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NO・1821 「アッバースとダハラーンの戦いPAは内紛に向かうか」 [2010年12月06日(Mon)]
 もとガザの治安責任者を務めていた人物に、ムハンマド・ダハラーン氏がいる。彼は故アラファト議長の寵愛を受けていたこともあり、若くしてファタハの幹部メンバーの一人に、名を連ねていた。
 しかし、ガザで行われた選挙でファタハが敗れ、その後の武力衝突でもハマースが勝利し、ファタハのメンバーはガザから、離れることになった。以来、ムハンマド・ダハラーン氏は、ヨルダン川西岸地区に移り住んだわけだが、治安面での責任者の立場には無くなった。
 そこで彼が力を入れ始めたのが、ビジネスと権力闘争であったのだろう。以前から、彼がパレスチナ自治政府のトップの座を、狙っているという情報が流れていた。
権力闘争で勝利するためには、沢山部下を抱えておく必要があるため、資金が必要となり、ビジネスに手を出したのかもしれない。まさに権力闘争とビジネスとの話は、「鶏と卵」の話に似通っていよう。
 最近になって、マハムード・アッバース議長が進める、和平努力は何の成果も生み出さないことが明らかになり、アメリカは仲介に失敗したことを、公然と口にした。
 そうなると、ムハンマド・ダハラ−ン氏の側は、強気でマハムード・アッバース議長を責めることが、容易になってきた。そこで対抗策として、マハムード・アッバース議長はムハンマド・ダハラーン氏の資金源を断つべく、彼の経営する、テレビ会社を閉鎖させた。一説には、彼の会社ではないという話もあるが、ほぼムハンマド・ダハラーン氏の所有と見て、間違いあるまい。
 しかし、ムハンマド・ダハラーン氏の資金源を断ったからと言って、安心できるわけではない。ムハンマド・ダハラーン氏の主張する、マハムード・アッバース議長に対する不満は、パレスチナ人の多くが抱いている不満だからだ。場合によっては、マハムード・アッバース議長の子飼いのはずの、ファタハのコマンドの多くと、パレスチナ自治政府の警察が、ムハンマド・ダハラーン氏の味方に付く、可能性があるのだ。
 多分、マハムード・アッバース議長は現段階で、相当身の危険を感じているのであろう。なぜならば彼は、もしパレスチナ問題に進展がなければ、議長のポストから降りたい。西岸はアメリカやイスラエルが支配してくれた方がいい、とまで言い始めているのだ。
 彼はいまトルコを訪問しているが、多分にトルコのエルドアン首相に、泣きついているのではないか。アラブ諸国は莫大な援助を約束するものの、ほとんどがから手形であり、実行されていない。加えて、身の危険がせまってさえいるのだから、やっていられないというのが本音であろうか。
 パレスチナのマハムード・アッバース議長はいま、ガザのハマース・グループとヨルダン川西岸のムハンマド・ダハラーン氏のグループという、二つの敵を抱え込んでいるということだ。
 しかも、ハマースはシリアとイラン、そしてレバノンのヘズブラが支援しており、ムハンマド・ダハラーン氏とそのグループは、アメリカとイスラエルの厚い信頼関係があるのだ。
 マハムード・アッバース議長が切った「パレスチナ自治政府議長辞任」のカードは、もしそのままに推移すれば、イスラエルが西岸地区のすべてを、コントロールすることになるわけであり、資金的にも、治安上も、外交上でもイスラエルが極めて高いリスクを、背負うことになる、ということだ。
 つまり、マハムード・アッバース議長は、弱腰のように見せかけて、イスラエル政府を恫喝した、ということではないのか。
Posted by 佐々木 良昭 at 16:59 | この記事のURL
NO・1820「イスラエル・パレスチナ両原理主義者の意見一致」 [2010年12月06日(Mon)]
 イスラエルのユダヤ教原理主義者を主導する、ラビ(宗教指導者)オバデア・ユセフ師と、パレスチナのイスラム原理主義者、イスマイル・ハニヤ氏との間で、意見の一致が見られた。これは今後、イスラエル・パレスチナの和平交渉で、大きな進展がみられる、兆候かもしれない。
 これはもちろん冗談にすぎない。しかし、時を同じくして、イスラエルのユダヤ教のラビと、ガザのハマース・リーダーのイスマイル・ハニヤ氏が、イスラエルで起こった山火事について、「神の天罰だ」と発言している。
 ユダヤ教のラビであるオバデア・ユセフ師は、「シャバトを守らない罰だ。」と言い、イスラム教原理主義者のイスマイル・ハニヤ氏は、「ユダヤ人がしたことに対する神の罰だ。」と語っている。
 その理由とするところは二人とも別だが、これは神の罰だ、と捉えているところが共通している。
 こうした判断が双方から出て来るということは、現在のイスラエル・パレスチナの置かれている状況が、常軌を逸しているということであろう。イスラエル側のパレスチナに対する非人道的な対応は、イスラエル国内の連帯を強めるのではなく、イスラエル国民の間に分裂を生み出し、ますます混とんとした社会状況を、創り出している。
 パレスチナ側もイスラエルの力による、ガザに対する対応を巡って、四分五裂の状態に入っている。その分裂は単に、ハマース対ファタハではなく、ファタハ内部にも幾つもの、派閥を生み出すに至っている。
 結果的に、イスラエルの側にもパレスチナの側にも、それぞれの大衆を力強くリードできる人物は、存在しなくなっている。つまり、何度となく繰り返されるイスラエル・パレスチナ和平会議は、何も生み出せない状態に、なっているということだ。
 しかし、アメリカのオバマ大統領やクリントン国務長官は、イスラエル・パレスチナ問題での仲介調停努力をしていることを、世界に示す必要から、不毛な努力、時間の浪費を行っているのだ。
 そのつけは、大衆の怒りとなって、爆発という形で表面化してくるだろう。その時は、意外に近いのではないか。
Posted by 佐々木 良昭 at 14:45 | この記事のURL
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