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NO・1424女性の覆面(ニカーブ)は是か非か? [2009年10月12日(Mon)]
 いまエジプトでは、女性が覆面(ニカーブ)を着けることをめぐり、大論争になっている。ニカーブとはイスラム教の女性が、顔をスポリ隠す被り物のことを言うのだが、それはイスラム氏の初期からあったものではなく、後世になってから、流行するようになったものだ。
 現在でも湾岸諸国の一部に残っており、アフガニスタンでも形は違うが、使用されている。 
 アフガニスタンの場合には、顔の部分は編み目になっており、頭から身体全体をスッポリ包む、フード付きのワンピースのようなものだ。湾岸諸国の一部に残っているのは、黒い衣装にスカーフ、そしてからす天狗のような、顔面を覆う仮面のようなものだ。
 湾岸諸国の場合は、このカラス天狗は決して多数派ではない、サウジアラビアですら、国内ではそれほど多くは無い。スカーフで顔を隠す方式のほうが、多いのではないか。
 ところが、こともあろうにアラブ最大の都市カイロで、頭から顔をスッポリ包むニカーブが、流行り始めたのだ。このことにショックを受けたのであろう。イスラム世界全体に大きな影響力を持つ、エジプトのアズハル大学のトップである、シェイク・ル・アズハルに就任しているタンターウイ教授が、ニカーブの着用に、異議を唱えたのだ。
 彼はニカーブを付けることはよくないと発言した。それは多分に、タンターウイ教授がムバーラク大統領から指示されてのことであろう。そうでなければ、タンターウイ教授がそのようなことを、言い出すはずが無いからだ。
 イスラム法では、顔をスッポリ隠すようには、定められてはいない。髪を隠し顔は出していいことになっているのだが、アラブ社会などでは、他の男性の視線を避けるために、ニカーブが着用されるようになった、と考えるべきであろう。
 しかし、ニカーブはイスラム教徒の女性が、つつましいということになることから、広がったものと思われる。それは自分の家族の女性に対する、過剰なまでの保護の精神から来たものであろう。
 ところが、このシェイク・ル・アズハルである、タンターウイ教授の発言に、アラブ世界最大のイスラム集団である、ムスリム同胞団が噛み付いたのだ。イスラム教徒の女性がニカーブを被ることは、奨励されることがあっても、否定されるべきではないというのだ。
 このムスリム同胞団の見解は、保守的なアラブ世界の男性の間で、支持されるようになっている。
 シェイク・ル・アズハルであるタンターウイ教授は、苦しい自分の発言に対する、弁明を行っているが、結果的には、ムスリム同胞団に、政府とアズハルの権威に対する、攻撃の口実を与えてしまったようだ。
 シェイク・ル・アズハルであるタンターウイ教授は、二カーブ批判をする前に、何故いまエジプトの、しかも大都会であるカイロの女性たちの間で、スカーフを着用する人たちが激増し、それがニカーブにまで発展したのかを、考えるべきであったろう。
 貧富の格差が広がり、結婚したくても出来ない若者が激増しているなかで、女性たちは次第に自分を隠すことと、イスラムの形に傾倒することに、救いを求めているのではないのか。
 それはあたかも、神との結婚を誓ったキリスト教の尼さんたちと、どこかで通じるのではないか。
Posted by 佐々木 良昭 at 02:38 | この記事のURL
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