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NO・1395ヨルダン川西岸地区入植者の増加とパレスチナ人労働者 [2009年09月06日(Sun)]
 これまで、東エルサレムはパレスチナ人地区であり、西エルサレムはイスラエル人の地区だとされてきた。つまり、聖地エルサレムを挟んで、イスラエル人とパレスチナ人との、棲み分けが成り立ってきていたのだ。
 しかし、最近になってこの棲み分けが、守られなくなってきている。パレスチナ人地区であるはずの、東エルサレムにあるパレスチナ人の住宅が破壊され、そこに新たな住宅が、イスラエル人のために建設されるように、なってきているのだ。
 東エルサレムばかりではない。ヨルダン川西岸地区にも、イスラエル人(ユダヤ人)用の、多くの入植地が建設されているのだ。このため、西岸地区の入植者の数は、既に50万人近くまで達している、といわれている。
 これは、パレスチナ人の側からすれば、西岸地区からのパレスチナ人追放目的の行動であり、将来的には、全てのパレスチナ人が、西岸地区から追放されてしまうという悪夢を、抱かざるを得ない状況であろう。
 ところが、このイスラエルが進める入植地の建設には、追い出される側の、ヨルダン川西岸のパレスチナ人が、従事しているのだ。彼らにしてみれば、それ以外に仕事が無いのだから、悔しくてもその仕事に、従事せざるを得ない、ということであろう。
 アメリカのオバマ政権は、イスラエルの進める入植地の拡大について、表面的には反対しているが、現実は、リップサービスだけではないのか。それは、ヨーロッパ諸国も同じであろう。声高に入植地の建設に反対するものの、ネタニヤフ首相に入植地の拡大を、断念させる効果は、全くと言っていいほど無い。
 ネタニヤフ首相は入植地の拡大について、居住者の家族が増えていることや、親族たちが一緒に住みたいという、人道的理由と自然増加によるものであり、これを阻止することは、出来ないと弁明している。
 それでは、そのために農地を失ったり、住居を失っているヨルダン川西岸のパレスチナ人は、どうなるのかということになるが、イスラエル側にはパレスチナ人の、そんな苦情に耳を貸す意志は、無いということであろう。
 シャロン首相が健康な時期には、ガザをパレスチナ人に返還し、その分、ヨルダン川西岸地区の一部を押さえるのだ、といった考え方が流布していたが、それをいま実行している、ということであろうか。
しかも、イスラエル人のなかには、将来的には、ヨルダン川西岸地区のパレスチナ人を、ヨルダンに全て追いやり、ヨルダン川西岸地区の全てを、イスラエルの領土に加える、という考えを持っている人が、少なくないようだ。
 パレスチナ人の入植地建設に携わる労働者たちは、彼らが入植地を建設することで、ますます自分たちの居住地域が、狭められていくことを、十分理解している。それでも、その仕事を続けなければ、家族を養っていけないのだ。
 この状態は、まるで自分が埋葬される墓穴を、掘らされているようなものであろう。そのことへの怒りが、再度爆発するかもしれない。西岸地区からは、第三のインテファーダ(イスラエルに対する抵抗闘争)勃発の兆しが、伝えられてきている。(第一回インテファーダは1987年に、第二回インテファーダは2000年に起こっている。)
Posted by 佐々木 良昭 at 23:21 | この記事のURL
NO・1394アフガン派遣とインド洋の給油どちらが危険か [2009年09月06日(Sun)]
 長い間、日本の政権を担当してきた、自民党が野党に下野し、民主党が国民の期待を集めて、政権の座に就いた。さてそこで疑問が沸いてくる。日本国民と民主党のハネムーンは、何時まで続くのだろうか。
 国内政治についてはほとんど疎いので、私見を述べるつもりは無いが、中東や西アジアについては、気になることがあるので、書いてみることにした。
 民主党はインド洋での合同軍に対する給油活動を、来年1月で中止する方針を固めたようだ。そのこと自体には反対しない。この日本が提供する油の相当部分が、パキスタン軍幹部の懐に、入っているという話もあるだけに、どの程度透明なのか分からないからだ。
 しかし、国際貢献という美名の下に(?)、金を出差無ければならないなかでは、人的貢献と資金の拠出が伴う、インド洋での給油は危険度からすれば、いたって不安の少ないものではないのか。したがって、日本はインド洋で給油活動をすることは、油代金と人的貢献の負担はあるものの、決定的な犠牲は払わなくて済んでいる。
 しかし、民主党が進めようとしている、アフガニスタンへの貢献は、日本人をアフガニスタンに送り込むものであり、極めて危険度は高いのではないか。アメリカが敵視している、アフガニスタンの抵抗勢力であるタリバンは、このところ勢力を拡大してきているし、欧米軍の犠牲も増加している。
 そこに、日本が人を敢て送るということは、どのような判断からなのであろうか。ISAFなる横文字を使い、国連主導ということで、安全のお札を入手したとでも思っているのだろうか。
 問題は派遣される人たちだ。彼らはアフガニスタン行きの命令に対して、ほとんど拒否できる立場には無い。彼らは国家の判断に、黙って従うしかないのだ。その結果、死傷者が出た場合、国家はそれなりの補償を、すればいいということであろうか。
 アフガニスタンに軍隊を派遣している諸国は、今後どうしたいと考えているのか、調べたことがあるのだろうか。また、これらの派遣諸国が今後、どうするつもりでいるのかを、調べたことがあるのだろうか。そして、日本には独自にアフガニスタンの国内状況を、調べる情報収集力があるのだろうか。加えて、収集した情報を分析し、近い将来を予測する、能力があるのだろうか。
 人命のかかわるアフガニスタンへの派遣は、他者の判断や都合に合わせて、行うべきものではないと思うのだが。自衛隊員、外務省職員、民間のNGOといった人たちが、これからアフガニスタン行きを命じられるのであるとすれば、極めて気の毒な話、ということになりそうだ。
 犠牲者に補償すればいい、という性質のことではあるまい。先ず、政府が外国の情報を収集する能力を高め、分析する能力を高めることを、優先すべきであろう。その上で、独自の判断に立って、アフガニスタンに派遣するか否かを、決めるべきではないのか。
Posted by 佐々木 良昭 at 21:41 | この記事のURL
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