、反体制派が唱えるように『バッシャール・アサド体制を打倒する』という、当初の目的が成就されない限り、反政府運動は続く、ということではないのか。
 シリアの現体制は、現在のバッシャール・アサド体制以前の、彼の父ハーフェズ・アサド大統領の時代から、続いているものであり、その政治方針は、バアス党である。
 バアス党理論が果たして、正しい政治の理論であるのか否かについては、理想的なものであろうと思われる。なんとならば、バアス党は人種、宗教、宗派の別なく、国民が一体となって、平等な立場で国家を運営していくことに、なっているからだ。
 しかし、実際にはバアス党理論は、独裁政権を擁護する理論になり、シリアではアサド王朝が、父ハーフェズ・アサドの時代が1971年から2000年まで、その息子バッシャール・アサド大統領の時代が、2000年から現在にまで至っている、つまり、バアス党理論に基づくアサド体制下で、シリアはすでに40年の歳月を、経過しているのだ。
 これでは権力はがんじがらめの、老朽化した状態であり、抜本的な改革など、出来るはずがなかろう。一度解体し再構築するしかあるまい。今回の国民大討論会は、その古い体制の開催する、最後の会議なのかもしれない。
Posted by 佐々木 良昭 at 15:10 | この記事のURL
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