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NO・1422イラク各派が選挙に向けた動き活発化 [2009年10月09日(Fri)]
 イラクでは来年に控えた選挙に向け、事前の活動が活発化してきている。マリキー首相は野党側の攻勢を前に、必死で多数派結成工作をしているようだ。
 マリキー首相の動きは、多分にアメリカの意向を受けたものであり、宗教や宗派にこだわらない、世俗的連合政権であり、スンニー派、シーア派、キリスト教徒などを集めたものを構想している。
 マリキー首相はこの連合を、「法治国家連合」と名づけているようだが、何処まで法治なのか疑問だ。この法治国家連合には、クルド出身のタラバーニ大統領も参画するようであり、既に、アメリカ政府はタラバーニ大統領に対し、現在の権力機構を、全面的に支援することを約束している。
 他方、シーア派出身であるマリキー首相(ダウア党)にも誘いをかけた、シーア派のサドル師を中心とする野党連合(シーア派連合)は、「イラク国民同盟」と名乗り始めている。この連合組織にはシーア派のハキーム派「イラク・イスラム最高評議会(SIIC)」も主要な組織として加わっている。
 この流れのなかで、興味深いのはハキーム派に対し、サドル派が優位に立ってきていることだ。そして、これまでイラク・シーア派の最高権威者とされてきた、イラン人アヤトラ・オズマ(大アヤトラ)である、シスターニ師の影響力が、イラク・シーア派内部で後退してきているのではないかということだ。
 それは、サドル師がイランのクムで、宗教の勉強を積み、アヤトラ・オズマになったことが、影響しているのではないか。これまでは、シスターニ師を除いて、アヤトラ・オズマがイラクにはいなかったからであろう(他のイラク人のアヤトラ・オズマは、サダム政権時代に殺害されている)。
 従って、イラクのシーア派イスラム教徒はシスターニ師に、あらゆる面で指導を仰がなければならなかった。しかし、いまではイラク人のサドル氏が、アヤトラ・オズマに昇格したことにより、ファトワ(宗教裁定)を出す権限が、サドル氏にも与えられるようになったのだ。
 今後は、イラク・シーア派の国民の間で、サドル氏の発言力が、ますます強まっていくのではないか。そして、このサドル氏と元首相だったアラーウイ氏との関係が、強化されて行くことが予測される。
 その場合、立場が弱くなったシスターニ師は、マリキー首相との関係を強化していくのか、あるいは沈黙していくのかが、今後イラク国内政治の上で興味深い点だ。現時点では、シスターニ師は選挙に対し、前向きな意見を口にしていない。
 もし、マリキー首相がスンニー派の元サダム親衛隊ともいえる、バアス党員の情報部員を重用していくことによって、自身の権力を守ろうとすれば、当然のこととして、シーア派国民のほとんどを、敵に回すことになりかねない。しかし、彼は不安からその禁じ手を使うかもしれない。今後、イラク国内は来年の選挙に向けて、相当もめそうだという予測が、順当なのではないか。
Posted by 佐々木 良昭 at 23:34 | この記事のURL
NO・1421カダフィ大佐も人の親か、息子がかわいい [2009年10月09日(Fri)]
リビアではカダフィ大佐が高齢(? 69歳)に達したことから、誰が彼の後継者になるのかということが噂に上って久しい。
 そうしたなかで、最初に話題に上ったのは、次男のサイフ・ル・イスラーム氏だった、彼は穏健でいわゆる常識派の人物であり、内外で評判がよかった。
 サイフ・ル・イスラーム氏は欧州で学び、かつロシアとの合弁企業の責任者として、オーストリアにも長い間滞在していた。
 これまで、サイフ・ル・イスラーム氏はリビアの外国でのイメージを・改善するために・いろいろな役割を果たしてきていた。彼は芸術的なセンスもあり、ビアの遺跡の紹介とあわせ、絵画展を日本でも開催している。彼の絵はそれなりに見られるものだったと記憶している。
ムウタシム氏というもう一人の息子が、最近ではカダフィ大佐の後継者ではないか、と言われてきた、長身でハンサム、どちらかというとカダフィ大佐の若い頃に、サイフ・ル・イスラーム氏よりも似ている風貌だ。
 彼は治安軍を指揮しており、これまで大分無茶なことをしてきてもいる。そのため、カダフィ大佐はサイフ・ル・イスラーム氏のほうを、評価してきていたようだ。
時折、カダフィ大佐とサイフ・ル・イスラーム氏との間では、意見の対立があり、親子喧嘩をしたという噂も流れていた。そのことが、ムウタシム氏の後継の可能性の噂を、作り出していたのであろう。
今回、リビアの南部都市セブハで開催された全国人民会議の席で、カダフィ大佐はサイフ・ル・イスラーム氏に、しかるべきポジションを与えるように、会議参加者に持ち掛けたということだ。
会議に先立ち、カダフィ大佐はマスコミをシャット・アウトしていたが、ネットで情報が流れた。その情報によると、カダフィ大佐はサイフ・ル・イスラーム氏を「明日のリビア」の、責任者にしたいということのようだ。
この組織は、リビアの経済開発やイスラミストとの関係改善など、極めて困難で重要な役割を担っている。そのトップにサイフ・ル・イスラーム氏を据えたいということは、カダフィ大佐がサイフ・ル・イスラーム氏を、やはり一番評価しており、後継者にしたいということの、意思表示ではないかと思われる。
サイフ・ル・イスラーム氏は欧米各国で、既に顔が知られており、彼の外交的な活躍も、高く評価されている。彼が後継者になれば、リビアも国際社会のなかで、十分しかるべき評価を得られるのかもしれない。そうあってほしいものだ。
Posted by 佐々木 良昭 at 00:18 | この記事のURL
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